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イノベーション・ジャパン2013(8月29〜30日)


イノベーション・ジャパン2013 有機ELをDLCで薄膜封止

 8月29〜30日、東京ビッグサイトで開かれた「イノベーション・ジャパン2013〜大学見本市&ビジネスマッチング〜」。有機エレクトロニクス関連のデモをピックアップする。


写真1 緑色有機ELパネル(富山大学)

 まず有機ELでは、富山大学の岡田裕之教授の研究グループが新たな薄膜封止法としてDLC(Diamond Like Carbon)封止技術を提案した。あらかじめ形成した有機層へのダメージを抑制するため、まずMoOx膜を膜厚10nmで真空蒸着してバッファ層を形成。この後、原料ガスにメタンガスを用い室温でDLC膜をプラズマCVD成膜する。膜厚は0.4μmで、研究室にあるコンベンショナルなプラズマCVD装置では30分で成膜が完了する。

 気になる水蒸気透過性は正確に測定していないものの10-3-4g/m2/dayと推定。発光寿命もリファレンスとして作製したガラス封止パネルと同等の80時間だったという。また、DLC膜自体はアモルファスなのでパネルを曲げても破損することがなく、写真1のように透明なためトップエミッションパネルにも適している。周知のように、有機ELの薄膜封止法としてはSi系無機膜と有機膜を多層化する方法が知られるが、今回の方法はこれに比べきわめてシンプルといえ、今後、ローコスト薄膜封止法として注目を集めそうだ。

透明有機ELと透明エレクトロクロミック素子を組み合わせたスマートウィンドウが

 透明有機ELで知られる東京工芸大学 内田孝幸教授の研究グループは、透明有機ELの魅力を引き出すニューアプリケーションを考案、透明エレクトロクロミック(EC)素子と組み合わせたスマートウィンドウを提案した。


図1 デバイス構造(東京工芸大学)


写真2 各種表示状態の比較(東京工芸大学)

 デバイス構造は図1のとおりで、透明有機ELはアノードにコンベンショナルなITO、光透過性カソードにIZO/Ag/IZOを使用して透明化。他方、EC素子はITO電極間にAgイオンを有する電気化学溶液を注入した。透明有機ELは透明状態と発光状態の二つ、EC素子は透明状態、ミラー状態、黒色状態の三つに変化する。つまり、これらの状態を制御することにより、写真2のように(a)透明(T,T)、(b)ミラー(T,M)、(c)黒色(T,B)、(d)両面発光(E,T)、(e)片面発光T(E,M)、(f)片面発光U(E,B)と六つの表示状態が得られる。とくに、(e)ではEC素子の反射機能によって有機ELの輝度が1.4倍に向上するという特典もつく。これらの結果、窓ガラスに用いれば照明やディスプレイになるだけでなく、遮熱制御によって冷暖房機器の負荷を削減することができる。

世界最速の単結晶有機トランジスタが登場

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のブースでは、有機トランジスタ研究グループが世界最速の単結晶有機トランジスタを紹介。チャネル長5μmという短チャネルでp型で10cm2/V・s、n型で4cm2/V・sというハイモビリティを達成したことをアピールした。

 最大の特徴は、図2のように短チャネルair-gap構造を採用した点にある。具体的には、まずガラス基板上にネガ型フォトレジストを塗布〜露光〜現像し、逆セパレータ形状の支持構造物を形成。この後、Au膜を成膜する。この際、前記の支持構造物の形状によってゲートとソース/ドレインが自己整合的に形成される。最後に、あらかじめ気相法で作製したルブレン単結晶フィルムを静電力を利用して手でソース/ドレイン電極上に貼り付ける。この結果、ゲート電極の上部に厚さ0.6μmという中空構造のゲート絶縁膜ができる仕組み。


図2 単結晶有機トランジスタの断面構造(NEDO)

 ルブレン単結晶は表面がきわめて平滑なためソース/ドレインとの理想的な接合が可能になり、接触抵抗が大幅に低減する。その結果、25MHzと有機トランジスタでは世界最高の高速応答を実現した。

 

 

 

 

 


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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