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SID 2012 |
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ゲート絶縁膜とパッシベーションにポリマーを用いてフレキシブル化
ここにきてa-Si TFT、低温Poly-Si TFTに次ぐ第3のTFTとして完全にオーソライズされてきた酸化物TFTでは、NHK放送技術研究所が酸化物TFTでは比較的珍しいトップゲート構造のフレキシブルアモルファスIGZO-TFTを試作、燐光有機ELディスプレイをドライブしたことを報告した。 TFTはもっともシンプルな2T1C構成を採用。スイッチングTFTはピクセルを選択、ドライブTFTは有機ELをドライブするために用いる。 図1にプロセスフローを示す。サブストレートには125μm厚のPENフィルムを使用。まず接着剤を介してキャリアガラスに固定する。この後が本プロセスで、まずバリア膜としてSiOx膜をスパッタリング成膜。続いて、Cr(5nm)/Au(25nm)膜を成膜しフォトリソでパターニングしてソース/ドレインを形成する。次に、画素電極としてITO膜を膜厚90nmでスパッタ成膜しフォトリソでパターニングした後、O2プラズマ処理によって表面改質する。続いて、a-IGZO膜(30nm)をAr/O2雰囲気において室温でスパッタ成膜し、フォトリソでパターニングして酸化物半導体層を形成。この後、オレフィンポリマーを膜厚300〜400nmでスピンコートして130℃で硬化してゲート絶縁膜を形成する。ちなみに、このポリマーは吸湿性が低く、アクリル樹脂のような一般的な有機絶縁材料に比べリーク電流が少ないという利点を有する。最後に、Au膜を膜厚30〜40nmで成膜しエッチングしてゲート電極を形成する。 写真1は作製したフレキシブル8型a-IGZO-TFTで、チャネル長は7μm、チャネル幅はドライビングTFTが35μm、スイッチングTFTが55μmである。ピクセルピッチは255μmで、解像度100ppiに相当する。 図2は試作したa-IGZO-TFT駆動フレキシブル有機ELDの構造で、a-IGZO-TFT形成後、まずパッシベーションとしてオレフィンポリマーを膜厚2〜3μmでスピンコートしフォトリソでパターニングする。このポリマーは感光性も有しており、パッシベーションだけでなく、RGBサブピクセルを仕切るバンクとしても機能する。なお、このポリマーは一般的な有機溶媒には溶解しないため、上部に燐光ポリマーインクを塗布・印刷しても溶解しない。この後、後工程である高分子発光層形成工程の印刷精度を補完するため、O2ガスでITO画素電極を親水性に、CF4ガスでバンク側壁を撥水性に表面改質する。続いて、RGBの燐光ポリマーをITO画素電極上にインクジェットプリンティング法により膜厚50nmでダイレクト印刷する。図3は使用した緑色燐光ポリマーの分子構造で、燐光基だけでなく、電子輸送基、ホール輸送基も共重合されている。この後、LiF(1nm)/Al(150nm)を蒸着してカソードを成膜する。ちなみに、外部量子効率は赤色が13%、緑色が14%、青色が12%だった。最後にバリアフィルムをラミネートして固体封止した後、キャリアガラスからパネルをリリースする仕組み。プロセス温度はマックス130℃に抑制し、PENフィルムの熱変形をミニマム化した。
図4はa-IGZO-TFTのトランスファー特性で、OFF電流は10-12A以下ときわめて小さかった。他方、ON電流は10-6A以上で、ON/OFF電流レシオは106と高い値が得られた。 ところで、有機ELの輝度はドライブビングTFTからのドレイン電流によって制御する。この値がディスプレイのコントラスト特性に直結する。試作デバイスでは、図5のようにドレイン電圧15Vでドレイン電流が飽和する良好な出力特性が得られた。この飽和領域から見積もられたキャリアモビリティは3cm2/V・s程度だった。これらの結果は低温プロセスで形成したポリマーゲート絶縁膜でも有機ELDを十分ドライブできることを意味している。
研究グループは、a-IGZO-TFT上に有機パッシベーションをダイレクト形成した際の影響も調べた。図6はパッシベーション形成前と形成後のガラス製a-IGZO-TFTの特性で、パッシベーション形成後にターンオン電圧がわずかにシフトしているものの、ターンオフ電流はまったく変化していないことがわかる。上記の結果は感光性ポリマーを用いてパッシベーションを形成してもa-IGZO-TFTの特性がほとんど変化しないことを示唆する。 今回試作したのは8型VGAパネルで、トータル厚を0.3oに薄型化。PENフィルム、そしてポリマーゲート絶縁膜とポリマーパッシベーション&バンクを用いることにより、写真2のようにフレキシブル化することに成功した。 世界で初めてRoll to Roll方式でa-IGZO-TFTを試作 Industrial Technology Research Institute(ITRI)はフレキシブルディスプレイ向けとして世界で初めてRoll to Roll方式でa-IGZO-TFTを作製、セグメント駆動の4.3型電気泳動ディスプレイをドライブすることに成功した。
サブストレートには3層構造のフレキシブルハイブリッド基板を使用した。具体的にはキャリア基板にステンレス箔を使用し、その上部にプラナリゼーション&剥離層として機能する表面改質層を塗布。最後に、PI膜を塗布し硬化させてフレキシブルサブストレートにした。このハイブリッドフレキシブル基板上にRoll to Roll方式でa-IGZO-TFTを作製。最後に、独自の剥離法によってステンレス箔からPIベースのa-IGZO-TFTをリリースした。 ところで、ゲートリーク電流はRoll to Roll方式TFTではクリティカルな問題となる。例えばゲートへの印加電界が1MV/cm以下の場合、一般的に許容されるリーク電流は10.8A/cm2程度である。しかし、ゲート絶縁層として室温でスパッタ成膜したSiO2膜(膜厚200nm)は加熱成膜した場合に比べ膜密度が不十分で、リーク電流も10.6A/cm2(@1MV/cm)と高い値を示す。他方、SiO2/Al2O3(30nm)ダブルゲート絶縁膜を用いた場合、リーク電流は10.7A/cm2(@1MV/cm)だった。つまり、どちらも破壊電界は1.5MV/cm程度と十分ではない。そこで、ゲート絶縁膜はRoll to Roll対応スパッタ装置ではなく基板温度200℃でプラズマCVD成膜した。
写真3はカラーレスのPI膜を塗布した様子で、PI膜の端部は表面改質層の下部にまで浸透し、ステンレス箔と直接接している。元来、PIとステンレス箔は密着性が高く、TFTプロセス中に剥離することはない。そのため、各レイヤー間の重ね合わせ精度を5μm以内に抑制できた。これは、熱膨張に起因する要因を徹底的に排除したためである。また、PIフィルムと表面改質層は接着性が低いため、その界面から容易にPIベースa-IGZO-TFTデバイスをリリースすることができる。 図8は作製したa-IGZO-TFT(チャネル長16μm、チャネル幅24μm)のトランスファー特性で、モビリティは2.1cm2/V・s、SSファクターは0.77V/decade、Vthは1V、ON/OFF電流レシオは107だった。また、図9のように150×150oサイズにおけるVthの偏差は約2Vだった。 結晶性IGZO-TFTの実力は? 酸化物TFTで最大の関心を集めたのがシャープと半導体エネルギー研究所が発表した結晶性IGZO-TFT。SID 2012開催直前にプレス発表したこともあり、高い注目を集めたが、結論からいうと研究成果のみを発表したに過ぎず、聴講者を含め第三者的には消化不良の感が否めなかった。 新たに発見したのはC軸配向したIGZO酸化物半導体で、CAAC(C-Axis Aligned Crystal)と名づけた。コンベンショナルなアモルファスではなく単結晶に近く、a-bプレーンはモザイクパターンであり、グレインバウンダリーが観察されない。これに対し、多結晶は一般的にランダム配向しており、グレインバウンダリーが観察される。
写真4はCAAC IGZO膜 (In:Ga:Zn-1:1:1)のTEM像で、C軸方向からみるとその結晶は六角構造にみえる。また、XRD解析では(009)にピークスペクトルを示した。さらに、膜密度を調べたところ6.22g/cm3と単結晶(6.375 g/cm3)に近かった。つまり、単結晶ライクといえる。 このため、CAACを用いればTFTの信頼性が向上できると考えた。そこで、IGZO-TFTを作製し特性を評価した。図10は600×720oガラス基板の特性偏差、図11はバイアスストレステストの評価結果で、ゲートバイアスストレステストでもVth変動がきわめて少なく、信頼性が高いことがわかる。
上記の成果を受け、CAAC IGZO-TFT駆動の13.5型クワッドフルHD(3840×2160画素)有機ELDを試作した。有機ELは白色EL+カラーフィルター方式を採用。TFTは5T-1C構成で、スキャンドライバ回路をガラス基板上にビルトインした。 さらに、キャリアガラス上にCAAC IGZO-TFTを作製した後、フレキシブルサブストレートに転写しステンレス箔で封止したフレキシブル有機ELDも試作。参考として、写真5に試作した13.5型フレキシブルパネル(960×540画素)を示す。 以上が発表の概要で、CAAC IGZO膜をどのように作製するのかについて一切言及がないのが残念に感じた。 塗布型酸化物TFTのプロセス温度を230℃に抑制
プリンタブル酸化物TFTでは、韓国のKyung Hee Universityが懸案となっている焼成温度を230℃に低下させたことを報告した。 研究グループは以前、ZTO(Zinc Tin Oxide)膜を350℃で焼成して酸化物半導体にすることに成功。今回、さらなる低温焼成化を図るため、添加溶媒を最適化するとともに、ZTOにInを加えたIZTO(Indium Zinc Tin Oxide)を用いることにした。 試作デバイスは、まずガラス基板上にMo膜を膜厚40nmでスパッタリング成膜しフォトリソでパターニングしてゲート電極を形成。続いて、AlOx溶液をスピンコートし230℃で焼成。これを計5回繰り返して膜厚を77nmにまで堆積してゲート絶縁膜を形成した。次にコンタクトホールを形成した後、IZO膜をスパッタ成膜しフォトリソでパターニングしてソース/ドレインを形成。最後に、InCl3、SnCl2、ZnCl2を溶媒と極少量の酸に溶解させた塩化物プリカーサ溶液をスピンコートし200℃×2時間焼成して酸化物半導体層を形成した。チャネル長は6μm、チャネル幅は100μmである。
図12はそのトランスファー特性で、飽和領域から見積もられたキャリアモビリティは6.81cm2/V・sだった。また、Vthは0.74V、SSファクターは103mV/dec、ON/OFF電流レシオは107が得られた。図13はネガティブバイアスストレステストの結果で、ネガティブバイアスを2000秒印加後のVthシフトは0.3Vに過ぎなかった。 図14はバイアスストレスを印加せずに輝度9000cd/m2のバックライトから白色光を照射した際の特性で、光照射による特性変動はきわめて少なく、わずかにVthがネガティブ方向にシフトしたに過ぎなかった。さらに、VGS=−3Vを印加しながら白色光を照射した際の特性変動も図15のように無視できるレベルだった。 参考文献 |
※測長機能 ※外観検査機能 |