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JST発 情報分野・機械分野・電子デバイス分野 新技術説明会(10月30日) |
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10月30日、科学技術振興機構(JST)で「JST発 情報分野・機械分野・電子デバイス分野 新技術説明会」が開催された。このなかから千葉大学 酒井正俊准教授の技術発表「無溶媒プリンテッド有機エレクトロニクス製造プロセスの開発」をピックアップする。
研究の狙いはタイトル通り、プリンテッドエレクトロニクス技術を活用しながら、環境的に問題となる有機溶媒を使用せずに、ドライプロセスで有機機能性薄膜を成膜することにある。トライしたニュープロセスの基本原理はレーザープリンタと同じで、ゼログラフィ技術を用いてプラスチックフィルム上に有機半導体トナーを転写印刷する。図1はその原理図で、感光ドラムを帯電させた後、レーザービーム露光によってその表面を帯電エリアと非帯電エリア(中性面)にパターニングする。次に、負に帯電させたトナーを感光ドラムに押し付けることによって現像する。この結果、中性面、つまり電荷がない部分だけにトナーが付着する。そして、帯電処理によって感光ドラムからトナーをプラスチックフィルムに転写。最後に、ラミネートロールで熱圧着することによってトナーを定着し膜化する仕組み。 周知のように、一般のレーザープリンタで使われるトナーには顔料、樹脂、ワックス成分、電荷制御剤などからなる混合物が用いられるが、有機半導体原料にこれら主成分以外を混ぜてしまうと半導体特性が低下する。そこで、C8-BTBT単成分の有機半導体トナーを用いることにした。いうまでもなく、有機半導体オンリーでは上記のプロセスで転写できないため、キャリア粒子を用いて帯電性を付与することにした。キャリア粒子とはフェライト系材料を樹脂でコーティングした球状粒子で、プラスまたはマイナスの帯電付与性を有する。今回の実験では日本画像学会から頒布されている一般的なキャリア粒子を、破砕したC8-BTBT粉末と混合し撹拌してトナーを作製した。図2のように、キャリア粒子の表面にC8-BTBTが付着し、その結果、有機半導体トナー自体が帯電する仕組み。つまり、プロセスでは電場の印加によってワーク上に設けた対向電極上だけに帯電有機半導体トナーを落下させて転写する。もちろん、キャリア粒子は一方の対向機構であるマグネットに保持されたままである。
写真1はトナーマーキング直後とラミネート後の顕微鏡写真で、ラミネート後は熱圧着によってC8-BTBTが溶融し薄膜が形成されていることがわかる。前記のように、Au電極上とその近傍だけに有機半導体トナーが転写されるため、自己整合的にチャネルが形成できる。また、ラージグレインが得られ、基本的に配向制御も可能である。もちろん、インクジェットプリンティング法で問題視されるコーヒーリング現象も発生しないため、膜厚・膜質ユニフォミティも良好である。 研究グループは上記の基本実験成果を踏まえ、プラスチックフィルム上に有機トランジスタデバイスを作製したところ典型的なp型特性を示し、0.3〜0.03cm2/V・sというキャリアモビリティが得られた。これは各種印刷法で有機半導体膜を成膜したフィルム製C8-BTBT有機トランジスタとしえは標準的な値で、無溶媒プロセスでもコンベンショナルな印刷プロセスで作製した特性と変わらないことが確認できた。
図3は転写解像度とトナー粒径の関係を示したもので、C8-BTBTトナーの粒径を直径dとし、ラミネート後に膜厚50nmの薄膜になったときの直径(円板)を解像度と定義した。この結果、解像度20μmが必要な場合、トナー粒径は5μm以下にしなければならないことがわかった。しかし、市販のトナー粒子は5μm以下が一般的であり、有機半導体粉末の破砕処理を最適化すればそのレベルの解像度は容易に得られると考えられる。 参考文献 |
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