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早稲田大学新技術説明会(6月6日)


写真1 折り紙構造のフレキシブルデバイス

早稲田大学新技術説明会 折り紙構造を用いてリジッドデバイスをフレキデバイスに

6月6日、都内で科学技術振興機構(JST)と早稲田大学の共催による「早稲田大学新技術説明会」が開かれた。ここでは、理工学術院基幹理工学部機械科学・航空学科の岩瀬英治教授の講演「折り紙構造を用いた曲げ・伸縮可能なフレキシブル電子デバイス」をダイジェストする。

 同氏の研究グループが開発したのは、ソーラーパネルなどで採用されている折り紙(ミウラ折り)構造を用いたフレキシブルデバイス。一般的なフレキシブルデバイスが柔軟で伸縮する有機材料を多用するのに対し、このニューデバイスは既存の硬い電子部品や延伸性の低いメタル配線を用いる。このため、新たに専用材料を開発する必要がなく、さらにデバイス自体も高性能化・多機能化しやすい。

 ただし、既存のミウラ折り構造はある方向に曲げると反りが発生するという致命的な問題がある。つまり、“自由に”変形するわけではない。そこで、折りの交点に穴(空間)を設けることにした。この結果、自由に折り曲げできるようになる。ミカンを入れたネットをイメージすると理解しやすいが、穴は大きいほど変形自由度が増す。しかしながら、穴が大きければサブストレート上に設けるデバイスや配線のスペース、いわゆる実行スペースが小さくなる。こうした点を考慮し、実用的な変形自由度が得られる穴面積は30%程度が妥当と考えられる。


図1 デバイスの変形形態1)

 ところで、アカデミックにみると変形は図1のように@曲げ変形、A伸縮変形、B折り紙変形に大別される。曲げ変形はサブストレートを薄くすれば容易に実現し、引っ張り応力と圧縮応力が拮抗し歪みがゼロになる中立面が存在する。これに対し、伸縮変形は引っ張応力によってのみ実現する。一方、折り紙変形にも中立面が存在するため、局所的な曲げ変形によって全体を伸縮変形させることができる。こうした特性を有効活用したのが図2のデバイス構造で、平面部にLEDやセンサーなどのリジッドデバイス、中立面に配線を配置する。

 写真2はデバイスの展開例で、デバイスを拡げると中央のサンプルは長さが2.2倍に、右のサンプルは6.5倍に拡大。また、Cu配線サンプルを50回連続で折り曲げしてもシート抵抗値が変化せず、フレキシブルデバイスとして正常に動作することが確認できた。

 想定されるおもな用途は@自動車のタイヤや人間の肘・膝など変形する部分に配置するデバイス、A自動車のボディやヘルメットなど自由局面に貼り付けるデバイス、B持ち運び時には折り畳み、使用時には拡げて展開するフルフレキシブルデバイス、などが考えられ、従来のフレキシブルデバイスのイメージを一新するポテンシャルがあるといえる。

写真2 試作デバイス1)


図2 デバイスの構造例1)

参考文献
1)岩瀬:折り紙構造を用いた曲げ・伸縮可能なフレキシブル電子デバイス、早稲田大学新技術説明会資料、pp.17-19(2019.6)

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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