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イノベーション・ジャパン2018(8月30〜31日)


イノベーション・ジャパン2018 製造プロセス技術でWhat's Newが相次ぐ

8月30〜31日、東京ビックサイトで開かれた「イノベーション・ジャパン2018」。ここでは、デバイス製造プロセス関連のWhat's Newをピックアップする。

 近年注目度が高まっているプリンタブルプロセス関連では、物質・材料研究機構が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のブースで独自のプリンタブル配線技術をアピールした。最大の特徴は焼成レスで微細配線が形成できることで、プラスチックフィルムはもちろんのこと、紙や花などにも印刷できることを紹介していた。


写真1 プリンタブル配線の積層例


図1 π接合金属ナノ粒子のイメージ

 具体的には、岡山大学発のベンチャー企業「C-INK」が開発したナノメタルインクを使用。図1のように金属コアに導電性の芳香族配位子を絡ませており、インクをワークに塗布して膜化した状態では配位子がメタルグレイン同志をコネクトさせる仕組み。このため、焼成レスでも比較的高い導電性が得られる。もちろん、加熱焼成すれば融着によってメタルグレインサイズが大きくなり導電性が向上する。その比抵抗はAuでバルクよりも1桁低い程度。Agは焼成レスで10-3〜-4Ω・cm、焼成ありで10-5Ω・cmクラス。なお、焼成レスの場合は可視光を照射して密着性を確保する。

 このナノメタルインクを用いて微細配線が形成できるのも特徴。具体的には、撥液性ポリマーを塗布し、UV照射によってパターン露光する。この結果、UV照射された部分は撥液性から親液性に変化。この後、ナノメタルインクをスピンコート法などでベタコートすると、親液部分にだけ自己整合的に集まって付着する仕組み。いわゆる撥水・親水パターニング技術を用いて微細配線を形成する。ミニマム1μmのファインパターンが形成可能で、写真1のように4層を積層印刷した例も紹介。プリンタブルプロセスに最適なことをアピールしていた。

新たな対向ターゲットスパッタでAZO透明導電膜を成膜


図2 新たなスパッタリング装置の構造と成膜時のターゲット写真

 成膜プロセス関連では、佐賀大学が新たな対向ターゲット式スパッタリング成膜法を提案した。2枚のプレーナーターゲットを対向配置してプラズマを閉じ込めArガスによって叩き出されたスパッタリング粒子だけをワークに入射させる対向ターゲットスパッタ法の一種で、図2のようにリング状に加工した円筒形ターゲットを用いる点が異なる。つまり、この円筒内にプラズマを閉じ込めてスパッタ成膜するため、ターゲットのエロージョンが均一化されて70%程度という高いターゲット利用率が得られる。また、基板を加熱しなくても均一な膜が成膜できる。

 研究グループがおもにトライしているAZO膜では常温成膜で可視光透過率80%以上、抵抗率10-4Ω・cmが得られており、ブースではポリカーボネートフィルムにAZO透明導電膜を成膜したサンプルを展示するなど、プラスチックフィルムサブストレートを用いるフレキシブルデバイスの透明導電膜に適しているとしている。

凹凸基板に適したデポジション法が登場


写真2 テキスチャー構造Si上へのPEDOT/PSS成膜結果


図3 ミスト粒径分布

 一方、埼玉大学は凹凸基板に有効なデポジション法として帯電ミストを利用したエアロゾルスプレーデポジション法を提案した。各種無機材料、有機材料を分散した分散液に超音波を印加して霧化し、N2キャリアガスでキャリーして基板上に付着・成膜する仕組みで、もちろん常温常圧で処理できる。図3のようにミスト粒径は印加周波数によって制御可能で、ミニマム20〜30nmにスモールグレイン化できる。このため、粒径が大きいと均一な成膜が難しい凹凸のある基板上への成膜に有効で、研究グループでは太陽電池の反射防止膜としてテキスチャー構造シリコンへの成膜例を紹介。写真2のように、傾斜面にもステップカバレッジ性よく均一に成膜できることをアピールしていた。


REMARK
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2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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