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nano tech 2018 第17回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(2018年2月14〜16日)


nano tech 2018 フレキシブルデバイス向けインフラでWhat's NEWが相次ぐ

2月14〜16日、東京ビッグサイトで開かれた「nano tech 2018 第17回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」。目立ったのは予想通りフレキシブルデバイス向けの製造装置・材料で、フレキシブルデバイスのメインサブストレートといえるプラスチックフィルム向けのニューテクノロジーが相次いで提案された。おもなトピックスをレポートする。

CNT-TFTのモビリティが低温poly-Si TFT並みに向上


写真1 CNT-TFT(東レ)

 まずデバイス関連では、今年も東レがカーボンナノチューブ(CNT)-TFTを披露した。シングルウォールCNT(SWCNT)1本1本に導電性補助ポリマーを絡ませて溶液状態での分散性を高めるとともに、膜化した際のユニフォミティを高めたのが特徴で、今回は導電性補助ポリマーを従来のP3HTから独自ポリマーに変更。さらに、用いるSWCNTの径を最適化した結果、キャリアモビリティを前年の84cm2/V・sから108cm2/V・sに高めることに成功。つまり、モビリティでは酸化物TFTや有機TFTを大きく上回り、低温poly-Si TFTに近いレベルまで性能を高めた。また、CNT-TFTの課題とされてきたON/OFF電流レシオも106オーダーとディスプレイにも適用できるレベルにまで改善。現在用いているCNT径は0.9nm、1.3nm、1.5nmなどで、径を細くするとON/OFF電流レシオが向上する反面、モビリティが低下するという。

 今回ブースに展示したのはPETフィルム上に作製した100個アレイデバイスで、チャネル長は10μm。ゲート電極とソース/ドレイン電極は感光性Agペースト、ゲート絶縁膜は感光性樹脂を用い、それぞれ感光性ペースト法で塗布・パターニング。一方、CNT半導体層はインクジェットプリンティング法によってダイレクトパターニングした。いずれもプロセス温度はマックス150℃以下で、プリアニール処理を施せば、PETフィルムをはじめとする耐熱性の低いプラスチックフィルムにも対応できる。

マスクレス表面改質パターニング技術でIJパターニング精度を補完

 製造装置では、東レエンジニアリングが超幅広PENフィルム製疑似有機トランジスタサンプルを展示、その巨大サイズ効果もあり圧倒的な存在感を示した。


図1 フィルム歪み補正パターニングのイメージ(東レエンジニアリング)


写真2 IJ法で模擬TFTアレイを形成したPENフィルム(東レエンジニアリング)

 この疑似有機トランジスタは、撥水/親水パターニング技術とIJプロセス技術を組み合わせて作製した。具体的には、まず絶縁膜付きPENフィルムの表面改質を行うため、DMDマスクレス露光装置によってUV光をパターン照射。この結果、UV照射された部分は撥水性から親水性へ変化する一方、未照射部分は本来の撥水性を維持する。この後、IJ法によってAgインクなどのインクをパターニング滴下。この結果、インクは親水部に選択的に付着し、イニシャルのIJ法を上回るパターン解像性・精度が得られる。周知のように、一般的なダイレクトIJ法では線幅20〜30μmが限界とされるが、今回のコンバインドプロセスでは線幅を10μm以下にファイン化することが容易だ。

 今回のサンプルはゲート電極/ゲート絶縁膜/ソース・ドレイン電極/有機半導体層という4層をすべてIJ法で塗布・パターニング。処理方式も900o幅のワークを走行方向600o範囲を一括で処理。つまり、600oサイズ毎にタクトタイム処理する。ちなみに、今回のサンプルは山形大学が作製、ゲート絶縁膜材料はJSR、塗布型有機半導体材料はフューチャーインクが用意した。

 また、このマスクレス露光ユニット、IJユニット、乾燥ユニットをインテグレーションしたRoll to Rollインクジェットパターン塗布装置はフレキシブルデバイス、つまりプラスチックフィルムサブストレートの使用を想定しているため、“歪み倣いプロセス”という新たなフィロソフィーを導入した。いうまでもなく、フィルム製デバイスはサブストレートの特性から熱処理工程などでパターン歪みが発生するためで、実際に発生した歪みを測定し、それに合わせてイニシャルのパターンデータを補正する。もちろん、これはDMDマスクレス露光装置、IJ装置ともマスクレスプロセスという特徴を活かしたグッドアイデアといえる。

フラッシュランプアニールで基板などへの熱ダメージをミニマム化


図2 フラッシュランプアニールによるインク焼成イメージ(ウシオ電機)

 一方、ウシオ電機も低耐熱性サブストレート向けとしてフラッシュランプアニールという乾燥加熱方式を提案した。フラッシュランプを1/1000秒以下で一括照射してアニールするため、サブストレートや下層へのダメージがミニマム化でき、乾燥したいレイヤーの表層のみを局所加熱することができる。図2はプロセスのイメージで、焼結後は単結晶ライクな膜が得られる。いうまでもなく、ショートパルスなら照射深度を浅めにして低ダメージ重視で、ロングパルスなら照射深度を深めにすることができる。今回は石原ケミカルのナノCuインクを焼成することにトライ。基板はほぼノーダメージであることが確認できたとしている。

超薄型化によって曲がるガラスに


写真4 伸縮性配線によるLEDの点灯デモ(JST)

写真3 曲がるガラス
(ミクロ技術研究所)

 マテリアル関連では、加工メーカーのミクロ技術研究所が“曲がるガラス”を披露した。市販されているイニシャル板厚0.33oのガラス基板をフッ酸処理によって超薄型化したもので、ブースでは厚さ0.2o、0.15o、0.1oのサンプルを展示。このクラスに薄型化すれば、写真3のように曲がるガラスになることをアピールした。通常のガラス基板と同様、最大730×920oサイズまで対応可能で、機能膜成膜、パターニング加工、穴開け加工といった付加価値をつけた状態でデバイスメーカーに出荷したい考えだ。

Agが自己整合的にゴム中に拡散する伸縮性配線が

 ここにきて注目を集めているニューワード、伸縮性配線では科学技術振興機構(JST)が「染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクト」の成果として印刷可能な伸縮性配線を報告した。ペーストを合成する過程でフッ素ゴム、フッ素化界面活性剤、μmサイズのAgフレークを混合すると、nmサイズのAg粒子がゴム中に自然発生して自己整合的に分散する現象を利用したもので、このプロセスにより伸縮が容易な配線を形成することができる。元の長さの5倍に伸ばした状態での導電率は世界最高の935S/cmで、スクリーン印刷をはじめとする各種印刷法でさまざまなワークに印刷できる。写真4は布にこの伸縮性配線を印刷したもので、LEDが正常に点灯していることがわかる。

カラー電気泳動ディスプレイにsuitableなマテリアルが出現

 オリジナル性という点で存在感を放っていたのがサカタインクスで、カラートナーや電気泳動ディスプレイ型電子ペーパー向けに電気泳動型顔料分散体「エコステージLD-X」を紹介した。つまり、電圧印加によって正極または負極に集まる電気泳動性をもたせた粒子で、写真5のように用いる顔料によってさまざまなカラーバリエーションが可能。つまり、電気泳動ディスプレイに用いればカラー化が容易に実現する。粒径は0.3〜1μmの範囲内で任意に設定可能で、その粒径分布もきわめて高い。


写真6 従来品(左)と開発品(右)の分散性比較(サカタインクス)

写真5 電気泳動型顔料分散体(サカタインクス)

 最大の特徴は写真6のように形状を真球状にしたことで、この結果、従来の異形状に比べ“ひっかかり”が少なく動きやすくなって電気泳動速度が向上。つまり、電子ペーパーに用いれば応答速度が向上する。また、写真6のように分散性も高まるため、電子ペーパーの面内ユニフォミティ改善にも寄与する。

 

 


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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