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CEATEC JAPAN 2015(10月7〜10日)


CEATEC JAPAN 2015 4K/8Kテレビ向けではレーザーBL技術などに脚光
有機ELDではフレキシブルパネルが人気

10月7〜10日、幕張メッセで開かれた「CEATEC JAPAN 2015」。ソニー、東芝、日立製作所といった大手電機メーカーが相次いで出展を取りやめたこともあり出展社数は531社と過去最低となり、展示ホールも1〜6ホールまでと減少。しかしながら、未来志向のライフスタイルを模索するデモが活発化するなど、エグジビション自体は決して低調ではなかった。ディスプレイ関連のイシューをピックアップする。

RGBレーザーバックライトで色再現性を大幅に拡大

 まず薄型テレビだが、予想通り4K&8Kテレビ一色だった。これらを展示したのはパナソニック、シャープ、三菱電機、BOEグループ(中国)の4社。


写真1 RGBレーザーバックライト搭載50型4K液晶テレビ(三菱電機)

 これらのうち、もっとも人気だったのが三菱電機のRGBレーザーバックライト搭載4Kテレビ。周知のように、同社は赤色レーザーを用いた4K液晶テレビを発売中だが、今回のプロトタイプはこれをさらに進化させてRGB3色のレーザーバックライトを用いたもの。独自開発した棒状の半導体レーザーユニットをRGBそれぞれ数百本パネルの下に配置したもので、いわゆる直下型バックライトに分類される。最大の特徴は4K/8Kスーパーハイビジョン映像規格であるBT.2020の色域を98%カバーできること。つまり、現行の2Kフルハイビジョンテレビ(BT.709)の1.7倍という広い色再現性が得られる。これは、レーザーのピーク波長がシャープなため、前面基板上に設けたマイクロカラーフィルター(CF)のブロードなスペクトルにおける裾引き部分との混色がないため。ブースでは50型サイズで2Kテレビとの比較デモを敢行。その色の濃さや再現性は一目瞭然で、コントラストも3500:1に達する。ただ、棒状レーザーユニットを配置するという方式のため、現段階ではエリアコントロールができないとのこと。しかし、これも配置方法さえ工夫すれば可能とみられ、その場合はいわゆるメガコントラストが期待できそうだ。気になる製品計画は未定だが、赤色レーザーバックライト搭載テレビの開発からリリースまでの時期を考えると、意外と早くマーケットに登場するかもしれない。

究極の次世代ハイエンドテレビが登場するも・・・・・・


写真2 HDR対応高輝度4K液晶テレビ(パナソニック)

 上記のように三菱電機のRGBレーザーバックライト液晶テレビは特設コーナーに長蛇の列ができるなどもっとも人気だったが、個人的にはパナソニックのHDR(High Dynamic Range)対応高輝度次世代4K 65型テレビはそれ以上の出来に見えた。何がすごいかと、その超高輝度の一点に尽きる。スペックを一切公表していないのが残念でならないが、輝度は1万cd/m2近いと推測される。そのクオリティは文章で表現できるものではなく、まさに百聞は一見にしかずで、高輝度によるあまりのハイクオリティに衝撃さえ受けた。筆者は1996年からディスプレイ業界をみているが、これだけのインパクトを受けたのは20年近く前にソニーが有機ELテレビを展示して以来。ディスプレイのクオリティは基本的に解像度というこれまでの概念さえ一掃されてしまったほどだ。なぜここまでの高輝度が可能になったのかについてもノーコメントだったが、白色LEDとCFの組み合わせと表示方法はいたって普通。液晶モードやTFTも一般的だという。つまり、TFTはa-Si TFTもしくはIGZO-TFTのどちらかだ。繰り返し残念だったのは同社がパネルを試作したかどうかも明言しなかったことで、正直いってどこに核心技術があるのかがイメージできなかった。いずれにしても製品化計画が気になるが、これもやはり未定。ただ、今後1年以内にHDR規格が最終決定される見通しのため、その前後にはマーケットに登場することが期待できそうだ。

 ちなみに、画面に表示していたのは近未来の“マチ”のコンピュータグラフィック画像だけで、このCG画像だからこれほどハイクオリティに見えるのか、それとも自然風景や人間を含め生物を表示した際も圧倒的なハイクオリティが得られるのか、そうした点についても判然としなかった。

BOEは世界最大テレビと11Kモニターを公開


写真4 10Kインフォメーションモニター(BOE)

写真3 85型8K液晶テレビ(シャープ)

 一方、シャープは10月30日にリリースする85型8K液晶テレビをメインにデモ。半導体エネルギー研究所と共同開発したCAAC-IGZO(C-Axis Aligned Crystal-In-Ga-Zn-O)-TFT駆動LCDを用いたもので、メガコントラストだけにその出来栄えはかなりのレベルだった。しかし、筆者が訪れたのはパナソニックの次世代テレビを見た直後だっただけに、インパクトはあまり感じなかった。

 BOEも世界最大の110型8K液晶テレビ、世界唯一の10K(10240×4320画素)対応82型インフォメーションモニターなどを展示。そのワールドワイドオンリー技術で存在感をアピールしていた。

シャープがフリーフォームディスプレイと透明ディスプレイで存在感を誇示


写真6 フレームレス12.3型FFS(シャープ)

写真5 車載機器用FFS(シャープ)

 テレビ以外のアプリケーションでは、シャープが圧倒的な存在感を誇示した。まずは、ディスプレイのデザイン性を革新するフリーフォームディスプレイ(FFD)で、車載用として中央部が凸型に湾曲した曲面型12.3型パネル、円形型ディスプレイの周囲に操作ダイヤルを備えたダイヤルUI搭載円形型FFD、車のバックミラーを想定しパネルの側面にタッチセンサーを備えたエッジUI搭載ミラー型FFD、台形型FFD、フレームレス8.8型/12.3型パネルを披露した。いずれもCAAC-IGZO-TFT駆動LCDで、ゲートドライバ回路を表示領域内の画素内に分散配置することにより狭額縁化し、表示領域に合わせ自由な形状に設計できるのが特徴。つまり、TFTアレイ上にゲートドライバ回路を一体形成した。とくにインパクトが強かったのはフレームレスFFDで、フレームを2o以下に削減することによって省スペース性を向上。こちらはノートPCやタブレット端末といったコンシューマー向けで、早ければ2016年にもこのパネルを搭載したアプリケーションが登場するとみられる。


写真8 5.2型フレキシブルカラー有機ELD(JDI)

写真7 シースルーTFT-LCD(シャープ)

 シャープはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のブースでもWhat's NEWを演出。産業技術総合研究所とスクラムを組んでいる“デザイン多用途型省エネディスプレイプロジェクト”の成果として20型透明TFT-LCDを公開した。サイドライト型のRGB-LEDを用い、それぞれの色のLEDをフィールドシーケンシャル(FS)駆動させることによってCFレスでカラー表示する方式で、この結果、背面が透けてみえるシースルーディスプレイになる。もちろん、ビデオ画像を表示させることも可能で、シャーウィンドウなどのデジタルサイネージや交通インフラなどに適する。実際、同社はこのディスプレイを東京メトロ・有楽町線豊洲駅の透過型ホームドアに試験的に設置。その効果を検証する実証試験を行っている最中。写真7はブースでのデモの様子で、バックに配置した模型がディスプレイ越しに透けて見えるのがわかる。

 ちなみに、FS駆動LCDでは動画を表示する際にカラーブレークアップ現象が観測されるが、上記のインフォメーション用途ではフル動画を表示するケースは少ないため、カラーブレークアップ対策はとくに必要ないようだ。

JDIがフレキシブル有機ELDを披露

 有機ELディスプレイでは、ジャパンディスプレイ(JDI)がNEDOの“革新的低消費電力型インタラクティブシートディスプレイ技術開発プロジェクト”の成果として5.2型フレキシブル有機ELD(1920×1080画素)を披露した。耐熱性の高いプラスチックフィルム基板上に低温poly-Si TFTと白色有機ELをダイレクト形成し、CFを形成した前面フィルム基板と貼り合わせた固体封止パネルで、R=25oにまで曲げることができる。写真8は支持フレームにこのフレキシブルパネルをセットしたもので、上半分は背面に曲げた部分を背面に設けたミラーで反射させて表示した画像である。

PM駆動のフレキシブル有機ELDが量産採用


写真10 31.2型カラー電子ペーパー(丸文)

写真10 1.8型フレキシブルモノクロ有機ELDを搭載したウェアラブル端末

 他方、双葉電子工業はパッシブマトリクス(PM)駆動のフレキシブル有機ELDを披露した。展示したのは1.8型モノクロパネル(160×32ドット)と1.4型カラーパネル(128×16画素)で、どちらもプラスチックフィルム基板上に有機ELをダイレクト形成し、独自の液状吸湿剤を充填した後、プラスチックフィルムで封止した。いわゆるガスバリア膜は設けていない固体封止パネルが、それでも輝度半減寿命は3000〜4000時間とモバイル機器や車載機器としては実用上問題ない値を確保した。ブースでは写真9のようにこのモノクロパネルを搭載したHuawei(中国)のウェアラブル機器を展示。すでに量産採用されていることをアピールしていた。

世界最大級のカラー電子ペーパーが登場
 
  電子ペーパー関連では、商社の丸文が孤軍奮闘。国内販売している米E Inkのマイクロカプセル型電気泳動ディスプレイモジュールを展示した。What's NEWは世界最大級の31.2型カラーパネル(1280×720画素)で、前面基板上にCFを設けることにより4096色が表示できるようにした。コントラストは12:1程度で、写真10のようにフレームが透明なためか、コントラストが不足しているように感じた。その一方、13.3型カラーパネル(400×300画素)は完成度が高く、フレームが最適化されていたこともあり、電子ペーパーモジュールとしては十分なコントラストを確保していた。


REMARK
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