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nano tech 2013/Printable Electronics 2013(1月30〜2月1日) |
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1月30日〜2月1日、東京ビッグサイトで開かれた「nano tech 2013/Printable Electronics 2013」。ここでは、プリンタブルTFTをはじめとするプリンタブルデバイス関連のトピックスを中心にレポートする。
まず有機TFTでは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合研究機構)のブースで大阪大学、広島大学、日本化薬、大阪府市立産業技術総合研究所、クリスタージュ、ヤマナカヒューテックの研究グループが今年もWhat's NEWを提供。大阪大学 竹谷研究室が独自開発した単結晶有機半導体成膜法「塗布結晶化法」をさらにブラッシュアップしたプロセスを紹介した。 周知のように、塗布結晶化法は基板上に有機半導体溶液を滴下し、その乾燥過程であらかじめ形成した溶液保持構造物の方向へ有機半導体分子を成長させて単結晶化させる方法。今回紹介したニュープロセスはその基本概念を踏襲しながら、さらなる改善を図った。
プロセスフローはまずゲート、ゲート絶縁膜、ソース/ドレインを形成した基板上に幅0.5oのガラス棒を1oピッチで配置する。これが溶液保持構造物となる。続いて、C8-BTBTやC10-DNTTといった塗布型有機半導体溶液をキャスト成膜する。その乾燥過程では有機半導体分子が溶液保持構造物に向かって一方向に成長しながらグレインサイズが大きくなる。そして、溶液に含まれていたテトラリンやジクロロベンゼンといった有機溶媒が揮発し、単結晶有機半導体膜ができる。乾燥温度は100℃で、5分もすれば有機溶媒が揮発してプロセスが完了する。もちろん、ガラス棒の代わりにネガ型フォトレジストをフォトリソでパターニングして溶液保持構造物を設けてもいい。
研究グループは、上記のプロセスで有機半導体層を作製したボトムコンタクト型有機TFT駆動のモノクロLCDを作製。パネルのデモは昨年もあったが、今年は表1のようにサイズを2.3型から2.8型に、解像度を30×23ドットから128×60ドットに。さらに、ピクセルサイズを1.5×1.5oから0.5×0.5oにシュリンクさせて解像度を51ppiに高めた。 しかしながら、それ以上にインパクト抜群だったのが蒸着型DNTTデバイスと塗布型DNTTデバイスの表示比較デモ。どちらも表示した文字はかすれ気味ながら、前者は60Hzでドライブ。駆動電圧も10Vを要した。これに対し、後者は480Hzと超高速駆動ながら5Vという低電圧を実現。いうまでもなく、これはモビリティが前者は0.01cm2/V・s前後であるのに対し後者は4cm2/V・s以上と大きな差があるためで、大型化や3D化で高速駆動が当たり前になってきた液晶テレビにも対応できることを実証した。 凸版印刷はフルプリンタブル有機TFTで電子ペーパーをドライブ
一方、凸版印刷もNEDOのブースでプリンタブル有機TFT駆動のマイクロカプセル型電気泳動ディスプレイを披露した。有機TFTはコンベンショナルなボトムコンタクト型で、ゲートとソース/ドレインはオリジナルの転写印刷法、ゲート絶縁膜とパッシベーションはスピンコート法、有機半導体層はフレキソ印刷法、層間絶縁膜と画素電極はスクリーン印刷法で形成した。すなわち、オールプリンタブルデバイスである。各種印刷法を使い分けた理由については詳細を明らかにしなかったが、クリティカルなソース/ドレインはもっとも印刷解像度の高い転写印刷法を採用。線幅数μmのファインラインが印刷できるという。なお、それぞれの材料は明らかにしなかったが、メタル電極はナノAgペースト・インク、画素電極はナノワイヤAgペーストを用いているようだ。 ブースで公開したのは2型50ppiパネル、5.35型150ppiパネル、11型73ppiパネルの3種類で、写真2のようにフレキシブル性もアピール。ただ、湾曲化させたフレキシブルパネルは線欠陥が目立つなど完成度はさほど高くなかった。 セパレータ方式で有機半導体をセルフパターニング 山形大学は、究極のフレキシブルディプレイとして有機TFT駆動有機ELディスプレイの研究成果をアピール。写真3のように、PENフィルム上に有機TFTを形成した試作パックプレーン(250×125画素)を披露した。回路は2トランジスタ+1キャパシタというシンプル構成で、モビリティは0.1cm2/V・sながら有機ELDがドライブできるという。
What's NEWは有機ELDも含めたプロセスフローで、図2のようにまずキャリアガラス基板上に接着層を介してPENフィルムをラミネートする。続いて、ゲート、ゲート絶縁膜、コンタクトホール、ソース/ドレインを形成した後、ネガ型フォトレジストを塗布しフォトリソでパターニングして逆セパレータ形状の有機半導体分離層を形成する。この結果、チャネル部だけが開口する。その後、ペンタセンなどの有機半導体をベタで真空蒸着する。その結果、有機半導体は有機半導体分離層がないチャネルの上部、そして有機半導体分離層上に付着し、自己整合的にパターニングされる。つまり、パッシブマトリクス有機ELDで採用されているカソードセパレータ方式である。この後はプラナリゼーションとパッシベーションを形成。続いて有機ELを形成した後、最後に接着層からガラス基板をリリースする。 いうまでもなく、この接着層の接着性がポイントで、接着力が強すぎるとリリースしにくくなりパネルへのダメージが懸念される一方、接着力が弱すぎるとプロセス中におけるリリースの危険やコンタミネーションなどが問題になる。このため、研究グループは接着性を最適化した接着層を使用。手で簡単にリリースできるようになったとしている。
有機TFTと同様、プリンタブルTFTと位置づけられているカーボンナノチューブ(CNT)-TFTでは産総研がNECと共同開発した研究成果をアピールした。展示したのはポリイミドフィルム基板上に作製したボトムゲート/ボトムコンタクトデバイスで、写真4のように32×32アレイを作製。ゲートとソース/ドレインはナノAgインクをインクジェット印刷、CNT活性層はCNTインクをディスペンス印刷した。また、ゲート絶縁膜はポリイミドをスピンコートした。つまり、オールプリンタブルデバイスである。 最大の特徴は、ELF(電界誘起層形成)法と名づけた分離法によって市販のシングルウォール(SW)CNTから半導体性SWCNTだけを抽出してインク化したこと。イオンフリーポリマーを界面活性剤に用いたCNT溶液に直流電圧を5〜70V印加することによって金属性SWCNTを上部に、半導体性SWCNTを下部に分離・シチュエートさせる仕組みで、この結果、抽出したSWCNTは95%以上が半導体性を示す。この分離した半導体性SWCNTをインク化して基板上にディスペンス滴下。200℃で焼成した後、界面活性剤で洗浄するとキャリアモビリティが0.3cm2/V・s前後から3cm2/V・sクラスと10倍にアップする。このため、これまでCNT-TFTのウィークポイントだったON/OFF電流レシオも105オーダーと飛躍的に向上。さらに、ゲート絶縁膜をアプラスを用いてSAM(Self Assembled Monolayers)処理することによって、チャネル毎の出力ばらつきも30%に抑制した。このため、センサーデバイスやディスプレイデバイスに適用できるレベルに達したという。 ただ、このスペックではZnO系酸化物TFTはもちろんのこと、有機TFTにも及ばないレベルではと質問すると、説明員は「確かにまだスペックは不十分だが、大気中での安定性は有機TFTとは比較にならない」とコメント。有機TFTに対しては優位性があることを強調していた。
反射率、色再現性抜群の電子ペーパーが ディスプレイデバイスでは今回、電子ペーパーのデモが目立った。まずはリコーで、NEDOのブースでフルカラーのアクティブマトリクス駆動エレクトロクロミック(EC)ディスプレイを披露した。 パネルの構造は図3の通りで、シアンEC層、イエローEC層、マゼンダEC層をスタックしそれぞれの共通ITO電極でドライブするため、ひとつの画素電極で積層したそれぞれのEC発色層を駆動させることができる。ECDの原理からEC層はマイナスの電圧を印加すると還元状態となって発色する反面、プラスの電圧を印加すると酸化状態となり消色して透明になる。いうまでもなく、マイクロカラーフィルターが不要なため、高精細化に有利で、表2のように反射率も50〜70%、コントラストも60:1、色再現性も35%と他の電子ペーパーデバイスを大きく凌駕する。つまり、極端にいえば透過型TFT-LCDに近い特性が得られる。もちろん、30分弱というメモリー性も備える。
ブースでは、外部調達した低温Poly-Si TFT基板を用いて作製した3.5型パネルを展示。64階調が表示できるデモを敢行した。気になる事業スタイルについては、リコーが電子ペーパーデバイスとして量産化する方向。 有機/金属ハイブリッドポリマーでシンプル構造のマルチカラーECDを 他方、物質・材料研究機構(NIMS)は科学技術振興機構のブースで有機/金属ハイブリッドポリマーを用いたECDを公開した。新たに合成したのは、ビス(タージリン)を有機配位子にしてFeイオンやRuイオンと錯形成することにより、金属イオンと有機配位子を交互に結合させたハイブリッドポリマー。このポリマーは、金属イオンから有機配位子への電荷移動吸収にもとづいて色が変化する。一方、金属イオンを電気化学的に酸化すると消色状態となり無色透明になる。研究グループは、金属イオンや有機配位子の種類によって写真6のように多彩なカラーバリエーションを発掘。マルチカラー化やフルカラー化のメドをつけた。
今回展示したのは200×200oのマルチカラーパネルで、電圧ONでブルー、OFFでパープルに色変化する。つまり、単層パネルでも印加電圧によって2〜3種類のマルチカラーが表示できる。これは、2種類の金属イオン種を導入したため。気になるスペックはコントラスト60%以上、応答速度1秒以内、メモリー性10万時間以上と実用的な値を確保。新たな電子ペーパーデバイスとして実用可能性を示した。 第3の発光メカニズムにより燐光並みの高効率な蛍光有機ELが 有機ELでは、九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)がこれまでの常識を覆す画期的な研究成果を発表。蛍光発光、燐光発光に次ぐ第3世代の発光メカニズムを報告し、実際にパッシブマトリクス駆動有機ELDを試作することに成功した。
その第3の発光メカニズムだが、研究グループは熱活性型遅延蛍光(Thermally-activated Delayed Fluorescence:TADF)と命名。図4のように電流励起によって発光層内で一重項励起エネルギー(S1)が25%、三重項励起エネルギー(T1)が75%発生するというところまでは従来素子と同じだが、TADFでは室温エネルギーによる振動によってT1がS1へアップコンバージョンされる。したがって、S1が100%となり蛍光発光に寄与する。これには、T1とS1のエネルギーギャップ(僞st)が0.1eV程度と小さいことが条件で、ドナー&アクセプター型の低分子材料を用いる必要がある。例えば4CzTPNが代表的で、図5にようにホスト材料であるCBPと共蒸着した素子は外部量子効率20%と燐光素子並みを示す。つまり、IrやPtといった高価なレアメタルフリーで燐光素子並みの高効率が得られ、その合成コストも燐光ドーパントの1/10近くなる。もちろん、燐光関連の特許からすべてエスケープできるという特典もつく。 ブースでは、写真8のようにモノカラーながらスカイブルー、ブルーグリーン、イエローのパッシブパネルを展示。その完成度も大学の研究室レベルを飛び越えメーカーレベルといっていいほどで、その実用化も近いように感じた。
大型有機EL照明デバイスにはポストITOが必要 ここにきて次世代照明デバイスとして認知されてきた有機EL照明デバイスでは、コニカミノルタアドバンストレイヤーがNEDOのブースでNEDOプロジェクトの成果をアピールした。What's NEWはITOに代わる透明アノードを用いたオール燐光デバイスで、塗布型透明導電材料をストライプ状にダイレクト印刷して透明アノードを形成した。これは、100×100o以上の大型サイズになるとITOアノードではそのシート抵抗値から輝度ユニフォミティが低下するため。そのITO代替材料は明らかにしなかったが、シート抵抗値はITOの1/10以下である1Ω/□、可視光透過率は80%程度。このスペックから考えると、ナノワイヤーAg材料とみて間違いなさそうだ。 東芝が高効率の有機薄膜太陽電池を公開 他方、有機薄膜太陽電池では東芝がNEDOプロジェクトの成果として光電変換効率7.7%を達成したことをアピールした。 試作したのは50×50oモジュールで、素子分離のため各レイヤーをストライプ状にパターニング。非発電部に当たるライン間ギャップをミニマム化し、開口率を94%に高めた。デバイス構造はITOアノード/メタル補助電極/ホールバッファ層/バルクヘテロ接合型有機半導体層/電子バッファ層/Alカソードと一般的だが、P型、N型有機半導体ともオリジナルのマル秘ポリマーを使用。吸収波長を紫外領域から800nm程度の長波長領域にまで広げた。さらに、独自のメニスカスコーターで有機層を塗布&ダイレクトパターニングし、膜厚ユニフォミティを±3%に高めた。これらの結果、有機薄膜太陽電池では驚異的といえる変換効率を達成した。
ちなみに、東芝が展示会で有機薄膜太陽電池を披露するのは初めてで、近い将来、デバイスメーカーとして自ら量産する考えだ。 基板上に材料をコートするだけで有機ELの光取り出し効率を2倍に マテリアル関連では、富士フイルムが有機ELの発光効率を大幅に改善する光取り出し改善材料を紹介した。ガラス基板〜アノード間にこの光取り出し層をインサートすると、光取り出し効率が20%から40%と2倍に向上するという。これは、コンベンショナルなマイクロレンズアレイを用いるケースに比べ4割ほど高い。どのような材料なのかについてはゼロ回答だったが、ガラス基板とアノードの屈折率差が小さくなるよう屈折率を最適化した微粒子を用いているとみられる。つまり、マイクロレンズアレイのようにレイヤーの形状ではなく、メインマテリアルの屈折率で光取り出し効率を改善する。このため、形成法もガラス基板上にダイコーターでベタコートするだけ。 容易に想像できるように、マイクロレンズアレイはサブμm以下のディメンジョンの微細凹凸アレイを設ける必要があり、歩留まりも含めその作製難易度は高く、それにより結果的に製造コストも上昇する。これに対し、今回のアプローチはきわめてシンプルかつローコストといえる。実際、製品化形態もこの光取り出し層付きガラス基板に加え、光取り出し材料だけの供給も想定している。
写真11は光取り出し層ありとレスデバイスの比較デモで、写真ではわかりずらいが、レスデバイスは反射が大きかったのに対し、withデバイスは反射がほとんどみられず、光取り出し効率が改善されていることが実感できた。 低温焼成で低抵抗が得られるCu系配線技術が プリンタブルデバイスの配線用マテリアルでは、日立化成が画期的なCu系回路形成技術を発表した。 同社オリジナルのCuインク・ペーストをIJ法やスクリーン印刷法で印刷した後、基板を不活性雰囲気の大気圧チャンバに導入。マル秘の反応性ガスをパージしながら、基板を180℃×30分加熱処理する。この際、図6の断面写真のようにCuパウダーはCu化合物となって緻密な結晶に成長する仕組み。つまり、反応性ガスにはCu系パウダー同士を反応させて融着を促進する機能がある。
そのグレインサイズは70nm程度で、ピュアCuのバルクの2倍強に当たる4μΩ・cmという低抵抗が得られる。もちろん、各種基板に対する密着性も良好だ。写真12はPENフィルム上にスクリーン印刷したサンプルで、印刷直後に比べ導体処理後は茶色に変色しCu系配線になっていることが想像できる。 パルス光を照射してメタルインクを室温焼成 そこで、ソース/ドレインにナノAgを用いたトップゲート型P3HT有機トランジスタを作製。そのキャリアモビリティは10-2cm2/V・sとP3HTデバイスとして高い値が得られた。さらに、ナノCuインクにも適用できることを確認。今後、プリカーサ系の有機半導体材料にも適用できるか試す予定だ。 ちなみに、その原理からインクに含まれるバインダなどが基板上に飛散することは避けられないため、パルス光照射後、エアーナイフ処理によってこうした残渣を除去する必要がある。また、気になる下地への密着性についてはまだスクラッチテストなどは行っていないという。
Siインク・ペーストを印刷しレーザー照射で多結晶化 プリンタブルTFT向けマテリアルでは帝人も存在感を誇示、独自のSiインク・ペーストを紹介した。粒径数nmから数十nmのナノSiパウダーをインク・ペースト化したもので、固形成分比を20%まで高めることができる。また、Siパウダー合成中にボロンやリンをドープしてP型化・N型化できるのも特徴で、溶液状態では添加剤や分散剤レスで長期保存することが可能。使用フローは各種印刷法で基板上に印刷した後、焼成またはレーザー照射して溶融・固化する仕組み。この結果、粒径数μmの多結晶膜が得られる。ただ、通常の焼成の場合、1000℃近くの高温を要するため、プリンタブルTFT用途ではエキシマレーザーなどを局所的に照射して溶融・固化することになる。写真13はシリコンウェハー上に作製したTFTで、今回は外部委託によりコンベンショナルなフォトリソでSi活性層をパターニングした。 PIフィルム上にダイレクト形成したTFTが登場 台湾のIndustrial Technology Research Institute(ITRI)もフレキシブルTFTでトピックスを提供。写真14のように、ポリイミド(PI)フィルム基板上にダイレクト形成したフレキシブル低温Poly-Si TFTを展示した。プロセス温度はマックス450℃で、370×470oマザーガラスを用いて作製した。ITRIはこのフレキシブルTFTを「Flexible Universal Plane(FlexUP)」と命名。パネル試作用として低温Poly-Si TFTだけでなく、a-Si TFT、ZnO系酸化物TFT、有機TFTもサンプル出荷可能としている。 |
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