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技研公開2023(2023年6月1〜4日)


技研公開2023 伸縮可能なLEDディスプレイを初披露

6月1〜4日、NHK放送技術研究所(東京都世田谷区)で開催された「技研公開2023」。ディスプレイ関連のテーマはイマーシブ・コンテンツ(immersive contents)。つまり、没入感を重視したコンテンツを意識した二つのデバイスを提案した。


写真2 伸縮可能な緑色LEDディスプレイ(32×32ドット)

写真1 伸縮可能な白色LEDディスプレイ(16×16ドット)
 今回初公開したのが伸縮可能なLEDディスプレイ。比較的透明なアクリル系ゴムシート上にマイクロLEDチップをアレイ状に実装したもので、写真1、2のようにゴムシートと伸縮メタル配線によって伸縮するのが特徴。つまり、これまで披露してきたフレキシブルディスプレイをより進化させて自由度を高めた印象。

 キーポイントとなる伸縮配線についてはノウハウのため、組成を明らかにせず。伸ばしても破断しないのはもちろんのこと、比抵抗も増加しないよう、樹脂バインダの組成を最適化したり混合比率を高めていると推測される。デバイス作製フローは、まず元ガラス基板上に伸縮配線をインクジェット印刷し乾燥した後、その上部にマイクロLEDチップを実装。最後に、元基板をゴムシートに接着して転写した後、剥離する仕組み。最大の特徴である伸張率は40%で、最終的にはドーム状に曲面できる60%を目指している。

図1 柔軟に変形できるディスプレイのイメージ

 今回展示したのは16×16ドットの白色デバイス(0.8oサイズLED)と32×32ドットの緑色デバイス(0.02oサイズLED)。後者はそのディメンジョンからディスプレイといってもいいほどで、RGBチップを集積すればフルカラーディスプレイも容易に実現しそうだ。NHKでは図1のようにコンベンショナルなディスプレイでは困難な3D形状ディスプレイやウェアラブルイディスプレイを実現したい考えだ。

CdフリーQDで高色純度LEDディスプレイを

 もうひとつのイマーシブルディスプレイは量子ドットディスプレイ(QE-LED)。こちらは以前からモノカラーパネルを公開してきたが、今回は初めてRGBフルカラーパネルを展示。有毒なCdフリーの量子ドット材料、赤色として硫化銀銅インジウムガリウム(AgCuInGaS2)、緑色として硫化銀インジウムガリウム(AgInGaS2)、青色としてセレン化亜鉛(ZnSe)化合物を開発したことを強調した。図2のように、4K/8K放送で採用された国際標準規格であるBT.2020包含率80%と色再現性が高いのが特徴。


図2 開発したQE-LEDの色再現性



写真3 フルカラーQE-LED
  試作したのは64×64画素のフルカラーパネル(0.6oピッチ)で、QE発光層はIJ印刷法によってダイレクトパターニングした。一方、その他のレイヤーは有機ELと同じ構造で、真空蒸着や各種ウェット法といった有機EL技術を流用した。

 今回の試作パネルはガラス-ガラスの封止構造だが、将来的にはプラスチックフィルムと封止層を用いてフレキシブルディスプレイを実現したい考え。ただし、今回のCdフリーQEはシェル-コア構造を配位子でカバリングしているため、酸素のアタックによって配位子が酸化劣化しやすいのが課題で、実用化に当たっては有機ELデバイス並みのガスバリア膜が必要になりそうだ。



REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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