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第81回応用物理学会秋季学術講演会(オンライン:9月8〜11日) |
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9月8〜11日、オンライン形式で開催された「第81回応用物理学会秋季学術講演会」。有機EL、有機TFT、酸化物TFT、ペロブスカイト太陽電池などの分野から注目講演を予稿集ベースでピックアップする。 エキサイプレックスホストを用いて深赤色有機ELデバイスを高効率化・長寿命化まず有機ELでは、山形大学の研究グループが波長670nm付近の深赤色を発光する高効率赤色有機ELを発表した。 試作デバイスはフェナントロリン誘導体をn型ホスト材料、アリールアミン誘導体NPDをp型ホスト材料として用いるエキサイプレックスホストを利用して高効率化・長寿命化を図った。フェナントロリン誘導体は図1のようにNBphen、DPB、pDPBの3種類を用いた。これらn型ホストとp型ホスト材料NPDの共蒸着膜を作製し、まず光学特性を評価した。
光学物性の評価結果から、PLスペクトルからすべてのフェナントロリン誘導体はNPDとエキサイプレックスを形成することがわかった。一方、NBphenをn型ホスト材料に用いた深赤色有機ELデバイスは最大外部量子効率16.7%、発光開始電圧2.4Vを実現。25mA/cm2の定電流密度下で素子寿命が大幅に向上することがわかった。 転写プロセスを工夫し有機半導体へのダメージレスで高仕事関数塗布型電極を形成 有機トランジスタ関連では、東京大学、OPERANDO-OIL、科学技術振興機構(JST)、物質・材料研究機構の研究グループがあらかじめ別基板上に塗布したメタル電極を有機半導体基板に転写するというニュープロセスを報告した。電極インクによる有機半導体膜へのダメージを回避する狙いで、高移動度かつ低接触抵抗デバイスを作製することに成功した。
作製した有機TFTの飽和領域における伝達特性は、図2-(b)のように13cm2/V・sと高いキャリアモビリティが得られた。また、その接触抵抗は120Ω・cmと低い値を示した。つまり、この塗布型電極によって良好なキャリア注入が得られることがわかった(図2-(c))。 低温形成可能な陽極酸化Al2O3をフレキシブルIGZO-TFTのゲート絶縁膜に 酸化物TFT関連では、高知工科大学の研究グループがフレキシブルデバイス向けとして陽極酸化Al2O3ゲート絶縁膜を用いたIGZO(In-Ga-ZnO)-TFTを報告した。コンベンショナルなSiOxゲート絶縁膜は400℃クラスという高温でCVD成膜する必要があり、耐熱性の低いフレキシブルサブストレートには適していないため、150℃以下で成膜可能な陽極酸化法を用いることにした。
図3は作製したIGZO:H-TFTの伝達特性で、キャリアモビリティ24cm2/V・s、Vth=-0.84V、S値=0.19V/dec、ヒステリシス0.22Vと優れた特性が得られた。 図4にポジティブバイアス熱ストレス信頼性(PBTS)試験結果を示す。ストレス温度を室温〜100℃で変化させ、ゲート電圧+12Vを104秒間印加した際のVthシフト(ΔVth)のストレス時間依存性で、室温でのストレス印加では104秒後のΔVthは0.21Vと優れた信頼性を示した。一方、温度加速下ではストレス時間が〜103秒まではVthがマイナスにシフトしたが、〜103秒を超える領域ではポジティブフトがみられ、ストレス温度の増大とともにそうした傾向が顕著になった。 透明導電膜を調整してECデバイスのEC特性を制御 光透過率を電気的に制御できるエレクトロクロミック(EC)デバイスでは、スマートウィンドウへの適用を目指し、北見工業大学が可視光領域と赤外線領域の透過率を制御する研究結果を報告した。スマートウィンドウで高い省エネルギー効果を得るには可視光領域と赤外線領域の透過率変化幅が大きく、脱色時の透過率が高いことが望ましい。そこで、今回の研究では異なるシート抵抗値のITO膜を透明導電膜に用い、この上にWO3膜を成膜し、可視光領域および近赤外領域におけるEC特性を評価した。
その結果、ITO膜のシート抵抗値は熱処理前が177Ω/□、熱処理後は54Ω/□だった。図5に、ガラス基板上に成膜したITO膜の波長200〜3300nmにおける透過スペクトルを示す。高抵抗(177Ω/□)と低抵抗(54Ω/□)のITO膜は可視光領域で70%以上と高い透過率を示したが、低抵抗のITO膜の透過率は約2000nmよりも長波長側で減少した。 図6に、これらのITO膜上に成膜したWO3膜の着脱色時における透過スペクトルを示す。高抵抗ITO膜上に成膜したWO3膜は低抵抗のITO薄上に成膜したWO3膜より近赤外領域において脱色状態で高い透過率を示し、透過率変化幅も若干大きかった。これらの結果から、可視光領域および近赤外領域で良好なEC特性を得るには透明導電膜の光学特性を調整することが重要であることがわかった。 ペロブスカイト太陽電池の光吸収層を2ステップで形成する際の溶媒の影響を調査
周知のように、ウェット法によるペロブスカイト膜の成膜は、すべての材料を混合した溶液を用いて成膜する1ステップ法と、PbI2を成膜後にMAI処理をして成膜する2ステップ法に大別される。結晶核の生成と結晶成長が同時に起きる1ステップ法に比べ、徐々にペロブスカイトが生じる2ステップ法の方がペロブスカイト結晶が大きくなり、より高品質なペロブスカイト膜が得られると考えられる。今回の研究では、2ステップ法で作製したペロブスカイト太陽電池における混合溶媒の影響を調べた。 表2のようにDMSOとDMFの混合溶媒を用いる場合、DMSO溶媒の割合が増加すると同一の成膜条件でPbI2膜の膜厚が減少。ペロブスカイト膜自体の膜厚もPbI2膜に依存するため減少した。また、図7-(a)のように、DMSO溶媒の割合が減少すると膜厚が厚くなるにも関わらず、PbI2(001)のピーク強度が減少した。PbI2(001)のピーク強度減少は、アモルファス領域の増加を意味する。
ゾーンヒーティング再結晶化法でペロブスカイトを大粒径化 一方、東京工業大学の研究グループはペロブスカイト層の大粒径化を図るため、ゾーンヒーティング再結晶化法(ZHR法)という新たなプロセスを提案した。 ZHR法は元来、シリコン太陽電池に対して提案した手法で、基板温度に加え、ランプ加熱によって核成長を起こす面積を制御し、シリコン表面の粗さを低減する。この手法をペロブスカイトに応用することにより界面の粗さおよび配向を制御し、二次結晶成長の促進を図ろうというもの。 今回の実験では、まず洗浄したITO透明導電膜付きガラス基板を波長254nmの紫外光で1時間処理した後、ホットプレートで420℃に加熱して電子輸送層のTiO2緻密層をスプレー法により成膜し、450℃で焼成した。その後、ペロブスカイト(CH3NH3PbI3)を1ステップ法で基板上にスピンコートし、貧溶媒を途中で滴下した後、100℃で30分アニールした。この後、ZHR法では基板を図8の装置にロードしてAr雰囲気へ置換した後、下部ヒーターで100℃まで昇温した後、上部ランプをつけ30秒待機し種々のスキャン速度でスキャンした。プロセスは(i)ランプスキャン出力変更、(ii)スキャン速度変更、(iii)積算加熱量一定の3条件について行った。その後、正孔輸送層のspiro-OMeTADを成膜し、Au極を真空蒸着しした。
参考文献 1)常山ほか:フェナントロリン誘導体をn型ホスト材料として用いた長寿命深赤色有機EL、第81回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集、11-008(2020.9) 2)牧田ほか:無電解金めっき電極を用いた高性能有機薄膜トランジスタ、第81回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集、11-072(2020.9) 3)河野ほか:陽極酸化法Al2O3ゲート絶縁膜を用いたIGZO TFTの低温作製、第81回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集、16-009(2020.9) 2) 4)安谷内ほか:ITO電極の光学特性がWO3薄膜のエレクトロクロミック特性へ与える影響、第81回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集、05-107(2020.9) 5)大川ほか:2ステップ法で作製されたペロブスカイト膜でのPbI2膜への混合溶液影響、第81回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集、11-214(2020.9) 2) 6)鈴木ほか:ゾーンヒーティング再結晶法によるペロブスカイト太陽電池光吸収層の大粒径化と発電特性の関係 、第81回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集、11-215(2020.9) |
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