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有機エレクトロニクス研究会(11月16日) |
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11月16日、都内で電子情報通信学会主催による「有機エレクトロニクス研究会(OME)-光機能性有機材料・デバイス、光非線形現象、一般(OME2012-55〜61)」が開かれた。ここでは、千葉大学の研究グループが発表した塗布型酸化物TFTに関する講演をピックアップする。 研究グループはパネルの開口率を高めるため、ドライブTFTと有機ELが一体化した有機発光透明TFTを提案。デバイス構造は図1の通りで、ドライブTFTのドレイン電極が有機ELのカソードを兼ねるとともに、ソース/ドレイン間にストレージキャパシタを設けたのが特徴。この結果、有機EL、ドライブTFT、そしてストレージキャパシタ領域を疑似的な発光領域にでき、パネルの開口率が大幅に向上する。
試作デバイスの設計に当たっては、まず携帯電話用ディスプレイで一般的な3.2型ワイドVGA(854×480画素)を想定した。ここで開口率を50%と仮定した場合、パネルの輝度は500cd/m2、発光効率は3cd/Aが必要になる。つまり、開口率を差し引いた輝度は1000cd/m2が必要になるため、有機EL部に必要な電流値は約1.15×10-6A、チャネル長当たりに必要な電流値は約4.9A/mになる。さらに、チャネル幅当たりのドレイン電流は4.9×10-3A/mが必要になることがわかった。 これらの要求仕様に基づき、まず図2のようにソース/ドレインにAlを用いたシンプルな透明酸化物TFTを作製した。ポイントとなる透明半導体層には透明かつn型である塗布型ZnO(ADEKA製)を使用。これは、安価なウェット成膜が可能なことに加え、可視光領域において透明なためEL光によるキャリア誘起などにともなうトランジスタ特性の変化が少ないため。
プロセスフローは、まずゲート電極として機能するITO透明電極付きのガラス基板上にSiNx膜を膜厚200nmでDCスパッタリング成膜。この後、IPA(イソプロピルアルコール)に溶解した塗布型ZnO溶液をスピンコートし、200〜350℃で2時間加熱して焼成した。最後に、Al膜を真空蒸着してソース/ドレインを形成した。 図3はZnO半導体層の焼成温度と特性の関係で、線形領域で見積もられたキャリアモビリティは350℃処理で0.1cm2/V・sだった。その一方、300℃以下では上記の目標電流値に達しなかった。これは、ZnO膜中に有機系の不純物が残留しているためと考えられる。 そこで、酸素雰囲気で185nmまたは254nmのUV光を照射するUV/O3処理をしながら熱処理することにした。その結果、図4のように180℃以上で処理すれば目標電流値が達成でき、200℃処理で0.1cm2/V・s以上というモビリティが得られた。図5はUV/O3アシスト処理の有無を比較したもので、モビリティ0.1cm2/V・s以上の領域ではUV/O3アシスト処理をすると150℃も低温化が可能になる。これは、UV/O3アシスト処理によって光学的反応が促進されて有機系の残留不純物が減少するためと考えられる。
これらの結果からプラスチックフィルムをサブストレートにしたフレキシブルディスプレイにも塗布型ZnO半導体が適用できることを確認。図1の有機発光透明TFTのメドがついたと結論づけた。 参考文献
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