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大学見本市2024〜イノベーション・ジャパン (2024年8月22〜23日)


イノベーション・ジャパン2024〜大学見本市&ビジネスマッチング〜
3Dペロブスカイトに代わって2Dペロブスカイトを垂直配向

8月22〜23日、東京ビックサイトで「イノベーション・ジャパン2024〜大学見本市&ビジネスマッチング〜」が開かれた。独断と偏見でWhat's Newをレポートする。



図2 レイヤー構成の比較


図1 信頼性評価結果

 次世代太陽電池としてオーソライズされているペロブスカイト太陽電池では、上智大学の竹岡裕子教授(理工学部物質生命理工学科)の研究グループが新たなコンセプトのペロブスカイト化合物を提案した。

 周知のように、既存のペロブスカイト化合物はハロゲン化金属八面体のすべての頂点が隣の八面体と連結されている三次元(3D)化合物だが、その構造から水によって劣化しやすいというウィークポイントがある。このため、研究グループはハロゲン化金属八面体のつながりをx,y,z方向に制限する2D構造に着目。実際、図1のように25℃、40〜50%RHという環境で信頼性を評価したところ、従来の3D構造ではわずか1週間で回折ピークが大きく変化したのに対し、2D構造では1年後もほとんど変化がみられなかった。長期安定性、つまり寿命の面では明らかに2D構造が優位といえる。

 ただし、図2-右上図のように2D構造では疎水基の存在によって縦方向のキャリアの動きが阻害されるため、図2-下図にように疎水基が邪魔にならないよう2D構造を垂直配向化する必要がある。その方法として分子構造の工夫、親疎水基のバランス制御などが重要になるが、とくにペロブスカイトプリカーサ溶液に用いる溶媒と成膜法を工夫するのが効果的だという。例えばバーコート法やスピンコート法で基板上に塗布した後、塗布膜の中心核から上下方向へ結晶化が進行するようにする。

 これらの工夫の結果、コンベンショナルなPb系ペロブスカイト太陽電池では10%程度の光電変換効率を達成。現在は本命であるSn系ペロブスカイト太陽電池で同様のアプローチにより効率改善を図っているという。

DUVレーザー照射によってアモルファスITO膜を多結晶化

 製造プロセス関連では、九州大学システム情報科学研究院薮田研究室がプラスチックフィルム基板上のセラミックス膜を高機能化するメソッドとしてレーザー照射法を報告した。耐熱性の低いプラスチックフィルムに熱ダメージを与えずに上部の機能膜を高性能化する狙いで、膜への侵入長は波長が短いほど浅くなるため、波長248nmのKrFディープUVレーザーを使用。レーザー照射によって表層部のみを局所瞬間加熱するため、図3のようにサブストレートに対する熱ダメージをほぼレス化できる。


図3 プロセスとプロセス温度イメージ

 現時点でもっとも効果的と思えるのが、アモルファスITO透明導電膜の多結晶化。実験では、エネルギー密度100mJ/cm2で1〜3万ショットすると完全な多結晶膜が得られた。気になる処理時間も1000ショットでわずか0.5秒に過ぎない。

 研究室ではさらなる付加価値用途も報告。そのひとつがCu膜の導電性向上で、レーザー照射によりCuグレインが増大しCu膜の比抵抗が低下することを確認。さらに、複数のソリッド状金属を基板上に置いてレーザー照射することによって合金膜を成膜することも可能だという。ただ、その合金の種類やプロセス条件についてはカスタマーのノウハウなのか明らかにしなかった。

自己修復&ケミカルリサイクルが可能な夢のような光学樹脂が

 マテリアル関連では、九州工業大学の吉田嘉晃准教授(大学院工学研究院物質工学研究系)の研究グループが画期的なエコロジー光学樹脂をアピールした。その名は"自己修復とケミカルリサイクルが可能な光学樹脂"。つまり、傷ついても自己修復するだけでなく、壊れたり粉砕されても再生できるというスグレもの。


写真1 PDTUシート
 開発したのはポリジチオウレタン(PDTU)という光学樹脂で、図4のように室温では重付加が進行し、切断面を接触させれば自己修復して再接合する。接合後、1分以上放置すれば実用的な接合強度が得られ、PDTUシートの両端を手で引っ張っても切れたり、ちぎれたりすることはない。一方、マイクロ波などにより150℃程度で加熱すると解重合が起こり、再利用できる原材料として利用することができる。つまり、こすり傷のような軽度な損傷は自己修復、破砕のような激しい損傷はケミカルリサイクルできる。もちろん、これらの状態変化の際も溶剤や触媒などは不要である。

 その外観は写真1のようにやや黄色がかった透明ライクで、可視光透過率は75%以上。光学シート・フィルムや光学レンズなどにも応用可能なポテンシャルを秘めている。


図4 自己修復とケミカルリサイクルのメカニズム



REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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