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技研公開2024(2024年5月30日〜6月2日)


技研公開2024 液体金属配線を用いたMini-LED/Micro-LEDをフルカラー化
窓ガラスに有望な透明有機薄膜太陽電池も公開

5月30日〜6月3日、NHK放送技術研究所(東京都世田谷区)で開催された「技研公開2024」。ディスプレイ関連の目玉は昨年と同様、伸縮配線を用いたLEDディフォーマルディスプレイだったが、今年はモノカラーパネルからRGBフルカラーパネルにブラッシュアップ。凹型と凸型のドーム状ディスプレイも公開するなど、その形状自在性も高めた。


 昨年、初めて公開したLEDディフォーマブルディスプレイ。独自開発した伸縮配線によってフルフレキシブル化したLEDディスプレイで、今回はそのキーテクノロジーである伸縮配線の概要をある程度明らかにした。

 具体的には、伸ばしても追従して変形するよう、液体金属配線を用いたことを公表した。液体金属とはその名の通り、液体でありながら電極として機能する材料で、マル秘ドーパントをプラスしたGa系材料を使用。元来、Gaは融点が29.8℃と低いが、ドーパントを添加することによって融点を十数℃とさらに低下。この結果、室温で液体状態を維持できるようにした。このため、フィラーや溶剤フリーで、電極として接着した後も液体として動作する。この結果、デバイスを伸ばしたり丸めたりしても電極が破損しないのはもちろんのこと、比抵抗も変化しない。


写真3 ドーム状のフルカラーMini-LED

写真2 伸縮配線を用いたフルカラーMini-LEDの応用例

写真1 伸縮配線を用いたフルカラーMini-LED
 その配線形成法だが、サブストレートにメタルマスクを載せ、その開口部から液体金属を充填印刷するメタルマスクスルー印刷によって印刷。メタルマスクを外した後、保護膜としてシリコン樹脂を塗布・硬化させることで配線エリアを固定して封止する。印刷後、何らかの方法で熱処理するが、その方法や処理温度はノウハウのため明らかにせず。現時点での印刷解像度は線幅300μm、ピッチ2mmクラスとのこと。気になる比抵抗はAlやCuといった一般的な金属配線材料に比べ1〜2桁高い。

 LEDディスプレイのトータル作製フローは、まず元ガラス基板上に伸縮配線を印刷した後、その上部に市販のマイクロLEDチップをマウンターで実装。最後に、元基板をアクリル系ゴムシートに接着して転写した後、剥離する仕組み。最大の特徴である伸張率は昨年の40%から50%にアップした。

 今回公開したのはRGB-LEDチップをアレイ化したフルカラーMini-LEDとフルカラーMicro-LED。前者は100×100mmサイズで、2×3oのLEDチップを5mmピッチで20×20個アレイ化。写真2のように、そのディフォーマブル性が活かせるウェアラブル用途に有望だ。


写真5 ドーム状の緑色Micro-LED

写真4 伸縮配線を用いたフルカラーMicro-LED
 他方、後者は64×64mmサイズで、20×30μmサイズのLEDチップを2oピッチで32×32画素にアレイ化した。こちらはMini-LEDよりも解像度が高いため、モバイルアプリケーションや特殊形状ディスプレイに応用可能とみている。その具体例として示したのが半球状のドーム型ディスプレイで、写真3のように凸型形状のMini-LEDと、凹型形状のMicro-LEDを披露。前者はエアーを噴出、後者は吸引することによってドーム状にした。ちなみに、写真5の凹型ドーム状Micro-LED(96×96mm)は緑色単色ながらピッチ1.5mmと今回公開したなかでもっともハイレゾリューションなパネルとなっている。

 いずれにしても披露したパネルは市販のLEDチップを使っていることもあり、かなり高輝度で完成度も高かった。解像度はディスプレイ用途にはほど遠いが、近い将来、高精細化が進めば、有機ELディスプレイに競合する可能性も排除できないと感じた。気になる今後のロードマップは2025年にプロトタイプを試作し、2030年までの実用化を目指すとしている。

透明有機薄膜太陽電池のポテンシャルを誇示


写真7 透明有機薄膜太陽電池で駆動するメガネ型ラジオ

写真6 透明有機薄膜太陽電池
 一方、NHK技研としては異色といえる太陽電池では透明な有機薄膜太陽電池を披露した。有機EL向けに開発した有機材料を用いて独自開発したデバイスだが、その材料や効果は明言せず。デバイス構造はp型とn型の光吸収層をスタックしたp-n接合型低分子デバイスで、各レイヤーともコンベンショナルな抵抗加熱蒸着法で成膜した。つまり、クラシックといっていいほどの初期的デバイスで、光電変換効率も1%程度に過ぎない。

 このため、とても最先端とはいえなかったが、紫外光を効率的に吸収するため、可視光透過率は75%とかなり高い。実際、ブースでは写真6のように背面が透けてみえるデモを敢行していた。また、このデバイスで市販の電子ペーパーや、試作したメガネ型ラジオ(写真7)をドライブ。その透明性を生かして窓ガラスをはじめとするアプリケーションを開拓する姿勢を示した。

REMARK
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2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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