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SEMICON Japan 2023 (2023年12月13〜15日)


SEMICON Japan 2023 東洋紡・ゼノマックスの低熱膨張PIフィルムが効果的なデモを演出

12月13〜15日、東京ビッグサイトで開かれた「SEMICON Japan 2023」。独断と偏見でディスプレイ関連をはじめとするWhat's Newをピックアップする。


東洋紡・ゼノマックスの低熱膨張PIをフレキシブルディスプレイや高性能TFTの基板に

 まずインパクト感で際立っていたのが東洋紡とゼノマックス・ジャパン(東洋紡と長瀬産業の合弁会社)がアピールした低熱膨張ポリイミド(PI)フィルム「Xenomax」だった。最大の特徴は500℃クラスという耐熱性の高さで、線膨張係数も8ppm/℃とプラスチックフィルムとしては極めて低い。すなわち、シリコンウェハーやセラミックスに匹敵する頑丈さを誇る。さらに、表面平滑性もRa=0.5nmとガラス並みである。


写真1 円筒型MINI-LED

写真2 フレキシブルMINI-LED
 ただ、この製品は以前から展示会などで提案されており、これ自体がWhat's Newというわけではない。今回目立っていたのが効果的なアプリケーションの提案だった。まずは最大のターゲットといえるフレキシブルディスプレイで、写真1の円筒形55型MINI-LEDディスプレイと、写真2の9型クラスのフレキシブルMINI-LEDディスプレイを公開。どちらも台湾ディスプレイメーカーのInnoluxがXenomaxをサブストレートに用いて試作したもので、プラスチックフィルムならではというフレキシブル性を誇示した。

 ユーザーであるディスプレイメーカーはガラス基板にXenomaxを接着した後、従来のガラス製デバイス製造プロセスでディスプレイデバイスを作製。最後に、Xenomaxを元基板からリリースする仕組み。ガラスとXenomaxの接着強度は0.1〜0.2N/cmと比較的低いため、コンベンショナルなレーザー照射法はもちろんのこと、メカニカル法や薬液を用いたウェット法など各種セパレート法で容易にリリースすることができる。

 また、XenomaxはTFTに有効であることをアピール、東北学院大学が試作したフレキシブルダブルゲート構造poly-Ge-TFTを展示した。周知のように、Geは高温で結晶化しないとGe-TFTとして十分な特性が得られないが、Xenomaxを用いることにより385℃と比較的高温で結晶化。この結果、プラスチックフィルム製TFTとしては世界最高の700cm2/V・secというハイモビリティが得られた。

単層ながらガスバリア性と柔軟性を両立したガスバリア膜成膜法が

 一方、山形大学はフレキシブル有機ELデバイスをRoll to Rollで生産するプロジェクト「ロールtoロールによるバリアフィルムの製造およびバリア特性の評価」を紹介。What's Newはプラスチック基板向けの新たなガスバリア膜成膜法で、単層膜ながらガスバリア性と柔軟性(低応力)を両立するレイヤーが得られるのが特徴。


写真3 バリア膜の断面写真


図1 CVD成膜メカニズム

 具体的には、CVD成膜装置は図1のような構造となっており、4個のマグネットによって磁場が形成される。この際、場所による磁力の違いによって膜質が異なる。つまり、磁力の強さによってカーボンpoor層とカーボンrich層になる。用いるプリカーサ材料はHMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)で、CVD成膜によってSiO2になるが、前記のメカニズムからC-poorの層とC-richの層が交互に成膜される。写真3はその断面写真で、二つのレイヤーが交互にスタックされていることがわかる。いうまでもなく、C-rich部分は高いガスバリア性、C-poor部分は高い柔軟性が得られる。これは、Si系ガスガリア膜で問題となるクラックの発生が大幅に抑制できること、さらに厚膜化してもそうした問題が顕在化しないことを意味する。

 気になる水蒸気透過性も膜厚720nmで6.3×10-6g/m2/day(WVTR)と有機ELデバイスにも適用可能なスペックを確保。なお、プロジェクトには帝人、東ソー、セリア、神戸製鋼所、FEBACSが参加しており、神戸製鋼が独自のCVD装置を提供している。

配線付きガラスを極薄化してフレキシブル化


写真4 厚さ20μmの配線基板
 極薄&フレキシブルデバイス向けでは、ミクロ技術研究所がミニマム20μm厚の配線基板を披露した。市販の0.1〜0.2o厚ノンアルカリガラス基板上に配線パターンなどを通常のフォトリソグラフィで作製した後、薬液によってスリミング(ウェットエッチング)処理して極薄化したもので、写真のようにガラスなのに容易にフレキシブル化する。サンプルサイズはマックス150o角で、ミニマム5μmまでのファインパターン化が可能。ちなみに、スリミング処理時間はかなりかかるが、バッチ処理のため、1枚当たりのスループットはさほどかからないという。

非接触・空中ディスプレイをグローブボックスの操作などに

 ユニークな出展だったのが三井化学の非接触/空中ディスプレイ。市販のディスプレイを用いて結像システムを開発したもので、空中に浮かんだタッチパネルを非接触で操作することができる。


写真5 空中ディスプレイユニットを搭載したグローブボックス
 その有望な用途として提案したのがグローブボックスで、作業効率が低下するグローブをつけずに非接触でタッチ操作することができる。また、ウェットエッチング工程にも有効で、酸などの薬液によるタッチパネル機器の汚れや劣化をレス化することもできる。ブースでは、非接触/空中ディスプレイユニットをビルトインしたグローブボックス(ダルトン製)を設置。半導体をはじめとする電子デバイス製造工程に有用なことをアピールしていた。



REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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