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nano tech 2022/先進印刷技術展2022/新機能性材料展2022(2022年1月26〜28日)


nano tech 2022/先進印刷技術展2022/新機能性材料展2022
マテリアル関連でユニークなプロダクトが相次いで登場

2022年1月26〜28日、東京ビッグサイトで開かれた「nano tech 2022/先進印刷技術展2022/新機能性材料展2022」。新型コロナウイルスの感染拡大により急遽出展をとりやめる会社も複数みられるなど決して盛況とはいえなかったが、マテリアル関連ではWhat's Newと呼べるエキジビションが少なくなかった。独断と偏見でトピックスを列挙する。

東レがCNT-TFTをさらにブラッシュアップ

 まずデバイス関連では、今年も東レがカーボンナノチューブ(CNT)-TFTをデモ。その特性をさらにブラッシュアップし、実用レベルに達したことをアピールした。

 同社のCNT-TFTは、シングルウォールCNT(SWCNT)1本1本に独自の導電性補助ポリマーを絡ませて溶液状態での分散性を高めるとともに、膜化した際のユニフォミティを高めたのが特徴。CNT半導体層は東レエンジニアリングの開発したインクジェットプリンティング法によってチャネル長を10μmに微細化。最高プロセス温度は150℃とプラスチックフィルム基板にも対応可能なレベルに抑えた。


写真1 CNT-TFTで動作するRFID(右)とロール状CNT-TFT(左)
 そのキャリアモビリティは182cm2/Vsにまで向上。いうまでもなく、これは有機TFTやZnO系酸化物TFTをはるかに凌ぐ値で、ディスプレイデバイス用TFTでもっともモビリティが高い低温poly-Si TFTレベルといっていい。また、CNT-TFTの課題とされてきたON/OFF電流レシオも、バルクCNTからの分離抽出技術を施すことにより半導体性CNTの純度(比率)を93〜94%に高めた結果、104〜105に改善した。

 ブースでは、汎用のPENフィルムに作製したCNT-TFT、さらにほとんどの工程をRoll to Roll方式で作製したRollサンプルを披露。また、直前のプレス発表にもあったように、このCNT-TFTでUHF帯RFIDと無線通信機能付きセンサーを動作したことを発表。その実用化が目前に迫ってきたことを印象づけた。ちなみに、同社は当面試作デバイスを生産する方針で、ある程度のニーズが出てくれば生産委託や生産移管など他の企業とのタイアップを想定している。

径50〜100nmの銀微粒子を焼結助剤に用いてハイデンシティAg膜を

 マテリアル関連では、大阪ソーダが独自の銀微粒子を焼結助剤に用いることを提案した。ここでいう銀微粒子とは径50〜500nmで、いわゆるナノAgとコンベンショナルなμmサイズAgの中間に位置する。この焼結助剤をμmパウダーAgと混合してインク化しハイデンシティAg膜にするという提案だ。

μmサイズAg膜
銀微粒子膜
膜密度
77%
85%
比抵抗
4.3μ・cm
2.4μ・cm
 接合強度 39MPa  90MPa
熱伝導率  120W/mk 220W/mk 

表1 膜特性の比較

 例えばμmサイズAgとこの銀微粒子を1:1で混合すると、焼結後の膜特性は表1のように大幅に改善される。μm粒子膜の隙間を銀微粒子膜が埋めることによってボイドやクラックの発生が抑制され、接合強度などの信頼性が大幅に向上。さらに、銀微粒子が完全に溶融し、さらにμm粒子の一部溶融を促進するため、比抵抗などの電気特性もエンハンスされる。

 もちろん、焼成温度も従来の250℃×60minから200℃×60minに低温化できる。ただ、この50℃を大きいとみるかどうかは微妙な話で、ナノメタルインクを用いて焼成温度を低温化するプロセスと比較する話ではない。つまり、プラスチックサブストレートではなく、ガラス基板などのリジッド基板に信頼性の高い配線を設ける用途に適しているといえる。

粘土素材のガスバリア材料で簡易バリア


図1 水蒸気透過性

 一方、クニミネ工業は天然粘土をベースとしたガスバリア材料「クニピア-RCシリーズ」をアピールした。

 樹脂と混合し、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノールといった溶媒に溶解させることによってガスバリアペーストが簡単に作製できるもので、図1のように10〜60%添加すると水蒸気ガスバリア性が大幅にアップする。これは、平面300〜500nm×厚さ1nmサイズのモンモリロナイト粘土結晶が層状にスタックすることによってH2Oなどのガスの侵入経路を遮断するため。その焼結温度は100℃程度と低温でよく、プラスチックフィルムやペーパーといった低耐熱性基板にも対応できる。このため、電子基板、ペーパーベースデバイス、食品包装用途などに有効だ。なお、粘土ベースのため外観はベージュで、透明性とガスバリア性はトレードオフの関係になる。

三菱鉛筆が粒径均一性の高いナノ粒子をアピール


図2 整粒ナノ粒子の顕微鏡写真と粒度分布


図3 表面改質剤への応用例

 今回は異業種からのニュープロダクトの提案も目立った。その代表格が三菱鉛筆で、整粒ナノ粒子と名づけたアクリル乳化重合粒子を紹介した。ここでいう整粒とは粒径が整っているという意味で、図2のようにシャープな粒度分布を実現。その径も数十nmから1000nmまで幅広いレンジに対応できる。もちろん、耐熱性や耐溶剤性といった付加価値機能も付与できる。

 おもな用途として、@LCDのスペーサ(ランダム散布)、Aフィルム用添加剤、Bフィルムの多孔質化、C表面改質剤の4例を提案。なかでもユニークなのはCの表面改質で、図3のようにこの粒子をマスキングにしてウェットエッチングすることによって機材表面にアンカーを形成して粗化処理することができる。

オリジナル印刷法で数μmのファインラインを

 製造プロセス関連では、産業技術総合研究所(産総研)が印刷解像度数μmというファイン印刷技術をアピールした。

 付着力コントラスト印刷と名づけられたこの印刷法は、インクが付着する強さの違いを利用してファイン印刷する。具体的には、まず版胴に巻いた付着力コントラスト版にレーザーダイレクト露光法などによってレーザーパターンを照射する。この結果、レーザー照射された部分はインク付着力が向上する一方、未照射部は本来の低いインク付着力を保持する。一方、ワークにインクを転写するシリコンブランケット胴には通常プロセスによりスリットダイからインクを転写する。この後、付着力コントラスト版が巻かれた版胴とブランケット胴を接触させ、印刷に用いない余分なインクをブランケット胴から版胴へトランスファーする。そして、ブランケット胴からワークへパターン化されたインクを転写する仕組み。前記のように、インク付着力の強さはレーザー照射部>ブランケット>付着力コントラスト版となるのを利用してインクをパターン化する。そのタクトタイムは300×300oクラスで90秒と速い。また、アライメント精度も1%以下が得られる。


写真2 線幅2μmのAgラインとITOラインの印刷サンプル
 印刷解像度はチャンピオンデータで0.5μm。2〜5μmクラスなら安定的にユニフォームなラインが印刷できる。実際、写真2のように線幅2μmのナノAgラインやナノITOラインの印刷サンプルを展示。さらに、エッチングレジストインクのサンプルも公開するなど、単なるナノインクのプリンティングだけにとどまらない応用可能性を示した。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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