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CEATEC 2019 (10月15〜18日)


CEATEC 2019 京セラがマイクロLEDを初披露

10月15〜18日、幕張メッセで開かれた「CEATEC 2019」。ここでは、ディスプレイ関連のトピックスをピックアップする。

 ディスプレイモジュールではほとんどWhat's Newがないなか、話題をさらったのが京セラのマイクロLEDディスプレイ。内製の低温poly-Si TFT基板上に数十μm角サイズのRGB-LEDチップを実装しカバーガラスまたはカバーフィルムで上部を封止したシンプルデバイスで、既存のTFT-LCDや有機ELディスプレイに比べ輝度、コントラスト、寿命で優位性があることをアピールした。


写真1 1.8型マイクロLED(京セラ)
 今回披露したのは1.8型256×256ドットパネルで、解像度は200ppiと決してハイレゾリューションとはいえない。LEDチップサイズを考えると解像度はこのレベルが限界に近いとみられ、同社も「ターゲットはいわゆるモバイル機器ではなく、屋外デジタルサイネージや車載機器といった大型アプリケーション」と説明。スペックは輝度が3000cd/m2、コントラストが100万:1、視野角が上下左右178度と申し分ないが、見た目の印象は色純度が不十分なことも含めとてもメガコントラストにはみえなかった。

 いうまでもなく、既存のディスプレイと競合するには画素へのRGB-LEDチップの実装方法がポイントになるが、この点については「シークレット」とのこと。このため、現時点ではコスト競争力があるのかについては不透明といわざるを得ない。ちなみに、さらなるアドバンテージとしてタイリングディスプレイにする際につなぎ目が発生する原因であるシール層が不要なことをアピールしていたが、これも超大型アプリケーションで生まれるメリットに過ぎず、LEDチップを一括して選択的に実装するプロセスを開発できなければ大型アプリケーションに適用するのは現実的でないとみられる。

空中浮遊ディスプレイが神秘性で存在感


写真2 空中浮遊ディスプレイ(凸版印刷)
※この写真では背面システム上に画像が表示されているように見えるが、実際には空中面に像が浮いているように見える


図1 空中浮遊ディスプレイの表示原理(凸版印刷)

 ディスプレイ関連でユニークだったのが、凸版印刷が披露した空中浮遊ディスプレイ。その名の通り、何もない空間(空気中)に画像を浮かび上がらせて表示するシステムで、図1のように対角面に配置したTFT-LCDモジュールから出射された光をマイクロミラーアレイ(DCRA)を2回反射することにより、空間に空中映像を結像する仕組み。TFT-LCDとDCRAを組み合わせたこれまでのシステムでは空中映像が暗く、さらにゴースト像が発生するという問題があったが、今回のプロトタイプではこれらの問題をブレークスルー。展示した5型相当ディスプレイは輝度も2000cd/m2と高く、いわゆる文字やアイコン表示なら十分というクオリティを示した。

 気になるアプリケーションは写真2のようないわゆるトラフィック系に加え、医療用バーチャルモニターなどを想定。後者の場合、赤外線センターなどを用いれば空中浮遊ディスプレイをなぞるだけでいわゆるタッチ操作が可能になるため、衛生面でのメリットが付与できるという。

ローカルディミングBLは車載用TFT-LCDでも圧倒的に有利


写真3 ローカルディミングBLを用いたTFT-LCD(EVERLIGHT)
 ディスプレイコンポーネント関連では、LCDバックライト(BL)モジュールメーカーのEVERLIGHT(台湾)がローカルディミングBLをアピール。写真3のように、このBLを搭載した車載用12.8型TFT-LCDモジュールを展示した。20×16oの白色LEDを4.7oピッチで計192個配置したBLで、通常のBLと隣接配置したデモで圧倒的なコントラスト差を誇示した。ちなみに、輝度も1000cd/m2、色再現性もNTSC比100%と申し分ないスペックだった。

軟質フィルムで個体封止したフレキシブル有機ELも人気

 有機ELデバイス用インフラでは日本ゼオンがインパクトあるデモを敢行、山形大学と共同で試作したフルフレキシブル有機ELデバイスを披露した。ここではわざわざ“フル”と断ったのは、いわゆる曲げるだけでなく、捩るといった動作も可能なため。実際、展示した50×200oデバイスでは曲げや捩じりを繰り返するデモを敢行。それでも表示に何ら変化がみられなかった。


写真4 フルフレキシブル有機EL(日本ゼオン)
 気になるデバイス構成は同社のシクロオレフィンポリマー(COP)「ZEONEX」を両面サブストレートに使用するとともに、有機EL素子を軟質ゼオノアフィルムで全面封止した固体封止構造。軟質ゼオノアフィルムは5倍伸ばすことが可能など高いフレキシブル性を有しており、吸湿機能も兼ね備える。他方、両面サブストレートは一般的な耐久性・保護性を担う。デバイスの厚さはわずか0.25oで、曲率半径も20oと十分なフレキシブル性を確保。なお、水蒸気透過性は明確に測定していないが、本来COPは水蒸気を透過させない性質を保持しているのに加え、両面基板とも内側(有機EL素子側)にSi系ガスバリア膜を設ければ問題ないとみられる。



REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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