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Display Innovation 2014(10月29〜31日) |
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10月29〜31日、パシフィコ横浜で開かれた「Display Innovation 2014」。昨年までは“FPD International”と銘打っていたが、2012年から出展社が激減したせいか、今年から“Display Innovation”にリニューアル。FPDアプリケーションの特設コーナーを複数設けるなど、停滞ムードを解消しようという試みが目立ったものの、展示面積の激減にはショックを受けたのも事実。おもなトピックスをレポートする。 冒頭のようにリニューアルする形となった今回だが、出展社数・出展スペースはさらに激減。これに比例する形で来場者も激減したこともあり、総じて出展社のデモも低調に感じた。実際、FPDモジュールメーカーで出展したのはジャパンディスプレイ1社に過ぎず、昨年の2社からさらに後退する形となった。 LCDに匹敵する高精細有機ELDを そうしたなか、今年も主役はTFT&FPD技術ライセンス企業である半導体エネルギー研究所だった。昨年に続き、シャープと共同開発したCAAC-IGZO(C-Axis Aligned Crystal-In-Ga-Zn-O)-TFT、そして独自開発の有機ELディスプレイをアピール。そのオリジナル性とプロトタイプの出来は敬服に値するといっても過言ではなかった。ここでは有機ELDに絞り、世界初の8Kパネル、世界最高解像度の1058ppiパネル、折り曲げ自在なフォルダブルディスプレイ、タイリング式マルチディスプレイの四つを紹介する。
まず断っておくが、いずれの有機ELDとも構造は同じで、TFTは単結晶ライクなCAAC-IGZO-TFT、有機ELは白色EL+RGBWカラーフィルター方式を採用。前者は短チャネル化およびローコスト化に有利なバックチャネルエッチ構造を採用、コンベンショナルな酸化物TFTでは不可欠とされるエッチングストッパーをレス化した。さらに、ガラス基板上にスキャンドライバ回路をビルトインした。他方、後者に関しては青色蛍光発光層と緑色燐光発光層&赤色燐光発光層をバッファ層を介して積層したトップエミッション型タンデム構造(反射アノード/ホール注入層/ホール輸送層/青色発光層/バッファ層/緑色発光層/赤色発光層/電子輸送層/光透過性カソード)を採用。タンデム構造ながら3波長化し、さらに発光効率も蛍光、燐光とも理論限界に近いレベルにまで高めた。 前記四つのプロトタイプのうち、もっとも人気を集めたのが13.3型8K有機ELD「IP8K」。いうまでもなくNHKが提唱するスーパーハイビジョン規格(7680×4320画素)にフル対応したパネルで、昨年の4Kパネルからさらにブラッシュアップした格好。その解像度は実に664ppiで、もちろん顔を近づけても画素は認識できない。ただ、線欠陥が2本みられるなど完成度はさほど高くなかった。 一方、1058ppiパネルは2.78型で、画素サイズを24×24μmに微細化することにより世界最高解像度を実現した。ブースでは写真2のように顕微鏡越しに見る形でも展示。その解像性はこれまでのディスプレイ概念を覆すほどだった。
同社は昨年、ロール状に巻き取り可能なローラブル有機ELDを披露したが、今回は折り畳みできる5.9型(720×1280画素)、8.7型フルHD、9.2型フルHDフォルダブル有機ELDを展示。こちらはプラスチックフィルム基板を2枚用いてフレキシブル化したもので、二つ折りと三つ折りタイプを試作。曲率半径は4oで、写真3のように折り畳むデモを敢行した。とくにインパクト抜群だったのが繰り返し曲げ試験のデモで、曲率半径2oで折り曲げを速度2秒/回で10万回行っても、曲げ部に破断やクラックがみられないなど、10万回以上の曲げにも耐えうるタフディスプレイであることを実証した。なお、フレキシブルパネルで問題となる水蒸気透過性(WVTR)は無機ガスバリア膜でパッシベートすることにより7×10-6g/m2/day以下を確保した。 今回初公開したタイリング式マルチディスプレイは、13.5型のフレキシブルパネルをタイリングすることによって27型サイズに大型化したもの。そのスキームだが、左に配置したパネルの右端と末端の額縁部2oを透明にして、その下に右側と下側のパネルを配置することにより、つなぎ目を目立たなくした。といってもつなぎ目は明らかに認識される。このため、プロダクトというよりもテクノロジーをアピールしたデモといえ、こうしたタイリング方式ディスプレイが製品化されることはないだろう。 車載用TFT-LCDにもローカルディミングを採用し高級感を演出
前記のように、FPDモジュールメーカーで唯一出展したのがジャパンディスプレイ(JDI)。昨年と同様、もっとも目立ったのは低温poly-Si TFT-LCDによるハイレゾリューション性で、タブレット端末用として10.1型/12.1型4Kパネルを展示。前者は解像度438ppiと世界最高レベルで、その画質は圧巻の一言。コントラストもモバイル用パネルながら1100:1とハイスペックを確保した。 他方、車載用パネルでのWhat's NEWはローカルディミング技術を採用した10型低温poly-Si TFT-LCD(2880×1080画素)。モジュールの上下に白色LEDを配置したサイドライト型だが、駆動方法の工夫によってLEDバックライトの輝度をエリア毎にコントロールできるという。このため、コントラストが劇的にアップするほか、消費電力も平均50%程度削減できる。とくに強調していたのが“黒”の表現力で、エリアコントロールによってリアルブラックを実現。このため、自動車のインパネに高級感が生まれるという。実際、同社はこのパネルを2枚配置するとともに、フロントウィンドウに3.1型サイズのヘッドアップディスプレイ画像が浮かび上がる形で表示される次世代インパネシステムも公開。写真8のように10型パネルは局面状で配置することにより、インパネの形状にもマッチすることをアピールしていた。なお、パネルの曲率半径は500oで、モジュールも通常のガラス基板製パネルをセッティングする際に少し曲げただけとのこと。
TFT-LCD以外では、5.2型フルHD対応のフレキシブル有機ELDも披露。透明なポリイミドフィルムを両面基板に用いたパネルで、前面基板上にRGBWカラーフィルター、背面基板上に低温poly-Si TFTと白色有機ELを設け、最後に両面基板を貼り合わせた固体封止パネルで、モジュール厚は0.05o以下とペラペラだった。ただし、半導体エネルギー研究所のような“フルフレキシブルパネル”ではなく、曲がった台座にパネルをセットしたため、固定型フレキシブルパネルといえる。 メタル配線をIJ印刷した透明導電フィルムが登場 一方、FPD用インフラに関しては出展社が激減したこともあり、What's NEWと呼べるデモは皆無に近いレベルに。そうしたなか、コニカミノルタはPETフィルムにメタルメッシュ配線を施したメタルメッシュ透明導電フィルムを参考出展した。最大の特徴は市販のナノメタルインクをインクジェットプリンティング(IJ)法でダイレクト印刷したことで、ミニマム5μmまでのファインラインが形成可能。さらに、0.3〜5Ω/□という低抵抗化も実現した。ただ、市販のナノメタルインクを用いるだけに低抵抗化するには膜厚を厚くする必要があり、これにともない線幅も太くなるため、基本的にはファインライン化と低抵抗化はトレードオフの関係になる。ただ、PETフィルム以外の耐熱性プラスチックフィルムを用いる場合は印刷後の焼成温度を100℃以上に上げることができるため、低抵抗化には有利になる。
まずは190×300oのPETフィルム製メタルメッシュ透明導電フィルム(0.125o厚)をサンプル出荷。量産採用が決まった段階で1000o幅対応の量産システムを導入する予定。その場合、IJ印刷工程のスループットはA4サイズで現在の5分から1分に高速化できるとしている。 より平滑性を高めたフォトマスク用合成石英ガラスを業界標準に ニコンは露光装置に加え、FPD用インフラとしてフォトマスク用合成石英ガラス基板“スーパーフラットマスク”をピーアール。従来製品に比べ最大の特徴はフラットネス性を10〜20μmから5〜7μmに高めたことで、新規開発した外観検査装置を使用することによって1μm以上の欠陥がないことを保証。さらに、板厚公差を±0.1oで制御することにより露光時の基板自重によるたわみばらつき量を半分以下に抑制。このため、4Kや8Kといった次世代高精細パネルの露光に最適だという。なお復習になるが、フォトマスク用合成石英ガラス基板は同社からマスクブランクスメーカー→フォトマスクメーカー→FPDメーカーといった順で供給される。 |
REMARK 1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。 2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。 |