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第24回ファインテックジャパン/第5回高機能フィルム展/第3回高機能プラスチック展(4月16〜18日)


第24回ファインテックジャパン/第5回高機能フィルム展/第3回高機能プラスチック展
フレキシブルデバイスやプリンタブルデバイス向けでトピックスが相次ぐ

4月16〜18日、東京ビッグサイトで開かれた「第24回ファインテックジャパン/第5回高機能フィルム展/第3回高機能プラスチック展」。注目はやはりフレキシブルデバイスやプリンタブルデバイス向けインフラで、インクジェットプリンティング(IJ)法を含め印刷プロセスでWhat's NEWが相次いだ。おもなトピックスをレポートする。

ランダムナノ構造で有機ELの光取り出し効率を向上


図1 コルゲート光取り出し層を用いた素子構造


写真1 コルゲート構造の顕微鏡写真(JX日鉱日石エネルギー)

 まず有機ELデバイス関連では、JX日鉱日石エネルギーが照明デバイス向けとしてオリジナル光取り出し基板を紹介した。コルゲート構造と名づけた光取り出し構造は、写真1のように皺(コルゲート)形状のナノサイズランダムパターンを設ける。そのディメンジョンは幅、高さとも数十nmで、ピッチがランダムなのが特徴。つまり、一般的な周期構造ではなく、敢えてランダム性を取り入れた疑似周期構造である。これは、周期構造だと輝度の角度依存性が大きいのに対し、ランダム周期だと角度依存性が小さいため。

 有機ELデバイスに応用する際は、まずガラスやプラスチックフィルムといったサブストレート上にコルゲート構造をナノインプリント法によって形成する。この際、コルゲート構造はマスターモールド上に自己整合的に形成したテンプレートを利用して作製する。この後、アノード〜有機層〜カソードという順で積層する。この際、図1のようにコルゲート構造の湾曲に沿った形で各レイヤーがステップカバレッジよく成膜される。このため、全反射が抑制されて光取り出し効率がアップする仕組み。つまり、屈折率を制御するのではなく、構造によって光取り出し効率を改善する。驚異的なのはその効率向上効果で、レスデバイスに比べ光取り出し効率が最大で2倍になるという。同社はこのコルゲート構造付き基板を供給する考えで、ガラス基板はもちろんのこと、プラスチックフィルム基板も400o幅まで対応可能となっている。

新たな塗布型低分子有機半導体でシングルクリスタルを

写真2 新規塗布型有機半導体材料の分子構造(JNCコーポレーション)

 有機TFT向けでは、JNCコーポレーションが新たな塗布型低分子有機半導体をアピールした。東京大学・竹谷研究室と共同開発したのは写真2のDNBDTとDNT-Vで、どちらもキャリアモビリティがきわめて高く、Tgも200℃以上と高いのが特徴。とくに前者はエッジキャスト法で成膜すると、16cm2/V・sと驚異的なハイモビリティが得られる。一方、後者は屈曲性を向上することにより溶媒に対する溶解性を高めた有機半導体で、塗布液の濃度を5wt%程度にまで高くすることができる。また、キャリアモビリティもエッジキャスト成膜で8〜10cm2/V・sと高い特性を示す。もちろん、双方ともエッジキャスト成膜した膜は垂直方向に配向したシングルクリスタルで、そのグレインサイズも数百μmとTFTのチャネルをフルカバーするサイズだという。

高分子密着層でCuめっき配線の密着性を確保


写真4 AgナノインクとAgナノ配線+Cuめっき配線サンプル(DIC)

写真3 高分子密着層レスとありの密着性比較(DIC)

 ここにきてその名がオーソライズされてきた感のあるプリンタブルエレクトロニクス関連では、DICが新たな高導電性配線形成技術を紹介した。リコメンドしたのは高分子密着層/印刷ナノAg電極/Cuめっき電極という3レイヤー構成で、まず独自開発した高分子材料を膜厚50〜100nmでウェットコートする。この後、ナノAgインクまたはペーストをIJ法や各種印刷法で印刷し、最後に通常のCuめっき液を用いてCu膜を自己整合的にめっき成膜する。いうまでもなく、最大の特徴は高分子密着層による高い密着性にある。つまり、めっき成膜したCuはナノAg粒子間に埋め込まれる形で積層されるため、写真3のようにサブストレートに対し高い密着力が得られる。もちろん、ガラス、プラスチックフィルム、セラミックス、金属などサブストレートの種類には制約がない。メインアプリケーションはCOF(Chip on Film)をはじめとするFPCで、コンベンショナルな2層CCL(Copper Clad Laminate)よりも高い密着力を示す。


写真5 Agナノワイヤ電極で発光させたLED(星光PMC)

日本メーカーも独自のAgナノワイヤをリリース

 周知のように、ポストITOとの呼び声も高いAgナノワイヤーは米Cambrios Technologiesが有名だが、今回、日本メーカーの星光PMCがオリジナルのAgナノワイヤ水性分散液を披露した。Agナノワイヤは径45nm(±10nm)、長さ25μm(±10μm)で、濃度0.5wt%で水に独立分散させた。標準的な使用方法は各種ウェットコート法で基板上に塗布した後、酸系エッチャントでウェットエッチングする仕組みだが、各種印刷法向けとしてバインダなどを添加したインク・ペーストも供給可能。気になる比抵抗は可視光透過率80〜85%で10〜150Ω・cm。ブースでは、写真5のようにこのAgナノワイヤ電極上に青色LEDを実装したサンプルを披露。容易に透明電極が形成可能なことをアピールしていた。

オフセットスクリーン印刷でL&S=20μm/20μmのファインパターンが

 プリンタブルエレクトロニクス向けでは、スクリーン印刷機メーカーのミノグループもWhat's NEWを演出。産業技術総合研究所が開発したオフセットスクリーン印刷の印刷サンプルを披露した。


写真6 オフセットスクリーン印刷サンプル(ミノグループ)

 オフセットスクリーン印刷法はその名の通り、コンベンショナルなスクリーン印刷法を改良したメソッド。いうまでもなく、通常のスクリーン印刷は基板上に直接ペーストを印刷するのに対し、オフセットスクリーン印刷ではPDMS(ジメチルポリシロキサン)ブランケット上にペーストを印刷した後、このPDMSブランケットを基板に接触させて転写する。この際、PDMSブランケットがペーストに含まれる溶剤を吸収するため、基板への転写時にペーストのにじみが少なくなり、印刷解像度が向上する。さらに、PDMSブランケットの存在によって基板上にスクリーンマスクのメッシュ痕もほとんど残らない。もちろん、厚膜化が容易というスクリーン印刷の特徴は兼ね備える。

 ブースでは450×450oガラス基板上にAgペーストを印刷したサンプルを展示。そのディメンジョンはL&S=20μm/20μmで、オフセットスクリーン印刷の印刷解像度を改めて実証した格好だ。

R2R対応IJシステムが登場

 製造装置関連では、東レがフレキシブルサブストレート用IJシステムを紹介、ミニマムL&S=20μm/20μmというファインパターンがIJ印刷できることをピーアールした。近年、各種展示会でIJ装置自体のデモは珍しくなくなったが、ここで敢えて取り上げたのはRoll to Roll対応だったため。つまり、このシステムではフレキシブルフィルムをタクトタイム送りでRoll to Roll搬送する。その印刷位置精度は±5μmで、最大5ヘッドをパラレル処理することができる。


写真7 青色カラーレジストインクのIJ印刷サンプル(東レエンジニアリング)

 ブースでは、LCD用青色カラーレジストをIJ印刷したPENフィルムを展示。L&S=80μm/80μmから20μm/20μmまでファイン印刷できることを示した。ただし、この印刷サンプルは下地として旭硝子のフッ素系ポリマーを塗布・マスク露光して表面改質パターニングしたもので、いわゆるダイレクトIJ印刷ではなかった。ちなみに、同社は有機TFT向けとしてゲートとソース/ドレインをIJ印刷した疑似有機TFTも作製。有機TFTへの応用が可能なことも示した。

フレキシブルTFT用レーザー剥離装置も登場

レーザー
UV固体レーザー
エキシマレーザー
波長
355nm
308nm
出力
100W(10mJ×10kHz)
315W(1.05J×300Hz)
剥離エネルギー密度
180mJ/cm2
250mJ/cm2
ビームサイズ
200×0.2o、4×0.2o
730×0.38o
パルス幅
60nsec
29nsec
焦点深度
>±500μm
±150μm
ランニングコスト
1100万円/年
3900万円/年

表1 レーザー剥離装置用レーザーの標準仕様(日本製鋼所)

 一方、日本製鋼所も転写法で作製するフレキシブルTFT向けとして今回初めてレーザー剥離装置を紹介した。元基板であるガラス基板上にポリイミド(PI)フィルムを塗布した後、a-Si TFT、低温poly-Si TFT、酸化物TFTといったTFTを作製し、最後にガラス基板の裏側からレーザー照射することによってPIフィルム製TFTをリリースする転写プロセス向けで、基本的に剥離層レスでダイレクトリリースできるという。

 表1のように、レーザーは低温poly-Si TFTで用いられるエキシマレーザー(波長308nm)とUV固体レーザー(355nm)を用意。どちらもラインビームをスキャンすることによって元ガラス基板からTFT付きPIフィルムをリリースする。容易に想像できるように前者はガスレーザーのためランニングコストがかさむ反面、大出力のためハイスループットが高く、さらにPIフィルムにほぼ100%吸収されるため透明PIフィルムにも対応できるというメリットがある。これに対し、後者は固体レーザーのため扱いやすくランニングコストも安いのが特徴。その反面、レーザービームサイズの制約からモバイル用パネルに適用が限定される。どちらもリリースプロセス向けでは2ショット処理をリコメンドしており、ヘッドスキャン速度は100o/sec程度。すでにR&D用マシン1台を出荷した実績があり、今後、同社ではフレキシブルTFT向けとして需要が増加するとみている。

表示画像が切り替えられる電飾ディスプレイが

写真8 ステルスカラーによる画像変化(中沼アートスクリーン)

写真9 自動車の内装パネルへの応用例(中沼アートスクリーン)

 最後にエレクトロニクスデバイスとはいいにくいものの、ユニークな電飾ディスプレイを紹介したい。スクリーンマスク&フォトマスクメーカーの中沼アートスクリーンが展示した「ステルスカラー」で、その斬新性は存在感が際立っていた。

 ステルスカラーは、光源として透過光と反射光を切り替えることにより二つの画像を交互に映し出すシステム。つまり、ガラスやプラスチックフィルムといった基板上に透過光反応性ペーストによる画像と反射光反応性ペーストによる画像を重ね印刷する。いずれも市販の顔料ペーストを用いてスクリーン印刷によってカラー化した。この結果、照明を切り替えることにより交互にカラー画像を表示することができる。写真8は電飾ディスプレイへの使用イメージで、まったく異なる画像が表示できることがわかる。写真9は自動車のプラスチック製内装パネルへの使用イメージで、通常は木目調のインテリアパネルとして認識されるが、照明をONにすると固定ナビゲーション画像が表示される仕組み。用途開拓はこれからだが、基本的にはこの電飾ディスプレイ自体を製品化したいとしている。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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