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イノベーション・ジャパン2011-大学見本市(9月21〜22日)


イノベーション・ジャパン2011-大学見本市 ニードル式ディスペンサ装置をリペアやR&D用途に

 9月21〜22日、東京国際フォーラムで開かれた「イノベーション・ジャパン2011-大学見本市」。大学をはじめとする研究機関が技術シーズを披露する展示会で、プリンタブルエレクトロニクス関連でトピックスがいくつかみられた。ここでは、3件の展示内容をピックアップする。


図1 塗布原理


写真1 Agナノペーストの描画例

 What’s NEWではないが、ユニークなディスペンサ装置を紹介したのが電気通信大学発のベンチャー企業「アプライド・マイクロシステム」。何がユニークかというと、コンベンショナルな空圧式ではなく、ニードル式である点。

 図1のようにヘッド内に設けたタングステン製ニードルの先端に塗布液を付着させてワークに接触または非接触でディスペンス描画する仕組み。ニードル径を細くすれば5μmクラスというファインパターンが描画できるのが空圧式との大きな違い。もちろん、塗布液の対応粘度は1〜35万mPa・sと幅広く、フォトレジストから高粘度ペースト・インクまで塗布できる。つまり、塗布液の対応粘度範囲はインクジェットプリンティング(IJ)装置とは比較にならない。また、描画精度もCV値で2%以内と高い。なお、電極のようなライン状パターンはIJ装置と同様、ドットをつなぎ合わせる形で、いわゆるドローイングではない。

 ブースではAgナノペースト、Cuナノインク、導電性接着剤などをファインパターニングした写真を公開。とくにIJ装置では吐出できない高粘度ペースト・インクが描画できることを強調していた。容易に想像できるように最大の弱点は描画速度がマックス10滴/secと遅いことだが、すでにフォトマスクやLCDカラーフィルターのリペアに採用されており、さほどスループットが問われないリペア用途やR&D用途には最適だという。もちろん、スループットを高めるためマルチヘッド化することも可能だ。

低温焼結ナノAgを用いて有機TFTを作製

 マテリアル関連では、山形大学理学部の栗原正人氏の研究グループが独自の低温焼結ナノAg微粒子を紹介した。シュウ酸架橋銀アルキルアミン錯体を100℃で加熱するとシュウ酸イオンの熱分解によってAgイオンが還元され、配位していたオレイルアミンがAgの結晶成長をナノサイズに抑制するというメカニズムで、アミン保護層がついた平均粒径11nmのナノAgが得られる。これを有機溶剤に再分散させるとナノAgインクができる。気になる導電性は100℃焼成で4.8μΩ・cm、長時間ホールドすれば室温でも15μΩ・cmという低抵抗が得られる。

 上記は旧知の発表だが、今回はより実用化を図るため、同大学の有機エレクトロニクス研究センターが有機トランジスタを試作したことを紹介。Alゲート電極/ポリマーゲート絶縁膜/ナノAgソース・ドレイン/ペンタセン有機半導体層というボトムゲート・ボトムコンタクト型デバイスで、ナノAg電極のパターニングにはメタルマスクを用いた表面改質技術を適用した。具体的には、まずゲート絶縁膜として撥水性ポリマーをスピンコート。この結果、その表面は接触角110度という撥水面になる。この後、あらかじめ開口部を貫通パターニングしたメタルマスクを基板上にセットし、上部からプラズマを照射する。その結果、メタルマスク開口部の直下部分は親水性に変化する。その後、ナノAgインクをスピンコートすると親水部だけに付着する。最後に、100℃で焼成してナノAgソース/ドレイン電極にする仕組み。説明員は、「ナノAgは焼成温度が低いほど膜のクラックが少ない」と強調。気になるキャリアモビリティは0.2cm2/V・sだという。

固体グリーンレーザーでダブルゲート低温Poly-Si TFTを


図2 ダブルゲート低温Poly-Si TFTの構造

 TFT関連では、奈良先端科学技術大学院大学がディスプレイ用TFTとして低温Poly-Si TFTやZnO酸化物TFTなどを紹介。なかでも低温Poly-Si TFT向けではコンベンショナルなエキシマレーザーに代わってNd:YAG2倍波である固体グリーンレーザー(波長532nm)を用いてa-Siプリカーサ膜をPoly-Si化する技術をアピールした。エキシマレーザーに比べグレインサイズを大きくできることがメリットだが、その有効活用例として紹介したのがダブルゲートTFT。

 デバイス構造は図2の通りで、下層a-Si膜、SiO2ゲート絶縁膜、上層a-Si膜をプラズマCVD成膜した後、固体グリーンレーザーを照射することにより下層・上層a-Siを一括で結晶化する。下層a-Siの再結晶化(溶融)によって蓄熱効果が生じ、これが上層Poly-Si膜における温度勾配を緩和。冷却速度を遅らせることにより上層Poly-Si膜のグレインサイズが大きくなる仕組み。もちろん、SiO2膜にはレーザービームが吸収されないため、ゲート絶縁膜がダメージを受けることはない。この結果、上層はグレインサイズ数μmのPoly-Si、下層はサブミクロングレインのマイクロクリスタルSiができ、キャリアモビリティもシングルゲートTFTの2倍にアップするという。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。