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PV EXPO 2011(3月2日〜3月4日) |
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3月2〜4日、東京ビッグサイトで開かれた「第4回太陽電池展(PV EXPO 2011)」。有機系太陽電池では色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池が次々世代太陽電池デバイスとして存在感をアップ。一方、結晶シリコンに代わるローコストデバイスと期待されていたシリコン薄膜太陽電池は生産が停滞していることもあり、デバイス、インフラともほとんどデモがなかった。ここでは、有機系太陽電池に関するトピックスをレポートする。
まず色素増感太陽電池ではフジクラがWhat's NEWを提供した。有機系太陽電池の主戦場とみられる屋内向けとして低照度用デバイスを開発したもので、従来の屋外用デバイスと違い、1000〜2000lux照明下での光電変換効率を大幅に改善した。表1は200luxと1000lux環境での特性を示したもので、この照度レンジなら屋外用デバイスに比べ効率が2倍程度アップする。リビング、廊下、倉庫などインドア向けに最適で、ブースではバッテリーレス温度センサーノードを展示するなど新たなアプリケーションを開拓する姿勢を示した。気になる製品化については屋外用、屋内用とも2012年からサンプル出荷する予定だ。 新日鐵化学が独自のTCO-lessデバイスを披露
ここにきて有機系太陽電池、有機EL照明デバイスでケミカルメーカーがデバイスを製品化する動きが相次いでいるが、今回もそうした流れを受けて新日鐵化学が色素増感太陽電池を披露した。差別化ポイントは九州工業大学と共同開発したTCO-less構造にある。作用極基板上の透明電極をレス化したもので、これによりフルフレキシブル化が容易になる。具体的な構造は明らかにしていないが、メッシュ状またはストライプ状に加工したメタル浮遊電極にナノサイズTiO2と独自開発した有機色素を把持したとみられる。サブストレートにはPENフィルムを使用。有機色素以外は市販の材料を用いた。 写真2は100×100oデバイスで、複数の有機色素を塗り分けることによりフォトフレームのようにイメージングすることができる。もちろん、写真3のようにフレキシブル化も容易だ。ブースでは、日中に発電した電力を蓄電し夜間の有機EL照明に利用するという“未来の家”のイメージ模型も公開。近い将来、セルまでを製品化することを示唆した。なお、気になる変換効率はチャンピオンデータで10%前後だという。 両面受光型にして有機薄膜太陽電池の効率を改善
一方、有機薄膜太陽電池では現時点で世界唯一の量産メーカー、米Konarka Technologiesがインパクト抜群のデモを敢行した。What's NEWはSi太陽電池でもブームになっているシールスルー型デバイスで、ほぼ透明な両面受光型と半透明型を披露した。ポリマー有機半導体材料の種類と膜厚を変えることで透明性を制御する仕組みで、前者は光を両面から受光できるため、とくにインドア用途での効率がアップする。もちろん、デバイスはPETフィルムをサブストレートに用いたフレキシブルタイプで、レイヤー構成はメタル電極/バルクヘテロ接合高分子有機半導体層/透明電極というシンプル構成とみられる。ブースではポリカーボネートシートまたはガラスで両面を封止したモジュールを展示。新たに開発したシースルータイプは今月末から量産出荷する予定。 なお、有機系太陽電池の致命的な弱点と指摘される変換効率について説明員は「もちろん、バルクの効率は結晶系Siに遠く及ばないが、有機薄膜太陽電池は光量が低くてもさほど発電出力が低下しないため、1日当たりのトータル発電量はSi薄膜太陽電池やCIGS化合物太陽電池に匹敵する(図1)」と説明。インドア用途だけでなく、その軽さとフレキシブル性からビッグマーケットが控える建築物用途にも有望なことを強調していた。 三菱化学は世界最高効率の有機薄膜太陽電池を披露 独自のp型半導体材料であるベンゾポリフィリン(BP)を武器に有機薄膜太陽電池市場へ参入する三菱化学は、写真7のようにフレキシブルデバイスを展示した。デバイス構造はITOアノード/ホールバッファ層/p半導体層/i半導体層/n半導体層/電子バッファ層/Alカソードというp-i-n接合型とみられる。周知のように、BPは低分子材料だが各種溶媒に溶解するため、焼成後は各種溶媒に対して高い耐薬品性が得られる。このため、上層であるn型材料を塗布する際にも溶剤選択肢が広がる。実際、3層とも同一溶媒を使用。BPをp層とi層に、フラーレン誘導体をi層とn層に用いることができる。すでに変換効率は8.5%と世界最高をマーク。2012年からテスト販売し、2015年から本格量産する考えだ。 ゲッター機能があるガスバリアフィルムが
有機系太陽電池用インフラでは、KISCOが販売代理契約をしている英TBFのガスバリアフィルムを紹介した。PETやPENといったユーザー指定の汎用プラスチックフィルムにガスバリア膜を成膜するビジネスで、図2のように無機レイヤーと有機レイヤーをスタックしてマルチレイヤー化する。コンベンショナルなマルチレイヤー型バリア膜と異なるのは、有機層に独自の無機ナノ粒子を含有させている点。このナノ粒子が無機層のクラックを埋めるとともに、H2OやO2を吸着するゲッターとして機能する。このため、コンベンショナルなマルチレイヤーバリア膜に比べレイヤー数を少なくすることができる。その膜厚は1〜2μmで、この場合、水蒸気透過率を10-6g/m2/dayクラスに低減することができる。密着性も良好で、1万回屈曲させても劣化がみられないなどフレキシブル性も高い。もちろん、ナノ粒子が吸着したガスを再放出することもない。 高耐久性透明導電膜を色素増感太陽電池に 成膜専業メーカーのジオマテックは、色素増感太陽電池向けとして高耐久性透明導電膜をアピール。周知のように、コンベンショナルなグレッツェルセル型色素増感太陽電池は半導体層にポーラス化したナノサイズTiO2を用いて増感色素を吸着させるが、TiO2の焼成には400℃以上という高温プロセスが必要である。このため、通常のITO膜では焼成によって比抵抗が上昇してしまうことから、フッ素をドープしたFTOを用いるケースが多い。しかし、いうまでもなくFTOはITOに比べファンダメンタルズ特性で劣る。
そこで、同社は独自の耐久性透明導電膜を提案。最大の特徴は500℃で焼成しても比抵抗がほとんど上昇しないことで、酸やアルカリといった薬液に対する耐性も備える。組成とレイヤー構成は明言しなかったが、スパッタリング成膜したITOとSnO2のマルチレイヤーとみられる。容易に想像できるようにシート抵抗値と可視光透過率はトレードオフの関係にあり、透過率78.1%の高透過膜はシート抵抗値が15Ω/□、透過率74.9%の低透過性はシート抵抗値が5Ω/□となっている。ブースではこの高耐久性透明導電膜を用いた色素増感太陽電池(林原生物化学研究所が試作)を披露。最大730×920oマザーガラスに対応でき、近い将来の量産でも実用レベルにあることを示した。 導電性ポリマーを電解液に用いて固体型色素増感太陽電池を 綜研化学は色素増感太陽電池用マテリアルとして有機色素「MK-2」、導電性ポリマー「ベラゾール」、P3HT有機半導体粉末などを展示。ユニークだったのは新たに考案した完全固体型デバイスで、ベラゾールを電解液に用いることにより固体化。透明導電膜付き基板にナノTiO2インクを塗布・焼成した後、MK-2、ベラゾールを連続塗布し、Pt電極付き対向基板と貼り合わせるというシンプルプロセスを提案。写真9のようにフレキシブルデバイスを披露した。また、写真10のように色素増感太陽電池で駆動させたツイストボール型電子ペーパーを披露するなどアグレッシブなデモが目についた。 装置はRoll to Roll対応をPR
製造装置では、ニューロング精密工業がロータリースクリーン印刷機をピーアール。円筒形のロータリースクリーンを用いてRoll to Roll方式で連続印刷する装置で、昨年リリースした「LS-500NR(508o幅対応)」はマックス20m/minというハイスループットを誇る。メインターゲットはFPCのエッチングレジストインクだが、今回はプラスチックフィルムサブストレートの色素増感太陽電池のAg電極や絶縁層に使用することを提案。ブースでは導電性ペーストを印刷した後、位置合わせて絶縁性レジストを印刷したサンプルを展示していた。 一方、ヒラノテクシードはp-i-n接合の有機薄膜太陽電池向けシステムを提案した。n層、i層、p層、ホール輸送層を毛細管現象を利用したスリットコーター(商品名:キャップコーター)で塗布し、触媒ペーストとAgペーストをスクリーン印刷する一貫処理システムで、Ag補助電極付きITO透明電極/p層/i層/n層/ホール輸送層/メタル電極30×100oデバイスを作製。太陽電池として動作することを確認したという。 |
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