STELLA通信は潟Xテラ・コーポレーションが運営しています。 |
CEATEC JAPAN 2010(10月5日〜10月9日) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
10月5〜9日、幕張メッセで開かれた「CEATEC JAPAN 2010」。昨年に続き今年もメインテーマは3Dで、大手電機メーカーのブースは3Dディスプレイ一色となった。一方、部材インフラでも“for 3D TV”と名づけたプロダクトが相次いで紹介されるなど、3Dディスプレイは完全にオーソライズされた格好だ。独断と偏見でおもなトピックスをピックアップする。
まず苦言からだが、大手電機メーカーは各社とも3Dディスプレイを見るための特設ブースを設置。しかし、これが来場者にはなんともつらい。特設ブースにたどりつくまでには30分以上、場合によっては2時間以上待たされるからだ。このため、セットメーカー全社の特設ブースを回るだけでも2日はかかってしまう。しかも、それだけ並んで見れた3Dディスプレイも電器店でみる3Dテレビと同じといったケースも多かった。混んでいてもいいからエントランスフリーにしてほしいというのが個人的見解だ。 さて、その3Dテレビ。アクティブシャッター方式の専用メガネと時分割駆動方式で3D化するPDPでは、パナソニックがブースを挙げて大々的なデモを敢行。42型から152型までというフルラインアップを誇示し、3Dテレビ戦線で一歩リードしていることを印象づけた。3Dにとって最大の課題である二重像を低減するため、残光時間を従来の1/3に短縮した蛍光体を使用。さらに、予備放電をレス化することによりコントラストを最大500万:1とほぼ無限大に高めた。 4原色パネルはメインストリームになるか?
一方、液晶テレビ陣営ではシャープがRGBにYellowを加えたRGBYピクセルを用いた4原色3D対応パネルをアピール。従来のRGBピクセルパネルと並列展示し、とくに黄色、金色、シアンが鮮明に表示できることを示した。ただ、ビューワーが4原色による色再現性向上効果をどこまで認識できるかといわれると微妙なところで、製造コストも考慮すると4原色パネルがメインストリームになるとは思えなかった。 エリアコントロールで消費電力を低減 3Dパネルではないが、日立製作所は液晶テレビの要素技術としてスリムブロック型LEDバックライトをアピール。白色LEDユニットをパネルの背面に分割配置し、画面の明るさに合わせてそれぞれのユニットの発光輝度をエリアコントロールするもので、これ自体はとくに目新しいわけではない。ただ、効果的だったのがそのプレゼンテーション。写真3のように実際の液晶テレビとスリムブロック型LEDバックライトを展示し、スリムブロック型LEDの輝度が画像に応じて変化する様子を紹介。技術PRとしては非常にわかりやすいと思った。ちなみに、スリムブロック型LEDを用いると消費電力は約
30%低減するとともに、コントラストも大幅にアップする。 メガネレス3Dはいまだ完成途上 3Dディスプレイにとって理想とされるメガネレス方式では東芝が12型、20型、56型テレビを展示。しかし、CEATECでも過去最大級とされたあまりの長蛇の列に、筆者は視聴を断念せざるを得なかった。報道によると、今年末に12型と20型テレビを先行発売するという。 他方、シャープはモバイル機器向けにパララックスバリア方式のメガネレス3D TFT-LCDを披露。画素を左目用と右目用に2分割するとともに、パネルの前面に遮光膜を設けて3D化する仕組みで、3.8型パネルと10.6型パネルと展示した。ただ、その原理上、正面からでしか3D感覚が得られず、3D感もさほど高くないなど完成度はいまひとつに感じた。
レーザーテレビに優位性があるのか? 液晶テレビ、PDPテレビ以外では三菱電機が今年もレーザーテレビ「LASERVUE」を展示。これまでのCEATECでは特設ゾーンでの展示で1時間以上待たされることもあったが、今夏に北米と日本でリリースしたこともあってか、今回はさほど待たずに見れた。公開したのは3D対応の75型テレビで、アクティブシャッター型専用メガネ方式としては液晶テレビ並みの臨場感が出ていた。しかし、レーザーテレビと名づけていても、所詮はRGB光源にレーザー、表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)を用いたリアプロジェクションテレビ。奥行きは300mmもあるし、画質もとくに素晴らしいというわけでもなく、個人的には既存のFPDテレビに比べどこに優位性があるのか理解できなかった。 MEMSシャッター方式ディスプレイにはa-Si TFT-LCDを凌駕するポテンシャルが 今回、既存のFPDに代わるニューディスプレイとして圧倒的なプレゼンスをみせつけたのが日立ディスプレイズのMEMSシャッター方式ディスプレイ。図1のように、開口スリットを設けたMEMSシャッターを上下に移動させてバックライトからの光透過量をコントロールする仕組み。つまり、コンベンショナルなa-Si TFTの代わりにMEMSシャッターアレイをアクティブ素子に用いる。開口スリットサイズは幅160×高さ10〜20μmで、20μmストロークで上下に移動する。この移動速度を精密にコントロールすることにより光透過率を制御して多階調化する。光源にはRGBのLEDバックライトを使用し、時分割方式であるフィールドシーケンシャル(FS)駆動によってフルカラー化する。最大の特徴は光透過率が60%程度とシリコンTFTの7〜10倍と高いことで、この結果、消費電力もTFT-LCDの1/2以下に低減できる。また、液晶材料を用いないため応答速度も速く、−20℃の低温環境下でも表示特性が維持できるなど動作安定性にも優れる。もちろん、マイクロカラーフィルター、液晶材料、配向膜、偏光板は不要だ。
今回披露したのは2.5型QVGAパネルで、RGB-LEDバックライトの使用によりNTSC比120%という色再現性を実現。表示色も1670万色、コントラストも500:1以上とこのサイズとしてノープロブレムだ。実際に見た印象もコンベンショナルなa-Si TFT-LCDと同等。ただ、パネルの前に手をかざすと、FS駆動特有のカラーブレーク現象がみられた。 このMEMSシャッター方式ディスプレイにはさらなる特徴もある。それは、外光を利用する反射モードにすれば低消費電力の電子ペーパーにすることができること。つまり、バックライトを点灯せずに、入射した外光を反射板で反射させてモノクロ表示する仕組み。その原理からメモリー性はないものの、コントラストも5:1以上を実現。文字やアイコンを表示する場合は反射モードによるモノクロ表示、画像を表示する場合は透過モードによるカラー表示といった使い分けができる。
気になるのは製造コストだが、説明員は「MEMSスリットの材質など詳細は明らかにできないが、既存のTFT製造ラインで製造できる。実際、今回の試作パネルは既存の730×920o対応ラインで試作した」と説明。コンベンショナルなフォトリソ技術でMEMSシャッターアレイが作製できることを示唆した。このため、前記のようにカラーフィルターや偏光板などが不要なことも考えると、数さえ出ればa-Si TFT-LCDよりもローコストポテンシャルが高いように感じた。 ちなみに、MEMSシャッター方式ディスプレイの基本技術は米Pixtronixが開発。同社が日立ディスプレイズに基本技術・特許を供与し、日立ディスプレイズが量産する仕組み。日立ディスプレイズではスマートフォン、タブレット型携帯端末、デジタルスチルカメラ向けとして早期の量産を目指している。 有機ELDではTDKがシースルーパネルとフレキシブルパネルで存在感を
有機ELディスプレイでは、パッシブマトリクスパネルメーカーのTDKがトピックスを連発した。まずは背面が透けて見えるシースルーディスプレイで、カソードを半透過性にするなどにより可視光透過率50%程度を確保した。展示したのは2型QVGAパネルで、パッシブ駆動ながら220ppiに高精細化。表示色も1万6000色を確保し、モバイル機器、アミューズメント機器、産業機器に搭載できるようにした。説明員によると、オーダーさえあればすぐにでも量産可能だという。 同社はフレキシブルパネルも披露。プラスチックフィルム基板上に有機EL素子を設けた後、ガスバリア膜を真空成膜し、最後に保護プラスチックフィルムで固体封止したもので、展示した3.5型パネルは0.3o以下に薄型化するとともに、重さも0.05g/cm2に軽量化した。曲率半径は25oで、ブースでは写真2のようにリストバンドに搭載したデモを敢行し、そのフレキシブル性をアピールしていた。ただ、色純度が低いなど表示品位はいまひとつだった。気になる製品化は来秋を想定している。 有機ELDで車載ディスプレイの潜在ニーズを開拓
一方、双葉電子工業は今回初めて車載用有機ELDを披露。車載ディスプレイとして有機ELDを採用する方針を打ち出した。展示したのは2型オレンジモノカラーパネル(128×64ドット)、0.9型モノクロパネル(128×36ドット)、1.2型モノクロパネル(198×96ドット)、3.5型モノクロパネル(256×64ドット)とモノカラー・モノクロだけに、見た目は一昔前のパネルといった印象。階調も最大で16に過ぎない。特徴は常温環境で1万時間というロングライフを確保したことで、高温高湿環境下である車載用途でも要求スペックをクリアしたという。 周知のように同社はVFDを中心とする車載用ディスプレイメーカーで、有機ELDをラインアップに加えた点について説明員は「曲面状に搭載できれば、今後、車載用ディスプレイは大幅に搭載枚数が増えることになる。薄型化が容易でフレキシブル化も可能な有機ELDはそうした次世代車載用ディスプレイに最適」と説明。1〜2年後に実用化したい考えを示した。なお、パネルは関連会社のTDKマイクロディバイスから調達。同じくTDKマイクロディバイスからパネルを調達しているTDKは車載機器以外の民生機器をメインターゲットにしているため、直接バッティングすることはないとしている。 表示色が可変できる有機EL照明デバイスが登場
ここにきて認知されつつある照明用有機ELデバイスでは、パイオニアがWhat's NEWを提供した。三菱化学と子会社の東北パイオニアが共同開発したフルカラー有機ELデバイスで、パッシブマトリクスディスプレイと同様、アノード、カソード、RGB発光層をパターニングしてフルカラー化する。ここでいうフルカラー化とは、駆動制御によってデバイス面全体が任意の色に変化することを指す。つまり、白色からオレンジ、ピンクなど表示したい色を任意に変化させることができる。日本ではあまりこうしたニーズはないが、海外のインテリア用途ではニーズが高いという。 展示したのは140×140o(発光領域130×130o)のシングル発光ユニットデバイスで、ホール注入層は三菱化学オリジナルの塗布型材料をウェットコート。その他の有機層はコンベンショな真空蒸着法で成膜した。ドットピッチは1o以下で、レゾリューション的には低精細のパッシブパネルといったところ。発光効率は数lm/W、輝度半減寿命は輝度1000cd/m2で8000時間とのこと。 三菱化学が2011年中にリリースする計画で、コンベンショナルな表示色固定デバイスと差別化する方針。なお、電極、発光層ともパターニングが必要なため製造コストが気になるが、この点については説明員から明確なコメントが聞けなかった。
有機ELはフラッシュライトにも有効 これに対し、ロームは通常のガラス基板製有機EL面光源、フレキシブル有機EL面光源、フラッシュライト用有機ELランプを展示した。What's NEWはフラッシュライト用デバイスで、マックス10万cd/m2と超高輝度が出せるのが特徴。気になるライフタイムも輝度1万cd/m2で4000時間を確保。フラッシュライトに用いれば従来のキセノンランプで不可欠な高圧回路(400V程度)が不要になるほか、機器が小型化できるメリットをアピール。ブースでは、写真13のように15×30oサイズの蛍光デバイスをインストールした携帯電話(模倣品)を展示。実際に発光させて携帯電話やデジタルカメラのフラッシュライトとして有効なことを示した。 電子ペーパーはエレクトロクロミックディスプレイが存在感をUP 電子ペーパーは先行する電気泳動タイプやコレステリック液晶タイプの出展がなく、これらに次ぐニューデバイスとしてエレクトロクロミック(EC)電子ペーパーのデモが目立った。周知のように、ECは材料の電気化学的な酸化還元反応によって膜の色が可逆的に変わる現象のことで、EC層に電圧を加えると電極上で酸化還元反応が起こり、透明からシアンやマゼンダといった固有の色に発色する。視野角特性がなく、メモリー性が高いのが特徴だ。 今回、パネルを出展したのがアルプス電気。産業技術総合研究と共同開発した無機系EC材料を用いたもので、写真
14のようにわずか1Vの電圧印加によってブルーに発色する。パネルはITO電極/電荷輸送層/EC層/ITO電極といったシンプル構成で、表示書き換え速度も1秒程度と比較的速い。メモリー性は半日程度に過ぎないが、100万回以上書き換えても表示特性が劣化しない。ブースではガラスサブストレート製デバイスに加え、プラスチックフィルム製デバイスも展示、フレキシブル化の可能性も示した。同社では各種情報表示用として1年後の実用化を目指している。
一方、日産化学工業は独自のビオロゲン系青色EC材料「HYPERTECH EC」を紹介。電子ペーパーメーカーへ供給したい考えを示した。図2のようにHYPERTECH ECは高密度でクロモファーを固定した高分岐ポリマーで、コントラストと応答性に優れるのが特徴。もちろん、有機ポリマーであるためパネルのフレキシブル化も容易だ。同社はITO電極/電荷輸送層/EC層/ITO電極といった構成のパッシブパネル(8×8ドット、16×16ドット)も作製、印加電圧−2.5Vで発光する様子をビデオで紹介していた。書き換え時間は1ライン当たり1秒で、消去は2〜3秒/ラインで完了する。もちろん視野角フリーで、数万回という動作信頼性も確認済み。さらに、写真15のようにプラスチックフィルム基板を用いたフレキシブルパネルも試作済みで、曲げても表示特性が変化することはないという。 3D対応TFT-LCDはガラス基板の薄型化が必須?
冒頭のように、FPD用インフラでも3D用プロダクトの展示が目についた。まずは日本電気硝子で、3D液晶テレビ用として第8世代ノンアルカリガラス基板(2200×2500o)を展示した。最大の特徴は0.3oという薄さで、写真16のように布のような形で展示。フレキシブル化も可能なことを示した。液晶テレビ向けでなぜこれだけ薄くするのかと質問したところ、説明員は「3Dテレビ用ガラス基板は表示品位の関係からより薄い方が望ましいため」とコメント。3D液晶テレビ向けでもガラス基板の薄型化が進むことを予感させた。 グラビアオフセット印刷で3Dマスクを PDPをはじめエレクトロニクスデバイスにグラビア印刷を浸透させてきた立役者であるシンク・ラボラトリーもメガネレス3D用インフラを紹介。デジタルアミューズと共同開発したパララックスバリア方式TFT-LCD向け3Dガラスマスクで、ガラス基板に黒色インクをグラビアオフセット印刷法でダイレクト印刷した。従来は遮光パターンを設けた銀塩フィルムをガラス基板に貼りつけていたが、ダイレクト印刷によってパネル内のピクセルとの位置合わせ精度が大幅に向上。輝度や色再現性もアップするという。ブースではこの3Dマスクを用いた3D対応42型TFT-LCDも展示。パララックスバリア方式のため、さすがに3D特有の二重像が観察されたが、3Dマスクにもグラビア印刷が有効なことを証明した。 |
REMARK 1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。 2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。 |