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JPCA Show 2010(6月2〜4日)


JPCA Show 2010 PCBでは白色化、黒色化など意匠性を打ち出すデモが相次ぐ
プリンティングテクノロジーでは焼成不要なナノAgが圧倒的な存在感を

 6月2〜4日、東京でビッグサイトで「JPCA Show 2010」が開かれた。例年に比べ展示面積、来場者数とも減少し、展示デモも総じて低調にみえた。そんななか、FPCをはじめとするPCB関連では白色化、黒色化、透明化を図るなど意匠性を打ち出したデモが続出。デバイスでも見た目が重視されるというトレンドが垣間見られた。おもなトピックスをレポートする。


写真1 IJ印刷デモの様子(三菱製紙)

 独断と偏見ながら、マテリアル関連で今回もっともインパクトが強かったのが三菱製紙の常温硬化型ナノAg。09年2月の「nano tech 2009」での最初のデモでは焼成レスで常温硬化するメカニズムを明らかにしなかったが、今回はそのメカニズムを公表した。

 同社が供給するのは平均粒径20nmのナノAgパウダーを均一分散した独立分散溶液と、インク受容密着層と化学焼成層を塗布した基材。いうまでもなく、基材はプラスチックフィルム、紙など制約はない。そのメカニズムだが、ディップ法など各種コーティング法で分散液を塗布すると、基材表面に存在する化学焼成剤(導電性発現剤)の働きによってナノAgパウダーが融着して基材に密着する仕組みだ。つまり、化学焼成剤が通常の焼成工程機能を担う。塗布後のホールド時間も数分と短時間で、擦っても剥離することはないという。気になる比抵抗は10μΩ・cm以下とバルクの5倍程度に過ぎず、配線パターンとして使用可能なレベル。

 ブースでは、市販のインクジェットプリンターを用いてPETフィルムにAg配線をダイレクト印刷するなど効果的なデモを演出していた。なお、ニーズによっては独自の化学焼成剤を供給し、ユーザー自らが基材に化学焼成剤を塗布するケースも想定している。

レジストインクをIJ印刷してウェットエッチでパターニング


写真2 低抵抗透明電極付きフィルム(セーレン)

 プリンティングテクノロジー関連では、日本マクダーミッドがIJ法でFPCを作製することを提案。UV硬化型レジストインク「Circuit Jet NP」とレジストインク剥離液「Circuit Jet Stripper」を紹介した。ブースではIJ法でレジストパターンを作製しウェットエッチング法でパターニングしたFPC(L&S=75μm/75μm)を展示。関連インフラとしてマイクロクラフトとNew SystemsのIJプリンターも紹介していた。

ベタ透明電極とCu配線を組み合わせて透明性と導電性を両立

 透明導電性フィルムでは、セーレンがWhat's NEWを演出。ITOなどのベタ透明電極とCuパターン電極を組み合わせた低抵抗透明電極付きフィルムを展示した。市販の透明導電膜付きプラスチックフィルムにPd系触媒インクをインクジェットプリンティング(IJ)法やグラビア印刷法で印刷した後、Cuメッキ液に浸漬してCu膜を触媒上に選択的にメッキ成膜する仕組みで、80%以上の可視光透過率と0.5Ω/□以下のシート抵抗を両立した。用途は有機EL面光源、電子ペーパー、タッチパネル、有機系太陽電池などを想定しており、1500o幅までの大型ワークも出荷できる。

フィルム向けとして反射率の高い白色塗料が


図1 白色塗料の反射特性(日本ペイント)

写真3 白色塗料の塗布サンプル(日本ペイント)

 ここにきてLEDのPCB用として白色ソルダーレジストの存在感が高まるなか、日本ペイントは対抗する形で白色塗料を参考出展。LCDバックライトの反射フィルム、太陽電池バックシート、遮熱フィルムといったニューマーケットに挑戦する姿勢を鮮明にした。

 新開発したフィルム用高白色コーティング材料は、図1のように従来塗料に比べ長波長領域における反射率が高く、可視波長域(380〜780nm)で90%、赤外波長域(800〜2500nm)で84%というハイスペックを示す。また、塗料なので屋外用途で問われる耐候性も高い。さらに、この塗料をコーティングしたフィルムや紙を曲げたり折っても剥離したり、クラックが発生することもないなどフレキシブル性も良好だ。なお、使用条件はロールコート法などの各種コーティング法で塗布した後、120〜150℃で30〜60秒乾燥させるだけと低温&高速プロセスが実現する。

黒色ソルダーレジストが量産採用


写真4 黒色FPCと黒色ベタ膜付きPIフィルム(東レ・デュポン)

 冒頭のように、PCB向けマテリアルで目立ったのが白色タイプや黒色タイプといった意匠性を意識した動き。周知のように、すでに白色のソルダーレジストはLEDのPCBなどに実用化されているが、今回はタムラ製作所が屈曲性に優れた黒色ソルダーレジスト「APBシリーズ」をリリース。APBを塗布したプラスチックフィルムで鶴を折ることも可能なほどのフレキシブル性がある。気になる用途だが、大型LED光源システムと通常FPCに採用されているという。前者は多数のLEDチップを実装する基盤上にAPBを塗布して黒色化し、LED光をより引き立たせるため。他方、後者はPCBの配線パターンをわからなくするため。つまり、このPCBが搭載されている最終製品を分解しても配線パターンが黒色ソルダーレジストによって隠されているため、PCBメーカーにとってはコンペチターなどに技術情報が漏れにくいというメリットがあるようだ。

 他方、東レ・デュポンはポリイミドフィルム「カプトン」の用途を広げるため、ウノン技研の黒色顔料をコーティングしたサンプルを展示。黒色顔料を6μm厚でコーティングしたもので、260℃で加熱しても変色しない。意匠性を高めるために浮上してきた新用途で、ブースでは実際に作製したFPCとベタコーティングポリイミドフィルムを展示。今後、FPCでも意匠性が問われることを感じさせた。

解像性が高いバイオレットレーザープロッター用ガラス乾板が登場

 フォトマスク関連で目ぼしいものはほとんどなかったなか、富士フイルムがWhat's NEWを演出。バイオレットレーザープロッター用ハイレゾガラス乾板「VM-GPC」をピーアールした。


写真5 露光解像性の比較(富士フイルム) 上がUM-GPC、下がVM-GPC

写真6 エマルジョンガラスマスク(富士フイルム)

 レーザー描画装置メーカー各社から製品化されているバイオレットレーザー(波長405〜442nm)プロッター向けのガラス乾板で、従来製品「UM-GPC」に比べ銀塩フィルムの解像力を大幅に向上。写真5のようにL&S=10μm/10μmというファインパターンでもシャープなエッジが得られる。また、イエロー光環境でも露光可能など作業性も改善できる。さらに、保護層を改良することにより、とくに低湿下におけるパーティクルの付着を低減。このため、ユーザーであるフォトマスクメーカーは露光工程における白欠陥の発生を抑制することができる。ブースでは写真6のように東京プロセスサービスがパターニングした510×610oエマルジョンガラスマスクを展示。すでにフォトマスクメーカーで採用されていることを示唆した。


写真7 透明FPC(シライ電子工業)

透明FPCで新たな用途を

 FPCデバイスでユニークに映ったのがシライ電子工業の透明FPC「SPET」。PETフィルム/接着材/Cu配線/UV硬化型透明フォトレジスト保護膜という構成で、Cu配線とレジスト膜はコンベンショナルなフォトリソ法で形成。L&S=100μm/100μmクラスまでのパターニングが可能だ。用途開拓はこれからだが、LED、ICカード、ICタグ、携帯電話など幅広い潜在需要を見込んでいる。

下部電極FPCを用いた電子ペーパーが

 一方、宇部興産は独自の超耐熱性ポリイミドフィルム「ユーピレックス-S」を用いた付加価値型FPCの代表例としてマイクロカプセル型電気泳動ディスプレイを展示した。ユーピレックスに9μm厚の銅箔を接着し、フォトリソ法でCu配線をパターニングしたCOF(Chip on Film)を下部電極FPCとして使用したもので、セグメント駆動のフレキシブルモノクロパネルを公開。米E Inkの電子ペーパーに採用されていることを誇示していた。

デジタルサイネージなら裸眼3Dでもノープロブレム


写真9 3D TFT-LCDモニター(大日本印刷)

写真8 セグメント駆動のフレキシブル電子ペーパー(宇部興産)

 最後にデバイス関連以外のトピックスを。大日本印刷が展示したデジタルサイネージ用裸眼3D TFT-LCDモニターで、仏ALIOSCOPYと業務提携し、セットトップボックスやモニターなどをシステム化して提供する。3D化方式は、画素を左目用と右目用に2分割化し上部にレンチキュラーレンズを設ける3Dレンチキュラー方式を採用。メガネレスのため近くでみると3D画像特有の違和感が感じられるが、3m以上離れると違和感はほとんど感じず臨場感の高い3D画像が認識できた。もちろん、デジタルサイネージなので視聴時間は短時間で目の疲労感は少ない。そのアイキャッチ効果は抜群で、展示会、イベント、ショールームなどに最適と感じた。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。