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SEMICON Japan 2009(12月2〜4日)


SEMICON Japan 2009 今年も東北デバイスが有機EL面光源で存在感を誇示
フレキシブルデバイス向けのマテリアルのデモが活発に

12月2〜4日、幕張メッセで開かれた「SEMICON Japan 2009」。半導体不況を反映し出展社数、出展スペースとも激減するなど、盛り上がりに欠けた印象は否めなかった。FPD関連の話題をクローズアップする。


写真1 2.8型白色有機EL

写真2 2.8型赤色、緑色、青色、橙色有機EL

写真3 白色有機ELを用いたデザイン照明

 次世代照明デバイスとして認知されつつある有機EL面光源では、今年も東北デバイスが圧倒的な存在感を示した。周知のように同社は現時点では唯一の有機EL面光源メーカーで、今年4月から特定ユーザー以外への全方位供給をスタート。これから参入するメーカーに対し大差をつけているといっていい。

 今回展示したのは量産中の2.8型デバイス。写真1の橙色発光層と青色発光層を積層した白色デバイスがメインモデルだが、写真2のように赤色、緑色、青色、橙色デバイスも公開。いずれも標準スペックは輝度が2000cd/m2、演色性がRa=70、輝度均一性が90%以上。気になる輝度半減寿命も1万時間以上とプロダクトとしてまったく問題ないレベルだ。もちろん、RGB発光層を積層した3波長タイプや大型デバイス(最大400×500o)も受注可能だという。

 最大の特徴は、CVD法によってSi系ガスバリア膜とポリマーライクSi系膜を交互に成膜したハイブリッドレイヤーで薄膜封止し、最後に物理的耐久性を高めるためPETフィルムを貼り付けた封止方法で、従来のガラスキャップ封止に比べ圧倒的なローコスト化&薄型化を実現。厚さは0.5oに過ぎない。

 世界唯一の有機EL面光源メーカーということで気になる歩留まりも数字こそ明言しなかったが、「非常に高く、歩留まりが問題になることはなく、計画通りの数量を出荷できる(説明員)」とのこと。また、従来は製造ラインの対応サイズの半分サイズのマザーガラス基板を用いていたが、最近では400×500oのフルマザーガラスを使用。生産効率も飛躍的にアップしているようだ。

量子ドットで無機ELDやLEDバックライトを

 次世代発光材料として重金属フリーの量子ドットを紹介したのがKISCO。2001年に設立された英国のベンチャー企業「Nanoco Technologies」が開発したナノサイズ化合物半導体で、表1のように7種類の色をラインアップしている。つまり、CdSe/ZnOの粒径を2〜10nmで制御することによって発光波長や電気特性をコントロールすることができる。


写真4 化合物半導体による量子ドット
型番
ピーク波長
半値幅
量子効率
CdSe/ZnS 480
Blue
480nm
<40nm
30〜50%
CdSe/ZnS 510
Pale Green
510nm
<40nm
30〜50%
CdSe/ZnS 530
Green
530nm
<40nm
30〜50%
CdSe/ZnS 560
Yellow
560nm
<40nm
30〜50%
CdSe/ZnS 590
Orange
590nm
<40nm
30〜50%
CdSe/ZnS 610
Red
610nm
<40nm
30〜50%
CdSe/ZnS 640
Deep Red
640nm
<60nm
30〜50%

表1 量子ドットの標準仕様

 用途は無機ELディスプレイから照明デバイスまで幅広いが、もっとも実用化に近いアプリケーションとしてLCDのバックライト光源を想定。周知のようにLCDバックライト用LEDは青色LEDチップと黄色蛍光体を組み合わせた2波長型が主流だが、青色LEDチップに緑色量子ドットと赤色量子ドットを組み合わせれば容易に3波長化でき、色再現性の高いLCDが実現するという。なお、無機ELDに適用する場合、インクジェットプリンティング法や各種印刷法でダイレクトパターニングすることもできる。

導電性ポリマーを印刷して電子ペーパーを作製


写真6 導電性ポリマーを下部電極に用いたツイストボール型モノカラー電子ペーパー

写真5 導電性ポリマーを下部電極に用いたツイストボール型モノクロ電子ペーパー

 ここにきてニーズが高まっている導電性ポリマーでは、綜研化学がインパクト抜群のデモを敢行した。チオフェン系、ピロール系、アニリン系という代表的なポリマー骨格をラインアップした導電性ポリマー「ベラゾール」をアピール。先行するPEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)に比べ有機溶剤に可溶で扱いやすいのがアドバンテージで、スピンコート法からIJ法、スクリーン印刷法までさまざまなコーティング法に対応した分散液、インク、ペーストをラインアップしている。

 ブースではスピンコート法やスクリーン印刷法でガラス基板などに塗布・印刷したサンプルを展示。なかでもインパクトがあったのが、独自開発しているツイストボール型電子ペーパーへの応用だった。写真5は一方の半球面を白、もう一方の半球面を黒にしたツイストボールを用いたサンプルで、下部電極はコンベンショナルなITOの代わりにベラゾールをスクリーン印刷。次にツイストボールを充填した後、市販のITO膜付きフィルムを貼り付けた。他方、写真6は一方の半球面を黒の代わりにR、G、Bにカラー化したモノカラー電子ペーパーで、こちらも下部電極にベラゾールを用いた。

 いうまでもなく電子ペーパーはローコストが絶対条件で、かつ簡単に製造できることが望ましい。こうした点でtoyにも容易に応用できる可能性を示した今回のデモは高く評価できそうだ。

大気焼成できるCuペーストも登場


写真7 Cu系フィラーペーストの顕微鏡写真

 低温プロセスが求められるフレキシブルデバイス向けマテリアルでは、旭硝子(AGC)が独自のCu系フィラーペーストを紹介した。液相法で製造したナノサイズCu(粒径10nm程度)に樹脂などを添加したスクリーン印刷用ペーストで、焼成後も樹脂がバインダとして残るポリマー型に分類される。一般的なCu系ペーストは還元雰囲気によって焼成する必要があるが、今回の開発品は大気中で焼成できるのが特徴。処理プロファイルも150℃×15分と低温・高速で、導電性も30μΩ・cmとポリマー型ペーストとして使用できるレベルにある。今回紹介したのはスクリーン印刷用ペーストだが、IJ用インクも開発中だという。

超音波を印加してナノインプリント

 製造装置関連でユニークだったのが、産業技術総合研究所(産総研)の超音波ナノインプリント装置。図1のようにモールドに超音波を印加し局所的に熱を発生させて樹脂などを高速硬化させる仕組みで、サブストレート自体を加熱する熱ナノインプリント法に比べサブストレートや構造物に対する熱ダメージが少ない。また、冷却に時間がかかる熱ナノインプリント法に比べタクトタイムも短縮できる。一見すると熱ナノインプリント法に比べ大きなメリットがないようにみえるが、説明員は「多層の3次元形状を作製する場合、熱ナノインプリント法では加熱によって1層目に形成したパターンが壊れる可能性が高い。これに対し、超音波ナノインプリント法では下地パターンへのダメージがきわめて少ない」と説明。つまり、汎用用途ではないものの、MEMSのようなデバイスには有効だという。これまでのパターニングテストではPETフィルム、PCフィルム、ABS上にL&S=500nm/500nmの微細パターニングをすることに成功。その表面平滑性もRa=5nmと高い値が得られたとしている。


図1 超音波ナノインプリント法のスキーム

 

 


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。