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JPCA Show 2009(6月3〜5日) |
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6月3〜5日、東京ビッグサイトで開かれた「JPCA Show 2009」。FPCをはじめとするプラスチックフィルムベースデバイス向けで目立ったのはやはプリンティングテクノロジーで、スクリーン印刷法やIJ法のPRが活発化していたのに加え、液体トナーを用いた新たな印刷装置が登場。一方、フォトマスクではハードクロムマスク、エマルジョンマスクに次ぐ第3のフォトマスクがイントロデュースされるなど新たな潮流が垣間見えた。 第3のフォトマスクが登場
今回、フォトマスクでWhat's NEWを提供したのが富士フイルム。ハードクロムマスク、銀塩エマルジョンマスクに次ぐ第三のマスクとして「新方式ガラスマスク」を紹介した。
遮光膜に独自開発したネガ型黒色ポリマーを用いたもので、同社はこのポリマーをコーティングしたガラス乾板を供給。フォトマスクメーカーがレーザー描画〜アルカリ現像〜高圧水洗〜ベーク(150℃×30min)してパターニングする仕組み。つまり、エマルジョンマスクはゼラチンが遮光膜以外の部分にも残るのに対し、クロムマスクと同様、非遮光部には黒色ポリマーが残らない。このため、ブランク部に付着した黒ピン欠陥を一般的なレーザーアブレーション法によって除去することができる。黒色ポリマーの標準膜厚は1.5μmで、この場合、OD(Optical Density)は3.5以上が得られる。表面高度と解像性はクロムマスクとエマルジョンマスクの中間で、主要感光波長も405〜413nmと既存のクロムマスク用レーザー描画装置で描画することができる。 ブースではレーザー描画装置メーカーが描画したサンプルマスクを展示。今後、新型マスクとしてフォトマスクメーカーに採用を呼びかけていく方針だ。 スクリーン印刷で下地処理レスのPETに50μmのファインラインが
スクリーン印刷関連でインパクトを与えたのが印刷機メーカーのミノグループで、超高粘度Agペーストを下地処理レスの汎用PETフィルム上にダイレクト印刷し、L&S=50μm/50μmというファインパターンを実現した。 具体的には、一般的な粘度計では測定不能なほどの超高粘度Agペーストを使用。アサダメッシュの高強度無変形スクリーン「HS-D500(フレームサイズ500×500o)」を用いてクリアランスを3.5oと従来の2倍に広くするとともに、先端を斜め研磨した斜めWカットスキージ「MP Yellow WSカットモデル(写真2)」を使用。スキージ走行速度は30o/secと一般的な値だが、アタック角度を50度と傾けて超高粘度Agペーストをスクリーンメッシュ間から転写印刷した。 写真3はPDPのアドレス電極パターンを模した印刷サンプルで、本パターン部はL&S=50μm/100μm、端子部は50μm/50μm。比抵抗は150℃焼成で5×10-5Ω・cmと一般的なポリマー残存型ペーストと同等。サンプル印刷を主導したエスピーソリューションの佐野康代表取締役社長は、「これまでプラスチックフィルムへのファインパターン印刷は下地処理レスでは困難と考えられてきたが、今回、もっとも一般的なPETフィルム(東レのルミラーT60)でも下地処理レスでファイン印刷が可能なことが実証できた。これはプリンタブルエレクトロニクスにとって画期的で、基材の表面エネルギーの影響を受けないスクリーン印刷が可能になったことを意味する」とコメント。今後、エレクトロニクス分野でスクリーン印刷の存在感がますますアップすることを強調していた。
ナノAgインクをフレキソ印刷しRFIDアンテナを試作 プラスチックフィルム製デバイスのプリンタブル配線材料として注目されるナノメタルインク・ペーストでは、DOWAエレクトロニクスが存在感を示した。What's NEWは、ナノAgインクをPETフィルムおよび紙にフレキソ(凸版)印刷してRFIDアンテナパターンを作製したことで、140℃×30秒と低温かつ高速硬化するのが特徴。RFIDのため線幅は1o以上だが、膜厚0.4〜1μmでシート抵抗20〜25Ω/□を実現。ブースではコラムテックのフレキソ版も展示し、プリンタブルエレクトロニクス分野でフレキソ印刷が有効なことをアピールしていた。 非粒子系メタル溶液をIJ印刷 上記のナノメタル粒子に対し、ユニークな非粒子系ナノメタル成膜液を紹介したのがADEKA。 その名のとおりCuやNiをアルコール系有機溶媒に完全に溶解させた溶液で、ノズル目詰まりの懸念がまったくないため、IJ(インクジェットプリンティング)法でダイレクト印刷することをリコメンド。印刷後、不活性ガス雰囲気下において250〜300℃×10〜30分で焼成すると溶媒が完全に揮発しピュアメタル膜が得られる。そのグレインサイズはCuの場合20〜30nmで、比抵抗は3.9μΩ・cm。シリコンウェハー、アルミ基板、ガラス基板に対する密着性も良好だが、Cuに
ついてはポリイミドフィルムでは密着性がとれないという。最大の特徴は大気中&常温でも安定なことで、溶媒に主成分を完全に溶解しているため、ナノメタル溶液を用いる場合に比べ均一な膜が得られる。その一方、前記のように低温焼成は困難なため、コンベンショナルな高温焼成型インク・ペーストとナノメタルインク・ペーストの中間的性質といえそうだ。 圧力アニールで焼成温度を低温化 ナノメタルインク・ペースト、そして非粒子系メタル成膜液とくれば、同じく低温焼成プロセスとして圧力アニール法をとりあげないわけにはいかない。産業技術研究所(産総研)は特設セミナー会場で圧力アニール法によるメタル膜塗布・低温焼成プロセスを紹介した。 一般的なμmパウダーのメタルペーストをスクリーン印刷した後、物理的圧力をかけながら低温焼成することで粒子間を近接・溶融させて低抵抗膜を得る仕組み。以前から注目されていた圧力印加法は今回も明らかにしなかったが、
圧力は100MPa以上で、印加時間は数秒に過ぎないという。この結果、150℃クラスとナノメタルインク・ペーストを用いる際と同等の低温処理を実現。この際の比抵抗もAlで5.6×10-4Ω・cm、Agで10-6Ω・cmオーダーと高い導電性が得られる。この方法を用いてAg電極/P3HT有機半導体層/Al電極というダイオードデバイスを試作、動作することを確認した。 一般的なμmパウダーのインク・ペーストを用いて低温焼成するというコンセプトは高く評価できるものの、圧力アニールというメカニズムから膜には大きな残留応力が残ると考えられ、フレキシブルデバイスに適用して曲げを繰り返すと剥離の危険が大きくなり、個人的には信頼性に疑問が残ると感じたが・・・・・・。 ラミネートしたDFRの膜厚を薄くしてファインパターンを 一方、フォトリソ関連で注目を集めたのが三菱製紙。開催前に独自のファインパターニング技術をプレス発表していたため、果たしてどのような技術かが関心を集めたが、結論から先にいうと“メカニズムはよくわからなかった”のが実情だ。 今回新たにアピールしたのはPCBのファインパターニング技術で、基板にラミネートしたDFR(ドライフィルムフォトレジスト)の膜厚を薄くする技術と異方性ウェットエッチング技術の二つからなる。
まず前者だが、厚さ20〜40μmの汎用DFRを用いながらもマル秘処理によってレジスト膜厚を薄くし、アスペクト比の関係からウェットエッチングでファインパターンが得られるようにした。さらに、レジスト膜厚は例えばランド部分は膜厚20μm、本パターン部分は最小2μmと基板内のポイントによって異ならせることができる。そのメカニズムはノウハウのため一切明らかにしていないが、“Processor”と名づけた工程でこの処理を行う。同社はこの工程で用いる材料、そしてプロセス技術をPCBメーカーへ供給する仕組みだ。 メッキシードに適したPIフィルムが FPCのメインサブストレートであるポリイミド(PI)フィルムでは、荒川化学工業が独自のハイブリッドPIフィルム「ポミラン」を大々的にアピールした。
ポミランは粒径5nm程度のナノシリカをPI樹脂に3次元架橋させたハイブリッドフィルムで、@湿度に対する寸法安定性が高い、AナノシリカがCuイオンの拡散を防止するため耐イオンマイグレーション性が高い、B金属との密着性が高いといった特徴がある。このため、とくに有効なのがメッキ法でシード層を成膜するCCLで、スパッタリングCu膜付きPIフィルムに比べコスト的に優位になる。 FPCをパターニングする際のフローだが、@ポミランをアルカリ薬液で表面処理し、表層10nmの範囲でナノシリカを溶解しナノホールを形成する、A奥野製薬工業のPd触媒メッキ液を用いてPd触媒をナノホールに把持させる、BPdを活性化し金属に還元する、CNi触媒を無電解メッキ成膜し、ナノアンカー(直錨)効果によってシード層として密着させる、といったフローでCCLが完成する。この後、Dフォトレジスト塗布〜露光〜現像する、ECu膜を選択的に電解メッキ成膜する、Fレジストを剥離する、GNiシード層を選択エッチングによって除去する、といったフローとなる。このセミアディティブ工法によってL&S=10μm/10μmというファインパターンが得られる。 もちろん、ポリランはコンベンショナルなスパッタリング法にも対応可能で、ブースではNi-Cr/Cuをスパッタ成膜したサンプルも展示。さらに、FCMのパターニング済みFPC(写真10)も展示するなど汎用性が高いことも誇示していた。 無機ライクな新組成フィルムも
一方、チッソは新組成の高耐熱性・透明フレキシブルフィルム「Sila-DEC」をアピールした。図1のようにナノスケールの有機・無機成分をハイブリッド化したフィルムで、可視光透過率は90%以上、Tg(ガラス転移点)は180℃を実現。もちろん、フレキシブル性も高い。 その組成から無機ライクなため、無機電極材料との密着性が高く、表1のようにITOやAgとの密着性も良好だ。ブースでは、アルバック・コーポレートセンターのナノAgインクをIJ印刷し200℃で焼成した配線付きフィルムを展示。表面は撥水性が高く、水の接触角も100度程度と高いため、IJ法をはじめとするダイレクト印刷法でもインク・ペーストがだれにくくファインパターンが形成しやすいという。ちなみに、フレキシブルディスプレイのようにガスバリア性が問われる用途では新たにSi系などのガスバリア膜が必要になる。 フィルムテンション露光でフィルムマスクの寸法精度を改善
イクイップメント関連では、伯東が独自のフィルムマスクスケーリングシステム搭載露光装置を大々的にピーアール。温湿度変化に敏感というフィルムマスクのウィークポイントを逆手にとったユニークな露光装置で、ガラスマスク以上の寸法精度が得られるという。 具体的には、図2のようにフィルマスクの4辺を引っ張って固定しPCB基板とアライメント。この際、基板側のアライメントマークに応じてX、Y方向のテンションを微調整して寸法精度を合わせる。つまり、個々の基板の実寸法に合わせてフィルムマスクの寸法を追従させるリアルタイムスケーリングを行う。このため、露光精度が大幅に向上し、フィルムマスクのストック枚数も最小限で済む。フィルムテンション調整時間も数秒で、トータルスループットに影響を与えるレベルではない。最大対応サイズは510×610oで、トータル位置合わせ精度も15μmを確保している。 エッチングレジストをダイレクト印刷 コピー機やレーザープリンターと同様、感光ドラムを用いた電子写真印刷方式で、レジスト機能を持つ液体トナーをCCLに印刷・定着させてレジストパターンを形成する仕組み。レジストパターン形成後はウェットエッチング〜
レジスト剥離という一般的なフローとなり、もちろんこれらの設備は既存装置が使用できる。表2のように解像性は40μmクラスで、スループットは3m/minをマーク。これは、一般的な露光装置2〜3台分に当たる。ブースでは実機のほか、エッチング前とエッチング後のFPCを展示。リリースは2010年6月を予定している。 周知のように、同社はPCB向けとしてダイレクト露光装置「Mercurex(マーキュレックス)」を製品化しているが、説明員は「ダイレクト露光装置はリジッド基板用、またファインパターン用。一方、ダイレクト印刷装置はFPC専用装置で、明確に
棲み分けられる」とコメント。将来的にはレジストという間接材料だけでなく、メタルインクのような機能性材料にも適用範囲を広げていきたい考えだ。
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REMARK 1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。 2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。 |