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SEMICON Japan 2008(12月3日〜12月5日) |
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12月3〜5日、幕張メッセで開かれた「SEMICON Japan 2008」。いうまでもなく半導体が中心の展示会だが、FPDやPCB関連のデモもいくつかあった。独断と偏見でトピックスをピックアップする。 SEMICON Japanで毎年、活発なデモを繰り広げるオムニ研究所。今年も技術コーディネートしている東北デバイスの有機EL面光源を披露した。
周知のように、東北デバイスは現時点では世界唯一の有機EL面光源メーカーで、STN-LCDのバックライト光源向けを中心に月8万枚(2型換算)を量産出荷中。今回のWhat's NEWは発光効率を高めた高効率デバイスと固体封止デバイス。 他方、後者は有機EL素子を薄膜封止した後、接着剤を介して保護用PETフィルムを貼り付けた構造。つまり、固体封止デバイスに分類される。PETフィルムは文字通りメカニカル的なプロテクト機能を果たし、水蒸気や酸素といった不純物ガスに対するガスバリア機能は薄膜封止レイヤーが担う。そのレイヤー構成・材料はアライアンス先とのNDAもあり明らかにしなかったが、SiNx系無機膜とポリマーライクな無機膜をプラズマCVD法で積層成膜し、さらにこれらをマルチレイヤー化した。レイヤー数は4〜5層で、トータル膜厚は200nm程度とかなり薄い。いうまでもなく、SiNx系膜がガスバリア機能、ポリマーライク無機膜が柔軟性とピンホール欠陥カバリング機能を担う。最大の特徴は1チャンバで連続成膜できること。つまり、チャンバ内に導入する原料ガスと添加ガスを切り替えるだけでSiNx系ガスバリア膜とポリマーライク膜が成膜できる。このため、封止レイヤーへのパーティクルの侵入は皆無といっていい。さらに、タクトタイムも6分と量産性もノープロブレムだ。
表1のように、基本特性は現行のガラスキャップデバイスに合わせ込んだが、輝度半減寿命はガラスキャップデバイスよりも長いという。同社幹部は、「ガラスキャップデバイスは@水分を吸湿した乾燥材からの水蒸気再放出が懸念される、Aエポキシ樹脂系シール材をUV硬化する際、マスキングをしていてもUV光の散乱によってデバイス周囲が劣化しやすい、B中空加工したキャップガラスのザクリ部分が洗浄しにくく、洗浄時にブラシが傷つく」といった弊害を指摘。@やAによる寿命劣化は無視できないと説明する。これに対し、固体封止デバイスは乾燥材、シール材、ガラスキャップも不要。このため、トータル寿命が伸び、さらに厚さを1.6oから0.5oに薄型化できるばかりでなく、トータル製造コストも半減できるという。すでに量産準備が整っており、月10万枚レベルの大量オーダーにも対応できるという。 今回の東北デバイスのデモに限らず、最新の有機ELデバイスは全体的に乾燥材やガラスキャップレスが多く、乾燥材、ガラスキャップ、シール材はここにきて一定の役割を終えたともいえそうだ。 円筒AZOターゲットが登場
直近では価格の乱高下も落ち着いてきたとはいえ、中長期的には資源枯渇が懸念されているITOターゲット。近年、ポストITOマテリアルの提案が活発化しており、今回のSEMICON Japanでもこうしたデモが相次いだ。 まずは東ソーで、ZnOにAl2O3をドープしたAZOターゲット、それもロータリーターゲットスパッタリング用の円筒ターゲットを展示した。図1のように、ロータリーターゲットスパッタは円筒ターゲットを回転させながらスパッタ成膜するため、ターゲットの利用率が80%前後にアップ。また、ハイパワーを投入できるため、成膜レートも高めることができる。東ソーの円筒AZOターゲットも利用率80%をマーク。図2のように、投入パワーを上げると成膜レートもこれに比例して向上する。もちろん、ターゲット表面に黒色の異物が発生するノジュールもなく、アーキングも少ない。密度は99.7%、純度は99.995%とコンベンショナルなプレーナーターゲットと同等だ。ブースでは2枚をつなぎ合わせた円筒ターゲットを披露。マックス3000o幅と第10世代以降の超大型マザーガラスにも対応できることをアピールしていた。
ZnO系透明導電膜を用いてモノクロLCDを試作 一方、研磨・成膜加工メーカーとして知られる倉元製作所は組成こそ明らかしなかったが、ZnO系膜の受託成膜をアピールした。可視光透過率は膜厚100nm前後で80〜90%とITOと同等。ただし、比抵抗はITOに比べ一桁落ちる。もちろん室温成膜も可能で、ブースではPC(ポリカーボネート)フィルムに室温でスパッタ成膜したサンプルを展示した。 また、パネル展示ながら岩手大学とJSTイノベーションサテライト岩手が試作したモノクロLCDも紹介。高温高湿試験や熱衝撃試験でもITO並みの信頼性が得られ、実用化に当たっても問題がないことを示した。なお、透明電極としての使用条件は基本的にITOと同等だが、洗浄液やフォトレジスト剥離に有機溶剤を使用する点などが異なるという。 ナノAg-Sn合金粒子をBM用途などに
マテリアル関連でユニークだったのが住友大阪セメントのAg-Sn合金ナノ粒子。その名の通り、ナノサイズAgとナノサイズSnを合金化したもので、分散液と塗布サンプルを展示した。粒径は30〜50nmで、写真4のように黒いのが特徴。このため、用途としてはLCDカラーフィルターのブラックマトリクス(BM)を想定。このナノ合金粒子を溶剤に分散してインク化し、インクジェットプリンティング法などのダイレクト印刷法でBMパターンを形成するというプロポーザルで、黒色度を示すOD(Optical Density)値は5をマーク。ただ、メタルだけにIPSモードTFT-LCDには使用できず、VAモードTFT-LCDやTNモードTFT-LCD向けとなる。なお、Ag、Snとも決して安価とはいえないだけに、説明員は「BM以外の用途を模索するために展示した」と本音も漏らしていた。 G10用マスクブランクスが出荷可能に フォトマスク関連では、クォーツリードが第10世代向けの石英基板切断技術をピーアールした。インゴットからフォトマスクの厚みにスライスしクロムマスクブランクスメーカーへ出荷するスキームで、対応サイズを従来の第8世代(1220×1400o)から1700×2000oへスケールアップした。ワイヤーによってスライシングするワイヤーソー技術を用いるため、切断ロス(切りシロ)が0.8oと少ないのが特徴。このため、競合するバンドソー方式に比べカッティングロスを1/3に低減でき、その分、生産効率がアップする。ブランクスの平坦度は150μm。この第10世代向けブランクスはすでにサンプル出荷中で、09年には量産採用されることになる。 水銀ランプを用いて汎用レジストを使用可能に PCB向けではオーク製作所がマスクレスのダイレクト露光装置「DiIMPACT」をビデオで紹介した。一部事業を買収した旧ペンタックスのレーザー直描装置を改良したもので、露光光源を半導体レーザーから得意の水銀ショートアークランプに変更。汎用ドライフィルムフォトレジストや汎用ソルダーレジストが使用できるようにした。露光光のON/OFF方法は従来通りDMD(Digital Micromirror Device)を使用。ヘッドのマルチ化により140枚/hという高速スループットをウリにしている。
メタルマスクとワークを大気中でアライメントする冶具が メタルマスク関連でオリジナル性抜群にみえたのがオプトニクス精密。独自の電鋳技術によってNi系メタルマスクの特性がふれる点をアピール。熱膨張係数が1×10-6/℃と石英ガラスに近い有機EL蒸着用低熱膨張メタルマスクなどを披露した。 What's NEWは、ワークとメタルマスクを磁気によって固定セットするメタルマスク脱着装置。ユーザーはセットした治具を真空チャンバ内にロードしてメタルマスクスルー蒸着を行う仕組み。大気環境下で手軽にワークとメタルマスクをアライメントしてセットできるのが特徴で、着磁と脱磁にノウハウが盛り込まれているらしい。展示したのは写真5のように4インチウェハーが2個搭載できる装置だが、もちろん1mクラスの角型基板にも対応可能。その際もCCDカメラによる撮像と画像処理によってワークとメタルマスクのアライメント精度を±2μmにまで高めることができるという。にわかには信じがたい話だが、これまでの有機EL蒸着装置のように真空チャンバ中でアライメントする必要がないため、そのインパクトは絶大に感じた。なお、価格は展示した4インチウェハー2個搭載タイプで200万円。
JSWが対向ターゲットスパッタ装置をリリース 有機ELデバイス分野などでローダメージ成膜法として知られる対向ターゲットスパッタリング(FTS:Facing Target Sputtering)装置。日本製鋼所(JSW)はFTS装置のベンチャー企業「エフ・ティ・エスコーポレーション」とアライアンスし、有機EL用量産装置をリリースすることを明らかにした。 FTS法は2枚のターゲットを対向配置するため、マイナスイオンや電子などが基板に入射せずローダメージなのが特徴。エフ・ティ・エスは磁石をターゲット外周部に配置しプラズマをボックス内に閉じ込める箱型プラズマソース(図3)を開発。強磁場によってプラズマ閉じ込め効果をさらに高めるとともに、ターゲットの使用効率を高めた。 メインターゲットはトップエミッション構造有機ELデバイスの光透過性カソードで、このケースではすでに形成されてある有機層にダメージが少ないFTSが最適だという。透明導電膜であるITOとAZOを膜厚115nmで室温成膜したところ、ITOは4×10-4Ω・cm、AZOは1×10-3Ω・cmという比抵抗が得られ、可視光透過率も80%以上と高く良好だった。300oウェハーを用いた際の膜厚均一性は±5%。表面平滑性もRa(Roughness Average)=0.23nmと高い。FTSの弱点である成膜レートは50〜100nm/min。これはコンベンショナルなDCマグネトロンスパッタの60〜75%に相当する。プラズマソースはエフ・ティ・エスが供給し、JSWがシステム化するスキームで、すでに有機ELディスプレイ向けとして量産装置を受注したという。 エレクトロスプレーデポジション法を電子デバイスにも
FPDなどの電子デバイス向けにエレクトロスプレーデポジション(ESD)法をピーアールしたのが理研発のベンチャー企業「フューエンス」。図4のように、ESD法は基板〜ノズル間に高電圧を印加してノズルから塗布液を噴霧して成膜する仕組み。液滴は静電的な反発によって粒径30〜100nmに微粒子化され、空気中で溶媒が揮発して粒子状で基板に入射する。つまり、塗布液を用いたドライ成膜法といえる。最大の特徴は基本的に常温常圧で成膜できる点で、アルコール系などの溶媒に溶解させたものはもちろんのこと、懸濁液にも対応できるなど塗布液の選択肢も広い。ナノファイバー不織布やナノフィルターなど医療分野にすでに量産採用されており、今回はFPDをはじめとするエレクトロニクスデバイス向けとして採用をアピールした。 実験でフォトレジストや高分子有機EL材料などが成膜可能なことを確認。1mクラスの大型基板でも±10%以内という膜厚ユニフォミティが得られる。材料利用率は常圧チャンバの側壁につく分を差し引いた値、90%程度をマーク。もちろん、基本的に成膜後の乾燥も不要。とくにポリマー膜を多層化するケースではそれぞれのレイヤー毎に異なる溶媒を用いずに同一溶媒が使用できるため、高分子有機ELや有機トランジスタに有望だという。ただ、私見ではパーティクルや膜純度の問題から有機ELのようなセンシティブなデバイスには採用が難しいような気がした。 |
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REMARK 1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。 2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。 |