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JPCA 2008(6月11日〜13日)


JPCA Show 2008 FPCは薄さと屈曲性が争点に

6月11〜13日、東京ビッグサイトで開かれた「JPCA Show 2008」。FPD関連ではウェットプロセス用のインフラでWhat's NEWがみられた。おもな展示内容をピックアップする。

グラビア印刷用インクが登場

写真1 L&S=30μm/270μmのパターン(藤倉化成)
品名
XK-0065PG
XK-9236
外観
銀色ペースト状
乳白色半透明
粘度
250dPa・s
900dPa・s
比抵抗
2×10-6Ω・cm
5×10-6Ω・cm
焼成条件
590℃×10min
180℃×30min
対応基板
ガラス
PENフィルムなど
表1 グラビアオフセット印刷用インクの仕様(藤倉化成)

 ここにきてPDPの電極や電磁波シールドメッシュに量産採用されるなどFPDで存在感を高めてきたグラビア印刷では、藤倉化成がグラビアオフセット印刷用Agインクを紹介した。

 製品ラインアップは表1のとおりで、ガラスサブストレート向けの「XK-0065PG」は590℃焼成で2×10-6Ω・cmという導電性が得られる。これに対し、PENフィルムをはじめとするフレキシブルサブストレート向けの「XK-9236」は独自の有機銀化合物を固形分にしたいわゆるナノインクで、ナノサイズによる融点降下効果によって180℃×30分で低温焼結する。ブースでは藤倉ゴム工業製シリコンブランケットを用いてグラビアオフセット印刷したメッシュパターンを展示。30μmというファイン印刷が可能なことを示した。周知のように、同社はインクジェットプリンティング用ナノAgインクもリリースしているが、今回のインクはIJ用インクよりも高粘度化することによってグラビアオフセット印刷向けにオプティマイズしたという。

高品位SiO2膜を塗布プロセスで


写真2 SiO2膜の表面平滑性比較(産総研)

 ウェットプロセス技術でユニークだったのが産業技術総合研究所(産総研)の高品質SiO2膜低温成膜技術。シリコン系プリカーサ材料をウェットコートし光照射することにより200℃以下という低温で高品質SiO2膜が形成できるテクノロジーだ。いうまでもなく高温プロセスが適用困難なフレキシブルデバイス向けで、ティピカルな特性は抵抗率が1015Ω・cm、絶縁耐圧が7MV/cmと熱酸化SiO2膜に匹敵する値が得られる。また、写真3のように表面平滑性がRMS=0.15nmと高いのも特徴だ。ブースではガラス、シリコン、プラスチックフィルム上に形成したSiO2薄膜サンプルを展示。プラスチックフィルム基板は曲げて展示し、フレキシブル化しても問題ないことを示していた。

FPCは薄さと屈曲性が争点に

 FPC関連では、薄さと屈曲性をアピールする展示が目立った。FPCが薄くてフレキシブルなのは文字通り当たり前。しかし、会場ではさらにもう一歩踏み込んだ薄さと曲げやすさを強調する出展社が続出。なかにはFPCの頭にさらに“柔らか”と断りをいれた“柔らかFPC”と銘打つ製品も登場した。どうやら極薄、耐屈曲性が近ごろのキーワードのようだ。

 こうしたなか、日立化成工業は極薄多層配線板用材料「Cuteシリーズ」を出展した。Cuteは極薄ガラスクロス(20μm以下)にエポキシ樹脂を含浸させた多層材料で、フレキシブルながら従来のリジッド基板と同様に取り扱えるのが特長。総厚は50μm以下で耐熱性は180℃以上。Pbフリーはんだ工程にも対応できる。ガラスクロスを用いたため寸法安定性に優れ、FPD関連ではセイコーエプソンがガラス製超薄型電子ペーパー(総厚0.5mm)の支持体として採用している。200μmまでケミカルエッチングしたガラス基板をCuteが支えることで反りを抑制。マイクロカプセル型電気泳動方式(E-Ink製)の表示体を用いた試作品を「Embedded Technology 2007」(07年11月開催)に参考出展している。熱膨張係数がガラス基板と近いことが採用の決め手だったという。JPCA Showでは本来の用途である多層配線板として出展。4層ビルドアップにスタックしてもフレキ性を維持できる点をアピールしていた。

 

写真3 極薄多層配線板用材料(日立化成)

 また、新製品として独自のポリイミド樹脂と極薄Cu箔と組み合わせたCute 5000I系も展示(写真3)。こちらはさらに薄型化したタイプで、厚みは片面板で5/7/9μm、両面板で12/16/20μmをラインアップ。写真3は標準品よりさらに薄い片面3μmタイプで、9μmのCu箔にパターニングを施している。総厚12μmのFPCはオブラートのような薄さながら引張強度450MPa、引張伸び40%を実現。8層ビルドアップにしても総厚は100〜150μm内に収まるとのこと。

柔らかFPC

 日本メクトロンはその名もズバリ“柔らかFPC”を出展した。写真撮影が禁止なうえに厚みや屈曲性などの基礎データも公開できないという残念な展示だったが、デモのインパクトは絶大。サンプルを羽毛に触れさせてその柔らかさをアピールした。

 同社はこれまでもFPCの超薄型化を推進しており、すでに型番のついた柔らかFPC「L2BF」、「L3BF」に次ぐ開発品を参考出展。驚いたのはこの開発品で、なんと羽毛より柔らかいFPCを実現。押し当てても羽毛を倒さずに、FPCの方がふわりと避けるほどの薄さ。従来品の約10倍まで柔らかくできたという。柔らかさを示す大雑把な棒グラフが解説ボードにあったが、どうやら開発品の弾性率は10mN/cm以下のようだ(図1)。説明員いわく「柔らかさのニーズは急速に高まっている」とのこと。とくにデジカメの手ブレ防止用ジャイロやHDDといった駆動部のFPCに必須な部材になりつつあるという。また、高密度に部品が実装されたモバイル機器などの組み立て作業も柔らかFPCで格段にラクにな


図1 柔らかFPCの反発力(日本メクトロン)

るのだそうだ。折り曲げたFPCが反発して戻ることもなく、部品群の凹凸にFPCを追従して納められるため、組み立て時の歩留まり向上にも寄与する。FPCにもカバレッジ性が求められているのだろう。

無酸素圧延で高屈曲性を向上

 福田金属箔粉工業は、FPC用高屈曲無酸素圧延銅箔「ROF type-D」を出展した(写真4)。屈曲性を高めるため、Cuの結晶配向性にこだわった圧延銅箔で、9/12/18μm厚をラインアップ。無酸素銅を使用することで高屈曲箔の弱点だった常温軟化を抑制した。高屈曲箔は、素材のCuに何度も焼鈍と冷間圧延を繰り返すため、内部にエネルギーが蓄積し、時間の経過とともに再結晶化を促進する常温軟化が問題となっていた。軟化した銅箔は強度が低下し破断やシワの原因となる。この現象はCuの結晶配向がランダムな状態だと発生しやすい。ランダムだと歪み(蓄積エネルギー)が抜けにくいからだ。

 そこで、ベース材に歪みの少ない無酸素銅を採用。さらに圧延条件で結晶配向を一方向に揃え、処理中の蓄積エネルギーを抜けやすくすることで常温軟化の問題を解消した。ROF type-Dの屈曲回数は、箔厚18μmで既存の高屈曲箔(タフピッチ銅)の約4倍にあたる80万回以上を実現。より過酷な条件下に耐えると同時に、従来のタフピッチ銅と同じ感覚でハンドリングできる加工性の高さも実現した。

電解Cuも柔らかさと平滑性をPR

 銅箔関連では、三井金属も柔らかさをアピール。両面平滑高耐折銅箔「DFF(Dual Flat Foil)」を出展した(写真5)。こちらは電解銅箔で厚みは9/12/15μmをラインアップ。9μmタイプでは25μmピッチのファインパターンにも対応。Cuの結晶粒を大きくすることで、電解銅箔ながら圧延銅箔を凌ぐ屈曲性を付与した。ブースでは解説ボードに結晶構造を比較した顕微鏡写真を表示。既存の電解銅箔のそれが霜柱のような細長い構造をしているのに対し、DFFは圧延銅箔に近い大きな粒状を示しているのがわかる。

写真4 FPC用高屈曲無酸素圧延銅箔(福田金属)
写真5 両面平滑高耐折銅箔(三井金属)
写真6 リチウムイオン二次電池用電解銅箔
(古河サーキットフォイル)

 電解銅箔では、このほか古河サーキットフォイルも出展。薄さと高屈曲性を誇示したリチウムイオン二次電池用電解銅箔「NC-WS」を展示した(写真6)。薄さは下から積んでいく電析ならではで、6/7/8μmをラインアップ。電池用ではこれまで表裏とも平滑な圧延銅箔が主流だったが、NC-WSは電解銅箔の弱点を克服。電析面(マット面)の平滑性を向上したことでシェアを拡大できたという。平滑性は光沢面、マット面の双方でRa=2.5μm以下を実現。電池用では活性物質を均一に塗布しなければならないため、表裏の平滑性が問われるのだそうだ。説明員は「フラットにしてしまえばメリットは電解銅箔のが大きい」とコメント。薄いほど低コストで薄厚均一性が高く、圧延銅箔のように長さや幅に制限がないことを列挙した。これにより薄箔ながら長尺コイルも可能。製品長さ実績は6000mにも及ぶ。屈曲性に関しては「結晶構造を向上した」とのこと。詳細は聞けなかったが、上記した三井金属と同様、Cuの結晶粒径を大きくしたと思われる。

カプトンを焼いてグラファイトに

写真7 カプトンで形成したグラファイトシート        (東レ・デュポン)

 部材関連では、このほか東レ・デュポンがカプトンのユニークな一面を紹介。FPC用のサブストレートとしてお馴染みのカプトンだが、今回は意外な利用例としてグラファイト化したシートを出展した(写真7)。800℃以上の高温でカプトンを焼くとグラファイトシートになるというもの。松下電器産業が考案したアイデアで、高い熱伝導性からすでに携帯電話などのヒートシンクとして使われている。写真7はいつものカプトンの茶色ではなく、魚釣りに使う板おもりのような鉛色をしている。「あまり知られてませんが、こういう使い方もカプトンならできるんですよ。イミド化してませんが(笑)」と説明員。ポリイミドの結晶配向を延伸で整えているため、グラファイト化しても単結晶に近い構造を維持できるのだそうだ。通常のグラファイトシートは、グラファイト粉末をバインダーに混ぜ高圧プレスで成形するのだが、残留したバインダーの影響などで思ったほど熱伝導率を稼ぐことができない。

 これに対し、カプトン製のグラファイトシートは最初からシート状の基材を焼くだけ。ポリマーを完全に熱分解して炭素化するため高い熱伝導率を実現できる。単結晶に近くフレキシブルに曲がるグラファイトシートを比較的容易に手に入れることが可能だ。また、柔らかく加工性に富んでいるため、シートを積層して構造物を形成することも可能。板状にしたものを湾曲させて作った構造物をX線回折装置などに用いる光学素子として使う研究も進められているとのこと。膨張係数がSiに近く、結晶面が整っているため、X線を効率よく集光できるのだそうだ。

砂絵でFPD用フォトマスクを


図2 ナノ金属粒子分散型光硬化樹脂によるマスク工程

 FPD関連のトピックでは、富士フイルムがナノ金属粒子を分散させた光硬化性インクを参考出展。応用例として新しいFPD用フォトマスク形成技術を提案した。この材料の特長は塗布後にUV照射することでプライマー層を形成できること。これによりエポキシ、ポリイミド、ガラスなどの基板表面を粗化処理することなしにメタルとの密着性を確保できる。用途例としてメタライズドフィルム、金属パターン、フォトマスクを挙げており、そのなかでも早期に実現しそうなフォトマスク形成に着目。プロセスステップは図2の通りで、塗布した膜にフォトリソでパターンを描き、これをアルカリ現像するだけで遮光パターンが形成できるというシンプルなコンセプト。従来のCrマスクと比べ2工程をスキップできるのに加え、Cr膜形成で必要な真空プロセスも不要だ。

 配線パターンの形成では、同じ要領でパターニングしたナノ金属粒子をシード層として用い、所望の配線高さまでアディティブに積めば砂絵のように配線ができあがる。ただし、脱バインダーなどに課題を残しているようにも感じる。それに対し、フォトマスクはパターンに電気的特性は不問。光を遮光できればよく、比較的早期に代替技術として利用できそうだ。表面処理なしでガラス材に密着性を確保できるのもフォトマスクにとって理想的だろう。説明員は「まだまだアイデアの段階だからそんなに期待しないでください」とのこと。しかし、実現できたら大型FPDのフォトマスクは大幅にコストダウンできるだろう。ナノ金属粒子はCu、Ag。六価クロムを代替すれば環境にもやさしい。するなといわれてもやっぱり期待してしまう。

レーザーはんだ付けで高密度実装に対応

 装置関連では、ジャパンユニックスがレーザーはんだ付システム「UNIX-423LU」を実機展示した。高密度実装が進展すれば、はんだ付けにもそれに対応した進化が求められる。微細ピッチだけならコテ先を細くして対応することも可能だが、3次元実装ともなると接触して熱を伝えるコテでは作業できない場合もある。レーザーの優位点は実装部品を非接触かつ局部的に加熱できること。非接触だから工具の摩耗とは無縁。これはレーザー加工に共通の利点だが、はんだ付けではさらにツノが発生しないことや、はんだに不純物が混入しないなどのメリットが加わる。はんだ付け自体の作業時間はコテ方式とさほど変わらないが、クリーニングが不要な分だけタクトを2〜3秒短縮できる。

写真8 コテ方式によるはんだ付け状態の比較
  (ジャパンユニックス)

 UNIX-423LUは30Wの高出力半導体レーザーを採用。レーザースポット径はφ0.2〜φ3mmに対応し、局部加熱により低ダメージで接続することができる。照射位置は内蔵の同軸CCDカメラで補足。繰り返し位置決め精度は±0.01mm。モニターで照射位置を確認しながらティーチングできる。気になる装置価格は、コテ方式に比べ2〜3倍と高くなるが、工具交換が不要で、メンテナンス頻度も少ないため、ランニングコストは断然レーザーが有利とのこと。

 このほか、温度復帰特性を改良したコテ方式のはんだ付装置「UNIX-464」も出展。線状のはんだ付けでは、レーザーよりもコテ方式の方が有利。UNIX-464はコテ方式の弱点だった温度復帰までの時間的なロスをヒーターの改良でクリア。タクトタイムを大幅に改善した。温度復帰特性とは基板に奪われた熱が回復するまでの時間で、大型基板や厚膜の銅貼り板を処理する場合、最適な加工温度に達するまで時間的なロスが生じていた。これを温度モニタリングと新型270Wヒーターで改良。回復時間を従来比で一桁短縮した。写真8は従来機とタクトを比較したサンプルで、同じ時間内で従来機が2本のラインしか引けないのに対し、UNIX-464では5本のラインを処理することができる。また、3軸コテ先位置補正機能を搭載。コテ先の消耗や熱膨張による位置ズレの修正も大幅に簡素化した。従来機では再ティーチングも含め約1時間要していた補正作業も、位置補正用センサーにより数分で自動的に補正することができる。

 

 

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。