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nano tech 2025(2025年1月29日〜1月31日)


nano tech 2025 ペロブスカイト太陽電池市場にニューフェースが名乗り

1月29〜31日、東京ビッグサイトで開かれた「nanotech 2025」。今回目立ったのはペロブスカイト太陽電池に関するアピールで、無名企業がデバイスメーカーとして製品化することを発表した。独断と偏見でトピックスを列挙する。

 まずペロブスカイト太陽電池で新たな企業がデバイスメーカーとして名乗りを挙げた。香川県丸亀市に本社を構える大倉工業で、PETフィルムベースのフレキシブルペロブスカイト太陽電池を展示。後発ながら、このテリトリーに進出する方針を表明した。


写真1 Agナノワイヤーフィルム
 セールスポイントはRoll to Roll方式によるコーティング技術や封止・貼り合わせ技術で、基本的に電極を含め電子輸送層、ペロブスカイト層、ホール輸送層といったすべてのレイヤーを市販材料を用いてダイコーティング成膜。モジュールを製品化するかどうかは未定なまでも、PETフィルムで封止したデバイス状態までは製品化したい考え。


写真2 ペロブスカイト太陽電池とその発電デモ
 とくに透明電極については、PETフィルム上に市販のAgナノワイヤーを塗布したAgナノワイヤーフィルムを先行開発。表面抵抗値は10〜20Ω/□とコンベンショナルなITOをしのぎ、レーザードライエッチングや酸によるウェットエッチングといった既存の方法でパターニングできる。もちろん、折り曲げ耐性はITOより圧倒的に高く、フレキシブル状態でも抵抗値はほとんど劣化しない。他方、可視光透過率は76〜82%と高くなく、写真1のように目視でも黄色っぽく見えた。

 ブースでは320mm幅の幅広サンプルと100×100mmの正方形サンプルを披露。写真2のように、発電した電力で模型電車を走らせるデモが印象的だった。気になる光電変換効率や寿命特性はこれから評価する段階で、2027年度をメドに何らかの形でこのテリトリーに進出する考え。

フィルジェンが米社の電子輸送材料とホール輸送材料をPR

 ペロブスカイト太陽電池用材料では、理化学製品で知られるフィルジェンが米Sofab Inks社の電子輸送材料・ホール輸送材料を紹介、日本でサンプル販売していることをアピールした。

 前者はナノサイズのSnO2粒子を分散した分散液で、電子輸送層として塗布した試作デバイスでは24%という高い光電変換効率をマーク。耐久性もコンベンショナルなC60フラーレンの3倍という高い値が得られる。

 他方、後者はナノサイズNiOxを主成分にしたもので、こちらもPTAA(ポリビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン)に比べ3倍の耐久性が得られるという。ただ、どちらもその科学的なメカニズムについては明らかにしなかった。

 どちらも分散液の状態で出荷し、ユーザーサイドで溶剤などを添加してインク化し、各種コーティング法によって塗布するというスキームで、とくにSnO2分散液はサンプル価格14.7万円/10mLと比較的リーズナブルなため、電子輸送層形成コストが最大30%削減できるとしている。

UV光を照射して金属酸化膜を還元処理しピュアライク金属膜に

 製造プロセス関連では、ウシオ電機のエキシマランプによる還元処理技術がバリュアブルに感じた。波長172nmのUV光を照射して金属酸化膜を還元処理する仕組みで、パージするプロセスガスによって還元状態が制御できる。具体的には、プロセスガスにはH2O+Hを使用。還元処理を強くしたい場合はH2Oの比率を高くする。また、還元処理と同時に酸化膜の表面洗浄も可能で、この場合もH2Oの比率が多くすると同時処理が可能になる。気になる処理時間も数十秒と高速だ。

 ブースでは、とくに有効な例として酸化したCu膜を還元した写真を公開。この技術を用いれば、リーズナブルな通常Cuペースト・インクを大気中焼成して酸化してしまった場合も、容易に還元してピュアライクCu膜に再生できる可能性を示した。ただ、気になる比抵抗はまだ評価していないとのこと。

東洋FPPが高精細グラビアロール版を披露


写真3 高精細グラビアロール版
 一方、東洋FPPはグラビア印刷向けの最重要ツールであるグラビアロール版をピーアール、今回初めて2万5400dipという高精細・超微細版を披露した。展示したのは写真3の700mm幅グラビアロールで、ウェットエッチングによって形成した最小ドットサイズは約20μm。肉眼では到底認識できず模倣できない微細パターン・文字が印刷できるため、模倣防止向けに有効とアピール。もちろん、各種電子デバイスの微細配線にも利用可能だ。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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