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FINETECH JAPAN (2024年10月29〜31日)


第34回ファインテックジャパン/第15回フィルムテックジャパン/第13回プラスチックジャパン/第11回メタルジャパン/第4回サスティナブルマテリアルジャパン
ディスプレイの光取り出し効率改善マテリアルの提案に新鮮味

10月29〜31日、幕張メッセで開かれた「第34回ファインテックジャパン(電子ディスプレイ産業展)/第15回フィルムテックジャパン(高機能フィルム展)/第13回プラスチックジャパン(高機能プラスチック展)/第11回メタルジャパン/第4回サスティナブルマテリアルジャパン」。今年はディスプレイや照明デバイスの光取り出し効率を高めるマテリアルや有機系太陽電池向けのマテリアルのデモが目についた。独断と偏見でおもなトピックスをレポートする。

光学弾性樹脂を塗布するだけで外光反射を大幅低減


写真1 SVRを充填したインストルメントパネル用加飾サンプル(左がSVRのみ、右がSVR+ARフィルム)
 まず、デクセリアルズは有機ELディスプレイやLEDバックライトモジュールの光取り出し効率を改善する光学弾性樹脂(SVR)を大々的にアピールした。SVRは屈折率制御用の液状アクリル系樹脂で、エアーギャップを埋める従来のスペーサーに代わって有機ELDやLCDモジュールの上に塗布。その屈折率は1.45〜1.53であるため、上部に配置するトッププレート(ガラスまたはプラスチックフィルム)の屈折率に近く、上部への光取り出し効率が向上。同時に外光反射率も12%から4%へ低減する。インクジェットプリンティング法やスリットコーティング法など各種コーティング法により膜厚30〜200μmで塗布する。すでにリジットタイプの有機ELDでは量産採用されており、今後はフォルダブルパネルへの採用を狙っている。

 写真1は内部にSVRを塗布したインストルメントパネル向けの加飾サンプルで、左がSVRのみ、右がSVRに加え反射防止フィルムをビルトイン。写真ではわかりづらいが、右のサンプルではほとんど反射がみられず、高い反射低減効果が確認できた。

高屈折率材料と低屈折率材料を組み合わせてMicro-LEDの光取り出し効率を改善

 一方、太陽インキ製造はMicro-LEDディスプレイの光取り出し効率を高めるマイクロレンズアレイ(MLA)向けとして高屈折率材料と低屈折材料のハイブリッド使用を提案した。前者は屈折率1.7程度で、RGBのサブピクセル毎に露光〜現像〜ベークによってパターニングする。この際、断面形状が半球状になるよう現像条件やポストベーク条件を最適化する。後者は屈折率1.49程度で、ベタでその上部に塗布する。どちらも各種コーティング法またはテープによるラミネート法で容易に成膜できる。ただ、光取り出し効率がどのぐらい向上するかについてはまだ評価できていないとのこと。

ITO膜の屈折率を調整して反射ロスをミニマム化


図1 LCOSへの屈折率調整層の導入例

 これに対し、日本電気硝子は屈折率調整層付き透明導電膜IMITOをピーアールした。コンベンショナルなスパッタリング法で成膜したITO膜上に独自の無機膜を数nm膜厚で成膜したもので、膜の屈折率を2.2程度から1.8程度へ低減。デバイスとして上部に設けるガラス基板の屈折率に近くなるため、反射ロスをミニマム化できる。また、近赤外域における光透過性が100%近くと高いのも特徴だ。

 ブースでは、図1のようにLCOS(Liquid Crystal on Silicon)への使用を提案。とくに、外光反射が問題となるヘッドアップディスプレイ用LCOSに最適だという。

JFEが有機系太陽電池向けで電子輸送材料に加え独自のホール輸送材料を提案

 有機系電池向けでは、昨年に引き続き、JFEグループ(JFEスチール、JFEケミカル)がペロブスカイト太陽電池や有機薄膜太陽電池の電子輸送層としてMOx金属酸化物膜をめっき成膜することを提案。さらに、今回はペロブスカイト太陽電池向けとして独自のホール輸送材料も開発していることを明らかにした。


図2 ホール輸送材料の分子設計

 図2のようにコンベンショナルなSpiro-OMeTADに代わる材料で、官能基の工夫によってペロブスカイトからのホール輸送効率を高める狙い。さらに、塗布後の平滑性も向上するという。ただ、どのぐらい光電変換効率が向上するかについては明言せず。ちなみに、この材料は製鉄時の副生成物であるフルオレンを原料にしているため、原理上の製造コストは先行するケミカルメーカーよりも低いといえる。

 ブースではこの電子輸送材料とホール輸送材料を使用したペロブスカイト太陽電池と有機薄膜太陽電池を展示。前者は膜付き基板の供給または技術ライセンス供与、後者は材料供給というビジネスモデルを想定している。

麗光が有機薄膜太陽電池の固体封止マテリアルをPR


写真2 固体封止した有機薄膜太陽電池
 一方、麗光は高透明低抵抗フィルムとハイバリアフィルムを用いて固体封止した有機薄膜太陽電池を披露した。前者はPETフィルム上にコンベンショナルな多結晶ITO膜をスパッタリング成膜。シート抵抗値は14.9Ω/□、光透過率は87.2%。素子分離のために用いられるレーザーエッチングプロセスにおける加工性にも優れる。

 ハイバリアフィルム/封止材/高透明低抵抗フィルムという3層をスタックした一括フィルムで有機薄膜太陽電池を固体封止する提案で、前記の構成からITO膜を用いながらもフレキシブル化が可能。ちなみに、この構成での水蒸気透過性は5×10-4g/m2/day程度だという。

ガラスやセラミックスの表面に微細凹凸構造を設けて新機能を


写真3 微細凹凸構造サンプル
 ユニークだったのが、日本電気硝子が紹介した微細凹凸構造技術。幅200μm、深さ50nmクラスのテキスチャーアレイをガラスやセミラックスといったサブストレートの表面に設けるもので、ナノインプリント法やフォトリソグラフィ法ではなく、独自のメカニカルメソッドによって基板表面をダイレクト加工する。

 その用途はタッチパネルの書き心地・触り心地制御、膜密着性向上、濡れ性向上、反射低減など幅広く、とくに濡れ性ではアレイの隙間に入るエアーの存在によって水の接触角が35度から135度に向上。また、ブースではさまざまな書き心地にしたサンプルを多数展示。書き心地が自在に設定できることをアピールしていた。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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