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CEATEC 2024(2024年10月15日〜18日)


CEATEC 2024 日本触媒が来年初めにもフレキシブル有機EL照明デバイスを量産

10月15〜18日、幕張メッセで開催された「CEATEC 2024」。エレクトロニクスデバイスの中心ではやはりフレキシブルタイプで、有機ELや電子ペーパーで興味深いデモが繰り広げられた。独断と偏見でトピックスを列挙する。


 まず有機ELでは、日本触媒がさまざまな形状のフレキシブル有機EL照明デバイス"iOLED"を披露、近くデバイスメーカーとして量産に乗り出すことを表明した。


写真2 折り紙をイメージしたiOLED

写真1 フレキシブル有機EL照明デバイスiOLED
 最大の特徴はNHK放送技術研究所と共同開発した新たな電子注入材料で、コンベンショナルなアルカリメタル材料に代わり、有機強塩基を用いて蒸着することにより水分に対する耐久性を大幅に改善。要求される水蒸気透過性は10-3-4g/m2/dayと通常デバイスに比べ2〜3桁も緩く、デバイスも2枚のバリア膜付きPETフィルムでサンドイッチしただけ。もちろん乾燥剤レスで、数十万という輝度半減寿命を達成。

 ブースでは写真1、2のように通常形状に加え、湾曲状のフレキシブルデバイスを展示。とくに、写真2の折り紙ライクデバイスはフレキシブル有機ELでしかできないことを強く印象づけた。

 現在、デバイスをサンプル出荷中で、2025年初めから枚葉方式によって量産。海外メーカーへの生産委託によるものだが、まだカスタマーから正式オーダーを受けていないためか、キャパシティは明らかにしなかった。


写真3 AOサイズ電子ペーパー
シャープが超大型サイズの電子ペーパーポスターを披露

 電子ペーパーディスプレイでは、シャープがA0サイズ(841×1189mm)の超大型カラーePosterを披露した。ガラス基板上にE-Inkのマイクロカプセル型電気泳動ディスプレイモジュールを実装したもので、もちろん画像書き換え時以外は電力を消費しない。

 展示した写真3のプロトタイプは上部にソーラーパネルと蛍光灯、下部にIoTコネクトモジュールを設置。日中に発電した電力を蓄電するため夜間でも書き換え可能で、さらに無線通信によって遠隔から表示コンテンツをリアルタイムで書き換えできる。つまり、完全スタンドアローンシステムといえる。メインターゲットは災害などの緊急時や過疎地などでの使用で、夜間も上部に設置した蛍光灯によって画像が見えなくなることはない。

低熱膨張PIフィルムを基板に用いて世界初のカーテンLEDを


写真4 カーテンLED
 超大型ディスプレイといえば、長瀬産業が公開したカーテンLED"PANELSEMI"がインパクト抜群だった。関連会社ゼノマックス・ジャパンの低熱膨張ポリイミド(PI)フィルム「Xenomax」上にMini-LEDを実装したLEDで、ベースユニットのタイリング化によってカーテンのように収納することもできる。展示したのは110型で、厚さはわずか2o。Xenomaxによって円筒形などフレキシブル化も容易だ。

 ちなみに、Xenomaxには@耐熱性が500℃と高い、A線膨張係数が0〜3ppm/℃とガラスやセラミックス並み、B表面平滑性がRa=0.5nmとガラス並み、という特徴がある。


写真5 ペロブスカイト太陽電池の光透過率(左:20%、右:40%)
パナソニックはガラス製ペロブスカイト太陽電池をPR

 次世代太陽電池の本命とされるペロブスカイト太陽電池では、パナソニックが昨年に続き、ガラスで固体封止したウィンドウ型デバイスをアピールした。光電変換効率は実用サイズ(30×30cm)で18.1%と世界最高を達成。写真5のように、光透過率を自在に調整することができる。ただ、サンプル出荷は2026年、量産は2029年と事業化は思った以上に慎重だった。

塗布型有機TFTで電子ペーパーをドライブ


写真6 塗布型有機TFT駆動電子ペーパー
 TFT関連では、山形大学有機エレクトロニクスイノベーションセンターの水上誠教授の研究グループが塗布型有機TFTによって2.1型マイクロカプセル型電気泳動ディスプレイ(146×240ドット)をドライブすることに成功した。有機半導体材料にDTBDT-C6を用いてインクジェットプリンティング法で滴下・パターニングしたボトムゲート・ボトムコンタクト型有機TFTで、電極以外はウェットプロセスで形成した。そのキャリアモビリティは2.74cm2/V・s、Vthは0.4Vで、電子ペーパーはもちろんのこと、ローレゾリューションなら有機ELディスプレイもドライブできるという。

簡便な光緻密化プロセスでガスバリア膜を

 同じく山形大学有機エレクトロニクスイノベーションセンターの硯里(すずり)善幸教授の研究室は、ウェットプロセスと真空紫外光(VUV)を用いたガスバリア膜形成法をアピールした。


図1 水蒸気透過性


写真7 ガスバリア積層構造のTEM画像
 プラナリゼーションレイヤーとしてPDMS(ポリジメチルシロキサン)を塗布し波長172nmのVUVをN2環境、室温で照射してSiOxに、またガスバリアレイヤーとしてPHPS(パーヒドロポリシラザン)溶液を塗布してVUV照射によってSiNxにする光緻密化プロセスで、VUV照射もわずか10秒に過ぎない。このSiOx/SiNx構造を1ユニットに設定し、ニーズによって多層化する仕組みで、写真7の1ユニットでは2.2×10-4g/m2/day、3ユニットでは5×10-5g/m2/dayという水蒸気透過性が得られる。とくにニーズが強いのがペロブスカイト太陽電池で、この場合、1ユニットで要求される水蒸気バリア特性が確保できる。

 ちなみに、この積層構造はデバイスのサブストレートに加え、封止にも有効。ただし、後者の場合、すでに形成した有機膜などにダメージを与えないよう、最初に溶媒を用いないPDMSを塗布してSiOxを先に成膜する必要がある。

ITOとポリマー双方の長所を備えたフレキシブル透明導電膜が登場

 マテリアル関連では村田製作所が新たな透明導電膜を展示、ポストITOとして製品化する意向を示した。


写真8 透明導電膜を成膜した透明ヒーター
 組成はシークレットながら、新たに開発したセラミックス粉末を水に分散させた溶液を各種コーティング法によってサブストレートに塗布。50〜100℃と低温で乾燥させるだけで透明導電膜が得られる。つまり、パウダー自体がそのままサブストレートに吸着するというイメージだ。コンベンショナルなITO膜のようなフィルム状ではないため、曲げても断線したり、シート抵抗値が上昇する危険が少ない。したがって、R=0.2mmと無機材料では破格といえるフレキシブル性を実現。つまり、ITOと導電性ポリマーのいいとこどりをした材料といえる。気になる可視光透過率は90%、導電性は1万8000S/cmとのこと。

 ブースでは、写真8のようにこの材料を塗布成膜したフレキシブル透明ヒーターを披露。近い将来、この透明導電膜付きフィルムを供給することを示唆した。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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