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電子機器トータルソリューション展2023 (2022年5月31〜6月2日)


電子機器トータルソリューション展2023
デバイス製造プロセスを劇的に短縮するニューマテリアル・インフラの提案が

5月30日〜6月2日、東京ビッグサイトで開かれた「電子機器トータルソリューション展2023」。今回はエレクトリックデバイス製造プロセスを劇的に短縮可能なニューマテリアル・インフラの提案が目についた。おもなトピックスをレポートする。


窒化膜だけに自己整合的に付着するマテリアルでプロセスを簡素化・容易化

 独断と偏見ながら、今回最大のスマッシュヒットを放ったのがダイセルの"ナノくっつき虫水溶液"。なにやら怪しい名称だが、この製品名はイメージでとくに意味はないらしい。


図2 SiN膜のウェットエッチングレート比較


図1 選択的密着プロセスのイメージ

 その組成はシークレットだが、図1のようにこの水溶液を各種コーティング法で窒化膜上に塗布し乾燥〜洗浄すると、窒化膜だけに自己整合的に凝集・付着する。そのメカニズムは当然のことながら組成と密接に絡むため、一切明らかにせず。

 実際、SiOx酸化膜上に塗布しても膜上に付着しないためウェットエッチングレートはまったく変化しなかったの対し、図2のようにSiN膜のエッチングレートは処理前に比べ1/4〜1/5と大幅に低下する。つまり、例えば図1のような場合、この水溶液をベタで塗布するだけで、すなわちフォトレジスト形成プロセスレスで酸化膜などの窒化膜以外をパターニングすることができる。このため、このケースではトータルプロセスコストを大幅に削減するというラージメリットが得られる。その一方、窒化膜の膜厚を薄くしたり、窒化膜以外の膜をウェットエッチングする際のプロセスマージンが広くなるというスモールメリットもある。

ガラス表面を微細凹凸加工して書き心地や撥水性などを向上


図3 微細凹凸面の3D写真


写真1 密着性向上デモ 上:Al蒸着後、下:剥離後
 日本電気硝子(NEG)はダウンブロー法などで成形したガラス基板を微細凹凸加工した高付加価値型加工ガラス基板を提案した。研磨剤を用いたブラストエッチングによってガラス基板表面を荒らして微細凹凸構造アレイを設けたもので、微細構造物の加工ピッチは350μm以下、高さは数十nmで制御できる。容易に想像できるように、ガラス本来の透明性を維持したまま、その表面改質が可能となる。

 その用途はさまざまだが、ブースでは三つの利用シーンを提案。まずはタッチパネルガラスで、このガラスをサブストレートに用いるとエラストマーやポリアセタールといったペンによる"書き心地"が変化する。具体的には、通常タッチパネルに比べ"書き滑り"が小さくなり、しっかりグリップし、紙に近い書き心地が得られる。もちろん、これはペンだけでなく、指でダイレクトタッチする触り心地にも同様の効果が得られる。

 次に紹介したのが密着性の向上。写真1はAlを全面に蒸着した後、剥離した際のテスト結果で、密着性が高いため"Neg"の部分は剥離せず、高い密着性が得られることがわかる。三つ目は撥水性が向上するデモで、水の接触角はイニシャルの30〜70度から11度に向上するという。

ポーラスPIフィルムで印刷解像性を向上


写真2 多孔質構造の顕微鏡写真
 一方、東京応化工業はユニークな多孔質ポリイミド(PI)フィルムを出展した。表面に30nm〜1μmの細孔をアレイ上に設けたPIフィルムで、空隙率も60〜80%でコントロールできる。ただ、こちらは従来から各種展示会でアピールしており、とくに目新しい話ではない。

 What's Newは、印刷プロセスでファイン化に有利な点が確認されたこと。図4はインクジェット印刷法でメタルインクを印刷した結果で、この多孔質PIフィルム上に印刷すると通常のPIフィルムに比べ明らかに印刷解像性が向上した。いうまでもなく、これはポーラス部にインクが入り込んで印刷にじみが抑制されるため。この結果、ダイレクトファイン印刷に有効なのはもちろんのこと、印刷解像性を改善するための表面処理(バッファ層の追加や親水・撥水処理)が不要というメリットも生まれる。

 ちなみに、耐熱性や耐溶剤性といった基本特性は通常のPIフィルムと同等だが、その構造から引っ張り強度などのメカニカル強度は若干落ちる。すでに大量生産に適するロール状でサンプル出荷中だという。

図4 IJ印刷の結果


ナノCuペーストの新製品としてスプレーコーティング用ペーストが登場



写真3 Cuナノペーストの全面スプレー塗布サンプル
 石原産業は、従来から提案しているナノCuペースト・インクのニュープロダクトとして銅ナノスプレーコーティングペーストを紹介した。すでに製品化している各種印刷用ナノペーストと違い、おもにベタコーティング用のペーストで、一般的なスプレーノズルからスプレーすることにより均一なCu膜が成膜できる。標準的な焼結温度は150℃と低温だが、10-5〜10-6Ω・cmクラスと高導電性が得られる。もちろん、一般的な酸系エッチャントでエッチング可能だが、その特性から写真3のように立体構造物へのベタコーティングに適しているという。

近赤外光照射で乾燥・焼成時間を劇的に短縮

 製造装置関連では、山形大学と小森コーポレーションが画期的な熱処理装置を提案した。波長780〜1000nmの近赤外光(NIR)を照射して乾燥・焼成する装置で、塗布・印刷したナノAgペーストをわずか1.5〜4.5分で熱処理することができる。つまり、30〜60分とされるコンベンショナルな熱風循環乾燥装置に比べ劇的にプロセス時間を短縮することができる。そのメカニズムからNIRはメタル膜に吸収される一方、プラスチックフィルムにはほとんど吸収されないするため、サブストレートへの熱ダメージがほとんどない。表1のように、比抵抗もオーブン乾燥と同等レベルで、膜特性自体はほとんど変わらない。

 ナノCuなどの他のメタル材料、さらにソルダーレジストに代表される有機材料にも適用可能で、ブースではナノAg配線や有機絶縁膜など7層を設けたフィルムサンプルを展示。プロセス時間短縮に加え、耐熱性の低いサブストレートに最適なことをアピールしていた。なお、装置は小森コーポレーションが製品化する方向だ。

ペースト
熱処理時間(sec)
比抵抗(Ω・cm)   外観
オーブン
NIR オーブン NIR Before After
Ag
Flexible 3600 87  2.4×10-4 1.6×10-4 Silver yellow Silver yellow
Nano
1800
144 4.2×10-6 7.3×10-6  Black White
Bendable nano
1800
130 1.2×10-5 8.3×10-6 Silver Silver
Ag/C Bendable 3600 87  3.0×10-5
5.2×10-5 Silver gray Gray
Ag/Cu Ag coated Cu 1800 260 6.9×10-6 4.8×10-6 Silver copper Silver copper
Isolation Flexible 1800 289 - - White Translucent or White

表1 NIR乾燥・焼成結果


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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