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第32回ファインテックジャパン/第13回高機能フィルム展/第11回高機能プラスチック展(2022年12月7〜9日)


第32回ファインテックジャパン/第13回高機能フィルム展/第11回高機能プラスチック展
MICRO-LEDやmini-LED向けでニューテクノロジーの提案が相次ぐ

12月7〜9日、幕張メッセで開かれた「第32回ファインテックジャパン(電子ディスプレイ産業展)/第13回フィルムテックジャパン(高機能フィルム展)/第11回プラスチックジャパン(高機能プラスチック展)」。出展社、来場者ともマスク武装が徹底していたものの、来場者数は新型コロナウィルス感染前並みに戻った印象で、ニュープロポーザルのデモも活発だった。ディスプレイ関連を中心におもなトピックスをレポートする。


シャープがmini-LED+QDシート搭載の最新TFT-LCDをデモ

 まずディスプレイモジュールでは今回もシャープと台湾メーカー数社が展示していたに過ぎず、その印象は決して大きくなかった。


写真1 mini-LEDバックライト搭載TFT-LCD
 そんななか、シャープは最新TFT-LCDとしてmini-LEDバックライト(BL)を搭載したIGZO-TFT駆動LCDを展示、メガコントラスト効果による史上最高画質をアピールした。青色mini-LEDチップは1920個使用。これらLEDのON/OFFを個別コントロールする"精密エリアコントロール(ローカルディミング)"によって個別ブロックを精密制御し、100万:1というメガコントラストを実現。もちろん、省エネルギー効果も高く、実行消費電力を約40%削減した。

 モジュールはTFT-LCDパネル、QD(量子ドット)シート、BLユニットという構成で、mini-LEDからの青色光はQDシートによって白色に色変換され、さらにTFT-LCD上のマイクロカラーフィルターによってRGB各色に色変換される。気になる厚みもモジュール全体で2.1o、BLユニットで1.4oとエッジライト型BL搭載品並みにスリムで、この面でも有機ELディスプレイと十分競合できるように見えた。

 ブースでは写真1のように15.6型パネルを展示。すでにノートPC向けとして一部量産に入っているとのこと。

凸版印刷がフルフレキシブルIGZO-TFTをアピール


写真2 フレキシブルTFT
 TFT関連では、凸版印刷がフルフレキシブルTFTで強烈なインパクトを放った。ポリイミドフィルム上にアモルファスIGZO-TFTを設けたデバイスで、10cm2/Vs以上というハイキャリアモビリティを達成。さらに、曲率半径1oで100万回の折り曲げテストを行った後も、VthシフトをはじめとするTFT特性は変化しないとのこと。

 ブースでは写真2のように巻き付けタイプをはじめさまざまなフレキシブル形態をデモ。また、ビデオ紹介ながら、このTFTを90度曲げ、さらにプレスした様子を表示するなどフレキシブル性をしつこいぐらいに強調。このカテゴリーで一歩リードした印象さえ残した。

新たな高移動度透明導電膜で透明ヒーターやタンデム型ペロブスカイト太陽電池を

 マテリアル関連では、産業技術総合研究所(産総研)がポストITOとして新たな透明導電フィルムを展示。透明ヒーターやペロブスカイト太陽電池などのアプリケーションに有効なことを示した。


図1 高移動度フレキシブル透明導電膜の表面状態の変化とキャリアモビリティ

 開発したのは水素(H)とセリウム(Ce)をドープした酸化Inで、通称ICO:Hと命名。まずHとCeをドープした真空チャンバ内でITOターゲットを用いてスパッタリング成膜またはイオンプレーティング成膜。この結果、室温プロセスでアモルファスICO:H膜が得られる。この後、エキシマレーザーを膜上に照射することで多結晶化する。もちろん、サブストレートに対する熱ダメージはない。

 図1はレーザー照射回数と膜の表面状態・結晶性の関係で、照射回数を増やすにつれて多結晶化が進みグレインもラージサイズ化。結晶化度100%でグレインサイズは2.4μmに成長し、キャリアモビリティも133cm2/Vsに達する。もちろん、この値は透明導電膜としては世界最高に当たる。また、ティピカルなシート抵抗値も14Ω/□クラスとITO膜を凌駕する。


図2 光透過率の比較

 さらに、図2のように可視光領域だけでなく、近赤外領域でも高い透過率が得られる。このため、近赤外光も利用する透明ヒーターに有効で、試作デバイスでは高い発熱効果が得られることが確認された。

 前記のように、タンデム型ペロブスカイト太陽電池にも有望。周知のように、臭化鉛メチルアンモニウムCH3NH3PbX3に代表される既存のペロブスカイト光吸収材料は可視光領域の光吸収がメインで、近赤外のような長波長は基本的に吸収しない。このため、このICO:H膜をもうひとつの発電ユニットにしたタンデム型にすれば、可視光領域から近赤外領域まで幅広い波長が吸収でき、効果的な発電が可能な高効率デバイスが実現すると考えられる。

新たなメタルメッシュ配線で微細ハイアスペクト比パターンを

 一方、パナソニックはまずタッチセンサー向けとして量産を開始した両面配線メタルメッシュ透明導電フィルム「FineX(ファインクロス)」をアピールした。その名の通り、PET、PC(ポリカーボネート)、COP(シクロオレフィンポリマー)といったプラスチックフィルムの両面に高導電メタルメッシュ配線を設けた透明導電フィルムで、ファインでかつ幅と厚みのアスペクト比が高い導電膜が実現する。実際、一般的なエッチング工法で形成したパターンはアスペクト比0.25程度であるのに対し、このフィルムでは0.74程度と3倍近くが得られる。つまり、低抵抗で高透過率が実現するわけである。


写真3 FineXを用いたヘッドアップディスプレイ


図3 FineXの両面配線工程イメージ

 こうしたハイアスペクト比が得られるのは、独自のRoll-to-Rollプロセスを開発したため。図3はそのイメージで、まずはナノインプリンティング法によってフィルムの両面に樹脂による深溝パターンを形成する。この結果、導電パターンとは逆の犠牲層パターンが完成する。この後、密着層、Cu膜、保護膜をベタで連続的にウェット成膜・ドライ成膜する。この結果、ハイアスペクト比の透明導電パターンが完成する。

 そのスペックだが、配線幅は2μm、可視光透過率は94.1%、シート抵抗値は2Ω/□、屈曲性はR=2oと従来エッチング法メタルメッシュを上回る値をマーク。幅500oまでの大型品にも対応可能だ。

 ブースではロールに巻いたフィルムに加え、ディスプレイなどの有力アプリケーションも展示。写真3のように、自動車などのヘッドアップディスプレイにも有望なことを示した。

日本電気硝子がフォルダブル製品のカバーガラスに最適な超薄板ガラスをPR
 

写真4 Dinorex UTGの折り曲げデモ
 フレキシブルプロダクト向けでは、日本電気硝子がハイエンドスマートフォンやタブレットなどのフォルダブル製品のカバーガラスとして化学強化専用超薄板ガラス「Dinorex UTG」を展示した。独自のオーバーフロー法によって成形したフレキシブルガラスで、1500MPaという破壊応力を達成。曲率半径3oという屈曲性を実現した。インパクト抜群だったのがそのデモで、写真4のようにブースで繰り返し曲げテストを敢行し、そのアイキャッチ効果を高めていた。

MICRO/mini-LEDのRGBパターニングに有効な感光性接着剤が

 感光性材料では、日鉄ケミカル&マテリアルがネガ型感光性接着剤「VPA」を紹介、そのユニークな優位性をアピールした。露光量100〜500mJ/cm2で露光するネガ型接着剤で、20MPaという高い接着強度と90%という高い光透過率が得られる。

 しかし、最大の特徴は通常の強アルカリ溶液によるウェット剥離に加え、エキシマレーザーを用いたドライ剥離も可能なこと。つまり、波長248nmまたは266nmのエキシマレーザーによって膜上に穴を開ける、すなわちダイレクトパターニングができる。このため、MEMSの接合層や半導体パッケージの絶縁層といった従来用途に加え、トランスファーという新たな用途にも応用可能だ。


図4 VPAを使用したμ-LEDディスプレイのRGBパターニングプロセス

 なかでも有望なのがMicro-LEDやmini-LEDのRGB発光層パターニングプロセス。図4のように、あらかじめ第1基板上に作製したMicro-LEDチップをレーザー照射によってピンポイント剥離(押し出し)することにより、本基板である第2基板上に転写する。これをRGBチップ毎に行うことで高速でRGB層をパターニングすることができる。

分散性と導電性を両立したCNTコンパウンドが登場

 カーボンナノチューブ(CNT)関連では、大阪ガスケミカルが分散性と導電性を両立したマルチウォールCNT分散技術をアピールした。一般的に、CNTはそのサイズから凝集しやすく、これが膜にした際の導電性や均一性を損なう原因となっている。


図5 CNTコンパウンドの導電性比較

 そこで、同社はCNT同士が均一なネットワーク状態になりやすいよう、独自の添加剤をドープ。この結果、樹脂を混合したコンパウンドで高い分散性と導電性を実現した。図5は一般的なCNTコンパウンドとの導電性比較で、この技術を用いるとCNT含有量が少なくても表面抵抗が低いことがわかる。

 ちなみに、同社はこの技術をライセンス供与するのではなく、みずからCNTコンパウンドを製造するという。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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