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FPD International 2008(10月29日〜10月31日) |
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10月29〜31日、パシフィコ横浜で開かれた「FPD International 2008」。例年と同様、パネルのデモは1か月前に開かれた「CEATEC JAPAN 2008」の流れを引き継ぐ形であるため、パネルについてはCEATEC未出展組を中心にレポートする。TFT-LCDではCEATEC JAPAN同様、液晶テレビがメインとみられていたが、液晶テレビのデモは予想以上に低調で、むしろ3Dパネルの展示が目立っていた印象。一方、有機ELディスプレイではSamsung SDIとChi Mei ELがオリジナルテクノロジーを連発。TFT-LCDと直接バッティングするパーソナルテレビも視野に入ってきたことを印象づけた。また、デバイス別でみると電子ペーパーが新たなアプリケーションを次々と開拓。モノクロなら既存のパッシブLCDをリプレースするのではないかとまで思わせた。
白色LEDをエリアコントロールしてコントラストを向上 CEATEC JAPAN 2008ではRGB-LEDをエリアコントロールする液晶テレビに話題が集中したが、今回のFPD InternationalではRGB-LEDエリアコントロールパネルの出展は少なかった。海外メーカーにとってはRGB-LEDを1000個以上使用するというハイコストがモチベーションを下げているようだ。 こうした課題に対し、Chi Mei Optoelectronics(CMO)は白色LEDを用いたローカルディミング(エリアコントロール)TFT-LCDを提案した。展示したのは55型フルHDで、最大のセールスポイントはモジュール厚を9.9oと薄型化しながらローカルディミングを実現したこと。いうまでもなく白色LEDにしろ、RGB-LEDにしろ、直下にバックライト光源を配置するテレビ用パネルでは輝度ユニフォミティを確保するにはLED個数を増やすか、LED〜パネル間のディスタンスを広げる必要がある。つまり、双方はトレードオフの関係にある。同社によると、モジュール厚を9.9oとすると必要な白色LEDは実に2万1950個に達する。これに対し、独自のモジュールデザインによってLED個数をミニマム化するとともに、既存の拡散フィルムを使用しながらモジュール厚を9.9oに薄型化した。残念ながら、独自デザインはもちろんのこと、LED個数についても一切言及がなかった。そのメリットはローカルディングによってメガコントストで、かつCCFL-BLパネルよりも低消費電力なこと。ブースではCCFL搭載パネルを隣に展示し、リアルタイムの消費電力を表示。その値は画像によって50〜120Wを示し、CCFL-BL搭載パネルに比べ平均60%消費電力が削減できることをアピールしていた。 一方、AU Optronics(AUO)はRGB-LED搭載の46型フルHDパネルを披露。コントラストは20万:1とメガコントラストには達せず、見た目もいまひとつといった印象。また、120Hzの倍速表示と60Hzの通常表示で比較展示を敢行。前者はMPRT(Motion Picture Response Time)6msecで、とくに文字表示時にボヤケがないことが実感できた。 さまざまな3Dパネルが登場 冒頭のようにTFT-LCDで目立ったのは3Dパネルで、ほとんどのパネルメーカーが何らかの形でパネルを展示した。サイズも小型から大型までさまざまだったが、個人的には中小型パネルでは3Dの臨場感はさほど感じない。やはりゲームや映画などを大画面で見る際に適したテクノロジーだと思う。
そんななか、AUOは24型フルHD TFT-LCDをピーアール。視差バリア方式を用いたもので、特殊メガネをかけるとよりいっそう3D感覚が得られる。つまり、裸眼でもある程度の奥行感が出ていた。もちろん、2Dと3Dの混在表示も可能だ。 テクノロジーについて明らかにしないパネルメーカーが多いなか、東芝松下ディスプレイテクノロジー(TMD)は広視野角タイプと高解像度タイプの3D TFT-LCDを紹介。まず前者だが、インテグラルイメージング方式と名づけた12.1型SXGA+の低温Poly-Si TFT-LCDを展示した。正面解像度は通常の2Dパネルに比べ大幅に低下するが、斜めからみても3D画像が認識でき視域が広いのが特徴だ。 他方、後者は正面からの解像性&3D化にこだわったa-Si TFT-LCD。展示したのは6型VGAと3型ワイドQVGAパネル。OCB(Optically Compensated Bend)モードを採用し倍速の120Hz駆動でドライブ。しかし、すべての画素を120Hzで駆動するわけではない。パネルの両サイドに白色LEDを配置し、一方を右目用、もう一方を左目用にしてそれぞれ60Hzで交互に点灯させる。これにより3D感覚が得られる。つまり、時分割による3D化である。確かに正面から見た画質&3D感覚は抜群だったが、少し斜めからみると2Dになるため汎用性は低いように感じた。
a-Si TFTでゲートドライバ回路をビルトイン TFT-LCD世界2位のLG Displayは、ローコストパネルを中心にデモ。まずは37型フルHD対応a-Si TFT-LCDで、輝度は500cd/m2、コントラストは1400:1、色再現性はNTSC比72%、応答速度は5msec(MPRT)とスペック的には最新パネルとしてはとくに高いわけではない。最大のセールスポイントはa-Si TFTでゲートドライバ回路を画素TFT形成時に一括形成したことで、この結果、ゲートドライバICが不要になり製造コストが削減できる。もちろん、ゲートドライバICがない分、パネルの上下を狭額縁化できる。 オール印刷法で15型XGAを作製 同社はオール印刷法で作製した15型XGA TFT-LCDも披露した。印刷解像度を高めるため、インクを全面にコーティングしたロールを版の凸部に接触させて余分な部分に付着したインクを除去した後、インクをワークに転写印刷する反転オフセット印刷法を採用。TFTのゲート、a-Si半導体層、ソース/ドレインはレジストを反転オフセット印刷してマスキングパターンを形成した後、既存のウェットエッチング・ドライエッチング法でこれらをパターニングした。一方、CFはブラックマトリクス(BM)、RGB着色層とも専用インクを用いてダイレクト印刷した。もちろん、RGB着色層はIPSモード特有の“くの字”形状。解像度はミニマム6μmである。写真6のように通常のフォトリソ法で作製したパネルとの比較表示を敢行。多少の線欠陥はあったものの、十分実用レベルに達していた。将来的にはTFTも印刷レジストを用いずに、すべてダイレクト印刷する考えだ。 湾曲すると3Dライクの奥行感が
有機ELDに触発されてか、ここにきてTFT-LCDでもフレキシブル化を図る動きが出てきた。AUOはR=120oに湾曲させた8.93型ワイドSVGAパネル(1024×600画素)を展示。基板には通常のガラス基板を使用したが、カバーレンズやBLユニットを湾曲させることによりフレキシブル化した。モジュール厚は4o。
IPSテクノロジアルファも、R=250oで湾曲した12.1型ワイドXGA IPS-TFT-LCDを展示、スロットマシンの画像を表示した。不思議なことに、湾曲させた影響から3Dに近い奥行感が得られる。コントラストは800:1、視野角は170度で、まだ開発レベルとのこと。両面基板とも通常のノンアルカリガラスを用いているが、どの時点でベンディングさせたかについてはノウハウのためかノーコメントだった。 HUDがTFT-LCDのニューアプリとして浮上 FPDのニューアプリケーションとして注目される車載用ヘッドアップディスプレイ(HUD)では、セイコーエプソンが1.8型低温Poly-Si TFT-LCD(48×240画素)を公開した。HUDは自動車のフロントガラスにパネルを配置し、下部に設けたプロジェクションから光を照射してフロントガラス上に簡易地図、速度、文字などの情報を表示するシステム。なんといってもドライバーは視線を落とさずに情報が得られるため、セーフティーという特徴がある。パネルの輝度は200cd/m2、コントラストは450:1で、透過率は4.7%。このスペックでも背後に反射フィルムを貼ると、直射日光下でも画像が認識できるという。すでに欧州の自動車メーカーに採用されており、今後、日本での採用に期待しているようだ。 有機ELDはSamsung SDIが圧倒的な存在感を
ここにきて携帯電話やポータブルTVなどで認知度が高まってきたアクティブマトリクス駆動有機ELDでは予想通り、トップメーカーのSamsung SDIが圧倒的な存在感をみせつけた。 まず、すでに製品化または製品化準備段階にあるプロダクトとして1.04型(176×64画素)、2.2型QVGA、3型ワイドVGA(800×480画素)、3型VGA、3.3型ワイドVGA(480×854画素)、3.3型ワイドQVGA(272×480画素)、3.7型nHD(360×640画素)、3.7型ワイドVGA、4.1型ワイドQVGA、5型ワイドVGAパネルなどを展示。細かいスペックは省略するが、いずれも色再現性はNTSC比110%以上、コントラストは30000:1とハイスペックで、完成度も非常に高かった。個人的に興味深かったのは携帯電話のサブディスプレイ用1.04型パネル。現在、サブ画面はLCDにしろ有機ELDにしろモノカラーまたはエリアカラーがほとんどだが、今回の26万色カラーパネルをみるとサブディスプレイもフルカラー化が進むのではと思った。また、5型ワイドVGAパネルも注目のプロダクトで、このサイズでワイドVGAはかなりのハイレゾリューションだ。ブースではこのパネルを搭載したミニノートPCを展示。今後、携帯電話やモバイルTVに次ぐニューアプリケーションとして注目されそうだ。 ネックストジェネレーションテクノロジーでは、まずは14型ワイドXGA(1366×768画素)、31型フルHD、40型フルHDパネルという
3大パネルを披露。14型はトップエミッション構造で、ノートPCやパーソナルTV向け。一方、31型と40型はボトムエミッション構造で、RGBそれぞれのドットで光路長を最適化するスーパーマイクロキャビティ構造を採用。色再現性をNTSC比107%に高めるとともに、コントラストも100万:1のメガコントラストに高めた。もちろん、効率も大幅にアップする。また、40型ともなると通常の低温Poly-Si TFTでは表示ムラが目立ってしまうため、a-SiをPoly-Si化する際に従来のエキシマレーザーアニールではなく、SGS(Super Grain Silicon)を採用した(図1)。さらに、31型と40型はFMM(Fine Metal Mask)蒸着技術によってRGB発光層をパターニングした。赤色発光材料と緑色発光材料をコンベンショナルなマスクスルー蒸着した後、青色発光材料をベタ蒸着してマスクスルー蒸着工程を1工程スキップする仕組みで、730×920oの大型マザーガラスでも十分採用できるという。なお、40型は黒色欠陥
や線欠陥がありムラも認識されるなど完成度がいまひとつだったが、14型と31型はこうしたデフェクトもなくパーフェクトに近い出来映えだった。 同社は有機ELDならではという次世代ディスプレイも相次いで披露した。まずフレキシブルディスプレイでは6.5型ワイドQVGAと4型ワイドQVGAパネルを展示。どちらもトップエミッション構造で、基板にはプラスチックフィルムを使用するとともに、アライアンスしている米Vitex Systemsの薄膜封止技術「Barix Encapsulation」、つまり有機膜と無機膜のコンバインドレイヤーをマルチ化することによって薄膜封止した。とくに後者は“Flapping Display”と名づけたこともあり、実に0.05oに薄型化。ブースでは天井に吊るしたFlapping Displayに小型扇風機から風を当て、風になびいてふらめくデモを敢行していた。 Foldable Displayと名づけたワイドQVGAパネルも人気だった。その名のとおり折り畳みができるディスプレイで、写真のようにフラット時は製品の外形サイズよりも大幅に大きい画面をみることができる。構造は図2のとおりで、薄膜封止した2枚のパネルを重ねるとともに、パネルの透過率を高めてシームレスに近いレベルにした。さすがにシームは認識できたが、画質は通常パネルと同等という完成度の高さだった。厚さは0.5oで、ライフも2万時間を確保した。なんといっても、このパネルを携帯電話やスマートフォンに搭載すれば、モバイル環境で製品サイズの2倍近い大画面が閲覧できる。これこそ有機ELDのアプリケーションを開拓するニューデバイスだと思った。 同社のオリジナルテクノロジーはまだある。12.1型パネル(840×504画素)を4面付けしたWindow Displayがそれ。透明なパネルを窓に見立てたもので、当然のことながら背面が透けて見える。その透過 率は30%。詳細は明らかにしなかったが、トップエミッション構造であるため、画素電極には通常の反射メタル/ITO系ではなくITO系に、光透過性カソードにはITO系を用いたとみられる。さすがに透明なだけにコントラストは不十分で、他のプロダクトに比べ画質は見劣りするが、これも有機ELDならではアプリケーションであることを強く印象づけた。 以上、Samsung SDIの有機ELDエキビジションをみてきたが、とにかくパネルの完成度も高く、そのアイデアは素晴らしいの一言。とくにTFT-LCDでは困難なアプリケーションを開拓するという姿勢はトップメーカーとしてその責務を十二分に果たしているといえそうだ。 25型有機ELDを厚さ0.9oに薄型化 現時点ではSamsung SDIに次ぐNo.2メーカーのCHI MEI EL(CMEL)もインパクト抜群のデモを敢行。すでに製品化している2型QCIF(176×220画素)、2.4型QVGA、2.8型QVGA、3.4型480×272画素、4.3型480×272画素、7.6型ワイドVGAパネルを展示。Samsung SDIに匹敵するラインアップを誇示した。 昨年、話題を集めた25型ワイドXGAパネル(1366×768画素)も披露。その完成度の高さから今回も人気の的に。まずスペックからだが、輝度は200cd/m2。このサイズではスペック的には暗いように感じるが、見た目の印象は十分な明るさ。これも自発光の強みといえる。白色の色度はx=0.31、y=0.33で、色再現性はNTSC比75%と有機ELDにしてはかなり低い。しかし、これもまったく感じさせない出来映え。構造は低温Poly-Si TFT駆動によるボトムエミッションだが、SDCと名づけた独自のノンELA(Excimer Laser Anneal)法によってPoly-Si化した。具体的には、まずプラズマCVD成膜したa-Si膜上にNi微粒子触媒を成膜。これを400〜450℃でアニール処理すると、Ni微粒子が下方向および横方向に拡散し、これによりa-Siグレインの成長を促がしてPoly-Si化される仕組み。レーザー照射レスのため面内ユニフォミティが高く、グレイサイズも向上。表面もフラットだという。このため、ELAで問題になっている輝度ムラが抑制できる。いうまでもなく小型パネルでは輝度ムラは認識できにくいが、大型化すればするほど輝度ムラは認識しやすくなる。気になるNi触媒の成膜法はノーコメントだったが、Niターゲットを用いて基板を超高速インライン搬送することによってNiを膜状ではなく、粒子状でa-Si膜上にスパッタリング成膜すると推測される。ちなみに、モビリティは50〜90cm2/V・secで、ゲートドライバ回路をビルトインするのに十分な値を確保している。
ところで、昨年との最大の違いはその薄さ。昨年はモジュールで4oだったが、今回は実に0.9oに薄型化した。この1〜2年、液晶テレビは薄型化競争に入っているが、そうした競争は有機ELDにとって低レベルといわんばかりのデモだった。これだけの薄型化ができたのは、Metal Encasulated Module(MEM)と名づけた技術を採用したため。具体的には、基板には板厚0.6oのTFT-LCD用ノンアルカリガラスを使用。厚さ0.1oのフラットメタル箔で封止することによってガラス厚+αに薄型化した。もちろん、フラットなメタル箔を用いたため、乾燥材はレスだ。 MEMは2.8型ワイドQVGAパネルにも採用。その厚さは0.7o、重さは11.6gというから驚異的だ。こちらはすでにコマーシャリゼーションレベルにあるという。 そのほか、同社はウェットプロセスで有機層を形成した4.3型パネルも公開。詳細は後述する大日本スクリーン製造に関するくだりで述べるが、ローコストの次世代テクノロジーも開発が進んでいることを印象づけた。 LG Displayは貼り合わせパネルをPR
有機ELDではSamsungに引き離されているLG Displayは今回、オリジナルテクノロジーであるDOD(Dual-plate OLED Display)パネルを前面に押し出した。図3のように別々に作製したTFT基板と有機EL基板をコンタクトスペーサーを介して貼り合わせたトップエミッションパネルで、TFTの画素電極とカソードをコンタクトさせる仕組み。TFTは従来と同様、大型化とコストで有利なa-Si TFTを採用した。フラッグシップは19型XGAパネルで、コントラストはgoodだったものの、欠陥が多数みられるなど、製品化には時間がかかるように感じた。DODは3.5型ワイドQVGAと4.3型ワイドQVGAにも適用。その一方、3型ワイドQVGAパネルは従来の積層方式で、a-SiのPoly-Si化には独自のA-SPC(Advanced Solid Phase Crystallization)を用いた。プラズマCVD成膜したa-Si膜をRTA(Rapid Thermal Anneal)によって触媒レスで微結晶化するもので、コンベンショナルなエキシマレーザーアニール法に比べトランジスタバラつきが低減されるため、輝度均一性が向上し、リーク電流が低減するという。
LG Displayはフレキシブルなa-Si TFT駆動4型QVGAパネルもデモ。写真17のように、R=2インチで湾曲させて表示した。基板にステンレス箔を用いたトップエミッション構造で、VitexのBarix Encapsulationで薄膜封止し厚さを0.25oに薄型化した。輝度は100cd/m2、コントラストは1000:1、色再現性はNTSC比63%とスペック的にはいまひとつ。発光材料は赤色と緑色は燐光を用いていると推測される。ただ、点欠陥や線欠陥が多く完成度は低く、実用化にはほど遠い印象だった。 TMDも超高画質有機ELDで対抗 海外勢に押され気味の国内勢ではTMDとセイコーエプソンがアクティブ有機ELDを公開した。 TMDが展示したのはトップエミッション構造の低分子4.15型ワイドQVGAパネルで、写真18のようにフレームに4面付けした。スペックは寿命が6万時間(@200cd/m2)と明らかにした以外、輝度、コントラスト、色再現性も公表せず。ただ、消費電力は平均でTFT-LCDの70%程度とローパワーな点を強調していた。しかし、その画質は世界最高水準で、個人的にはこれまで見た有機ELDでもっとも美しいように感じた。
もちろん、このサイズだけに表示ムラもなく、コントラストもメガコントラストレベルとみられ、ここ数年公開してきた3.5型QVGAパネルに比べ大幅にブラッシュアップした格好。残念なのは展示が地味で、かつ量産化も明言しなかったこと。本業が中小型TFT-LCDであるためとみられ、説明員も「技術的には量産可能だが、価格がなかなか折り合わない」と本音を漏らしていた。 エプソンはCFパネルに加え、RGB独立発光パネルも 一方、エプソンは昨年と同様、車載用として低分子8型ワイドVGA(800×480)と3.5型ワイドQVGAパネル(400×240画素)を展示。自慢の究極の黒によってコントラストが10万:1以上と桁外れに高いことをアピールした。 What's NEWはRGB独立発光方式の3.5型ワイドQVGAパネル。昨年から展示している8型パネルと3.5型パネルは白色EL+CF方式だが、こちらはメタルマスクスルー蒸着によってEL発光層をRGBにパターニングした。もちろん、トップエミッション構造。画質はCF方式パネルとほぼ同じで、スペックも輝度200cd/m2、コントラスト10万:1とCF方式パネルに合わせ込んだ。気になるライフは輝度200cd/m2で5万時間。このため、十分実用可能ではと説明員に聞いたところ、「車載用は信頼性が問われるので、まだCF方式パネルには及ばない」とのこと。もちろん、歩留まりもCF方式パネルに比べ低いようだ。ちなみに、CF方式パネルはサンプル出荷段階だが、まだ量産採用は決まってないという。 ところで、今回高分子パネルの出展はなく、発光材料などのインフラも住友化学が紹介していたに過ぎず、高分子パネル劣勢という構図はより鮮明になったといえる。 メガネが必要ながらド迫力の3D PDPが登場
PDPではSamsung SDIが3Dパネルと超高精細パネルという二つのニューパネルを披露した。前者は58型フルHDで、輝度1300cd/m2、コントラスト30000:1というスペック。液晶シャッター付のアクティブシャッターメガネをかけないと3D画像が認識できないため最新3Dテクノロジーとはいえないが、サプライズだったのはその臨場感。画像にもよるが、奥行感は数mにも感じ、その3D迫力は圧巻だった。もちろん、前記のTFT-LCDのほどんどがメガネレスなのを考えると単純比較は公平ではないが、それでも「3Dってやっぱりすごい」ことを実感させられた出来栄えだった。今後、同社は58型フルHDに加え、42型HD、50型HD、50型フルHD、63型フルHDにも3Dモデルをラインアップする予定だ。 他方、後者は4096×2160画素のいわゆる4K2Kパネル。サイズは63型で、画素ピッチは0.339×0.363o。輝度は1000cd/m2、コントラストは5000:1。多少の線欠陥こそ見られたものの、さすがにこのレゾリューションだけに顔を近づけても画素はまったく認識できない。PDPをテレビだけでなくアートとして印象づけようという狙いからか、周辺には実際の絵画を展示するなどその芸術性もアピールしていた。 PTAディスプレイがいよいよ登場
ユニークなPDPといえば、なんといってもAC型PDPの開発者である篠田傳氏が設立した「篠田プラズマ」のPTA(Plasma Tube Array)ディスプレイ「SHIPLA」。図4のように蛍光体層、Mg保護膜、放電ガスを充填した直径1oのガラスチューブアレイを放電セルにして、これを横方向に1000本以上配置したディスプレイで、プラスチックフィルム基板上にプラズマチューブアレイを実装するため、軽量でフレキシブルな超大型ディスプレイが実現する。基本ユニットは1×1mで、これをタイリングすれば等身大以上の超大型ディスプレイが容易に実現できる。 今回は初めての出展で、基本ユニットを横に3面タイリングした1×3mの125型パネルをR=3000oで曲げて公開した。画素数は960×360と粗く、輝度は400cd/m2、コントラストは10000:1とスペック的には物足りず、最新の液晶テレビやPDPテレビを見た後とあって、見た目の印象はいまひとつ。ただ、メインターゲットはデジタルサイネージだけに、これらのスペックはこのカテゴリーでは十分かもしれない。1ユニットの消費電力は標準400W、最大600W。すでに一部のセットメーカーにサンプル出荷中で、半年以内にはマーケットに登場することになりそうだ。 E Inkが電子ペーパー搭載製品を大量展示
今回、台頭感がもっとも著しかったのが電子ペーパー。これまではニッチディスプレイと見る向きが支配的だったが、今年は出展社・出展製品数からみてもFPDの一角として認知された格好だ。特徴的だったのは各社とも技術PRはほとんどせず、さまざまなアプリケーションをプロダクトという形でみせたことだった。そのため、ここではアプリケーションが広がってきたという視点で写真を中心にレポートする。 まず、このフィールドのオーソリティである米E Inkは同社のマイクロカプセル型電気泳動ディスプレイが搭載されているアプリケーションを一挙に公開し、この分野で独走していることを誇示した。具体的にはアク
ティブマトリクス駆動パネルを搭載したe-bookではソニー、米Amazon.com、ブラザー工業、蘭i-Rexのe-book製品を展示。パッシブパネルやセグメントパネルでは携帯電話、USBメモリー、スマートカード、腕時計、iVDR(Information Versatile Disk for Removable usage)などを展示した。また、電子ペーパーの新しいアプリケーションとしてPOPを紹介。絵や文字などを印刷したフィルムを電子ペーパーに貼り、電子ペーパーをON/OFFすることによってアイキャッチ効果を高める狙いで、ローパワーなバックライトとしても使えることを示した。その一方、カラー電子ペーパーは今回出展せず、電気泳動ディスプレイはカラー化が苦手であること浮き彫りした格好だった。 PVIはフレキシブルモジュールも生産 マイクロカプセル型電気泳動ディスプレイのアクティブマトリクスモジュールメーカー、Prime View International(PVI)もAmazon.comをはじめとするe-bookを中心に展示。モジュールでは5型SVGA、6型SVGA、8型XGA、9.7型1200×825画素パネルを披露し、製品ラインアップも豊富なことを誇示した。What's NEWはプラスチックフィルム基板を用いたフレキシブルな5型SVGAパネルで、フレキシブル化しても画像が歪まないことを示した。現在、同社はガラス製モジュールのみに特化しているが、近い将来はフレキシブルモジュールにも進出することを示した格好だ。 トッパン・フォームズもSiPix製EPD搭載製品を誇示
E Ink陣営を急追する米SiPix Imaging陣営からはトッパン・フォームズが出展。SiPixのマイクロカップ型EPD(Electrophoretic Displays)の構造は図5の通りで、マイクロカップと名づけたセル内に着色溶液と白色粒子を充填するのが特徴。つまり、E Ink方式とは異なり、白色粒子のみを電気泳動させてモノカラーを表示する。ここでわざわざモノカラーと表現したのは溶液の色によってさまざまな色が表示できるため。写真32は黒、赤、青、緑それぞれの着色溶液を充填したマイクロカップフィルムで、こうしたカラフル性がE Ink方式にはないアドバンテージといえる。 トッパン・フォームズのデモもアプリケーションが中心で、写真27〜31のようにe-book、電子値札、ディスプレイカード、地球儀、腕時計、電子看板などを展示。アプリケーションが急速に拡大していることを示した。 テクノロジートピックスは電極を印刷したフレキシブル電子ペーパー。SiPixは現在もポリマー塗布〜エンボス成型(隔壁形成)〜溶液充填〜シーリング〜フィルム封止というマイクロカップ製造工程をRoll to Rollで行っているが、電極も印刷すればフルRoll to Rollプロセスが実現するという。そのほか、効果的だったのが太陽電池で駆動した緑色モノカラーパネル。いうまでもなく、太陽電池は容積当たりの出力が小さいが、低消費電力の電子ペーパーなら太陽電池でも駆動できることをアピールしていた。
TFT-LCDメーカーも電子ペーパーをラインアップする必要が
電子ペーパーの課題であるカラー化については、Wintek(台湾)が前面基板にCFを設けた4.3型マイクロカップ型電気泳動ディスプレイ(600×400画素)を展示した。テキストなどホワイト画面表示時の消費電力を低減するため、CFはRGBWの4ドット構成を採用したのが特徴だという。 そのほか、NEC液晶テクノロジーは独自のアクティブマトリクス駆動技術を用いたA4サイズのマイクロカプセル型電気泳動ディスプレイ、さらにこれを2面付けしたA3サイズディスプレイを公開。そのつなぎ目は1o程度とシームレスとはいい難ったが、新聞紙大の電子ペーパーが容易に実現できることを示した。ただ、今後、E Ink方式電子ペーパーのモジュールメーカーとして全方位に供給するかどうかについては明確にしなかった。 また、Chunghwa Picture Tubesも6型SVGAと8型XGA、CMOグループ(Chi Hsin Electronics)も6型SVGA電子ペーパーモジュールを展示。両社ともSiPix製マイクロカップ型EPDを用いたもので、TFT-LCDメーカーとしてもラインアップ拡充の観点から電子パーパーを製品化する必要に迫られてきたことを感じさせた。 ガラス基板も超薄板化すればロール状に
FPD部材で最大のインパクトを与えたのが日本電気硝子。同社は第8世代TFT-LCD用ノンアルカリガラス「OA-10」、そして150型PDP用高歪点ガラス「PP-8」を展示、その巨大オブジェクトで存在感をみせつけたが、それ以上のインパクトがあったのがロール状の超薄板ノンアルカリガラス。つまり、ガラス基板を超薄板化することによってロール状でハンドリングできるようにした。写真37は板厚50μm、写真38は板厚100μmのロールで、前者はR=100o、後者は200〜300o程度なら割れたりクラックが入ることがない。いうまでもなくロール状にすればハンドリングが容易になり、FPD製造プロセス中でもRoll to Rollによる高速加工が可能になる。個人的にはFPD製造プロセスでRoll to Roll生産は現実的じゃないと思っていたが、こうしたデモをみるとRoll to Rollに対するニーズは確かに存在するようだ。ただ、説明員にたずねると「まだ技術提案レベルに過ぎず、具体的な引き合いはない」とのこと。 ちなみに、ロール状の超薄板ガラスはスクライブ・ブレークが難しくなるが、この点については「100μm厚ならメカニカルカッターもしくはCO2レーザーといった既存の方法でカットできるが、50μm厚になると難易度が大幅にアップしそれなりのプロセスを開発する必要がある」とコメント。しかし、その方法についてはノウハウが絡むためか明らかにしなかった。
Ignisがa-Si TFT駆動の2.2型有機ELDをデモ アクティブ有機ELD用a-Si TFTの設計・ライセンス会社として知られるIgnis Inovation(カナダ)は、同社のa-Si TFTを用いて海外のパネルメーカーが試作した2.2型QVGAパネルを公開。コンベンションルなボトムエミッション構造で、赤色と緑色は燐光材料、青色は従来の蛍光材料を用いた。独自のa-Si TFTデザインとドライバIC技術によってVth(しきい値電圧)の変動を抑制し、2万時間というロングライフを実現した。輝度は200cd/m2、コントラストは10000:1で、小型ながら欠陥フリーの出来栄えだった。 燐光は緑色と赤色が実用レベルに 有機EL材料ではこの分野のオーソリティ、出光興産が従来の蛍光発光材料と新開発の燐光発光材料を紹介した。後者は米Universal Display(UDC)との共同開発にもとづく成果で、赤色用と緑色用のIr系ホスト材料を独自開発した。例によって分子構造は明らかにしなかったが、一般的な緑色ドーパントと共蒸着した緑色素子は色度x=0.35、y=0.62で、効率は実に71cd/Aに達する。これは、最新の蛍光材料の4倍近くに当たる。また、輝度半減寿命も12万時間を確保した。 一方、UDCのIr系赤色ドーパントと共蒸着した赤色素子はx=0.67、y=0.33で、効率も既存の蛍光素子の2倍近くに当たる20cd/A。輝度半減寿命は15万時間を実現。これらのスペックを見る限り、緑色と赤色はすでに実用レベルにあることが実感できた。写真40のように、ブースではこれらの小型燐光素子を展示していたが、個人的には赤色素子の色純度が不十分なように感じた。
ロータリーターゲットスパッタが市民権を μC-Si作製用のMo合金ターゲットも
メタルターゲットでは、日立金属とコベルコ科研がアクティブ有機ELD向けでWhat's NEWを演出した。 日立金属はマル秘組成のAg合金ターゲットを紹介。トップエミッションパネルの反射アノード画素やTFTの配線向けで、表のように3種類をラインアップ。仕事関数、比抵抗、反射率という3大要求特性を自在にふれる点をアピールした。とくに、すでに製品化段階にある「ATD-23」は図6のようにアズデポではピュアAgに比べ反射率が落ちるものの、200℃でアニール後も反射率がほとんど変化しないため、有機ELDの製造プロセスを考えると実質的にはピュアAgよりも反射特性が高いといえる。 日立金属はMoNb、MoTi、MoWといったMo合金ターゲットもピーアール。こちらはソニーから提案されているマイクロクリスタルSi(μC-Si)TFT向けで、a-SiをレーザーアニールによってμC-Si化する際に有効だ。具体的には、ソニーのμC-Si TFTでは図7のようにa-Si膜上にMo系膜をスパッタリング成膜した後、チャネル部分に波長800nmのLDレーザービームを選択照射する。この際、Mo系膜はこの波長に対する光吸収が強く、光-熱変換効率が高いため、a-Si膜へ効率よく熱を伝達する。この結果、a-Si膜がμC-Si化する。その後、Mo系膜をエッチングで除去する仕組みだ。
Al合金をトップエミッションの反射電極に 一方、コベルコ科研はTFT配線用Al合金ターゲットをモデファイした「OLED-DC」をトップエミッションパネルの反射電極材料としてピーアールした。OELD-DCで成膜したAl合金の上部にITOアノード画素電極を設けて反射特性とホール注入特性を両立する狙いで、ITOとダイレクトコンタクトできるのが特徴。図8は従来のAl-Nd膜との反射率比較で、反射率は平均90.5%とAl-Ndよりも高く、表面粗さもRa(Roughness Average)=1.2〜1.7nmと低い。300℃までヒロックフリーと耐熱性も高いという。 2100×2500oのPDPフォトマスクがReady Goに フォトマスク関連でトピックスを提供したのはブランクスメーカーのクリーンサアフェイス技術。今年もPDP用フォトマスク向けとして2100×2500oクロムマスクブランクスを展示した。遮光膜であるCrは膜厚125nm±12.5nmで、反射率は12±3%、OD(Optical Density)値は3.8±0.4。標準的なウェットエッチングレートは50±10秒である。従来はAZ Electronic Materialsのポジ型フォトレジストをコーティングしていたが、今回はナガセケムテックスからリリースされた高感度&低膜減りのポジ型フォトレジスト「GPX」を膜厚1μmでスピンコートした。周知のように、PDP用フォトマスクはサブストレートであるソーダライムガラス基板の制約からこれまで1300×2100oが最大だったが、ガラス基板メーカーが新たな投資を敢行。年末には研磨加工メーカーの対応も整うため、2100×2500oマスクが登場することになりそうだ。 フレキソ印刷の採用機運が
ここにきて注目のプリンティングテクノロジーでは、旭化成からフレキソ印刷の提案があった。同社は以前からフレキソ版用感光性樹脂・プレート「APR(ASAHI PHOTOSENSITIVE RESIN)」をフレキソ印刷版メーカーへ出荷してきたが、FPDをはじめとするエレクトロニクス向けでは従来の一般印刷用と要求特性が異なるため、表面の感光性樹脂層をレーザー彫刻で自らパターニングしたフレキソ印刷版「ADLESS-EL」をリリースすることにした。ADLESS-ELはとくにデバイス量産プロセスで問題となるインクに含まれる溶剤に対する膨潤性を改良。従来のAPRに比べアセトンに対する耐溶剤性を10倍に高めた。また、有機ELDの塗布型発光材料に用いられるトルエンやキシレン、さらにフォトレジストに含まれるPGMEAに対しては従来のAPRは溶解してしまうが、ADLESS-ELは実用的な耐溶剤性を確保した。一方、パターニングに関しては凸部をミニマム10μm、凹部を40μmにハイレゾリューション化。この結果、50μm以下というファイン印刷が可能になった。最大1800o幅まで製品化可能で、第6世代マザーガラスにも対応できる。プロセスコストを左右するライフは50万m2、つまり第6世代基板で20万枚が生産できるレベルだという。 ウェットプロセスでSiO2絶縁膜を ここにきてウェットプロセスでSi系絶縁膜を成膜するプロポーザルが学会で相次いでいる。そうしなか、東京応化工業も今回初めて塗布型SiO2材料を紹介した。組成は明らかしていないが、各種コーティング法で塗布した後、200〜300℃でベークするとSiO2膜になる。膜厚はマックス1μm。可視光透過率は95%、表面平滑性はRa=50nm、耐熱性は400℃クラスとなっている。 白色PENフィルムでLED-BLの光利用効率を向上
LEDバックライト(BL)向けでユニークだったのが帝人デュポンフィルムの白色PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム「Teonex」。いうまでもなく、通常のPENフィルムは透明だが、白色化することでLED-BLの光利用効率を高める狙いだ。具体的には、図10のように白色PENフィルム上に白色LEDなどを実装することによって光反射特性を高める。その反射率は波長400nm以上で90%前後をマーク。既存の白色PETフィルムはその耐熱性からLEDをハンダ付けするのが不可能だが、PENフィルムは融点が269℃と高いため容易にハンダ付けすることができる。ブースでは、写真42のように白色LEDをハンダ付けしたサンプルを展示。ただ、LED発光の光利用効率がどれだけ向上するかについては評価していないとのこと。なお、LED-BL以外では太陽電池のバックシートにも使用できる。 ノズルプリンティング法が有機EL発光層形成メソッドに 部品・材料に比べ製造装置関連については旧来のデモが多く、全体的には新鮮味に欠けた印象だった。そうしたなか、大日本スクリーン製造はCMEL、DuPont Displaysと共同で試作した4.3型ワイドQVGA低分子有機ELD(480×232画素)を披露した。 アクティブ基板である低温Poly-Si TFTはCMELが作製。アクティブ基板上にまず塗布型ホール注入材料と塗布型ホール輸送材料をリニアコーター(スリットコーター)で塗布。続いて、大日本スクリーン独自のノズルプリンティング法でRGBの塗布型低分子発光材料を塗布・パターニングした。図11のように数十個の微細ノズルを設けたヘッドをマルチ化し一筆書きで発光材料をディスペンス充填する仕組みで、パターニング精度を高めるため、ノズルプリンティング処理を行う前にバンク(隔壁)をプラズマで撥水処理した。その膜厚ユニフォミティは±5%以内で、スループットも730×920o基板で3分を実現した。いずれの塗布型材料ともDuPont Displaysのオリジナルマテリアルだが、分子構造は一切明らかにせず。また、DuPont Displaysのゲッター付きカバーガラス「Drylox(図12)」を背面基板に用いるなどDuPont Displays色が強く出たエキジビションだった。
パネルは欠陥があり、コンベンショナルなマスクスルー蒸着法で作製した低分子パネルに比べコントラストも若干低いように感じたが、実用レベルに近く、今後のプロセス最適化に期待がもてる出来だった。なお、有機材料はいずれも新材料ということで気になるライフも2万時間以上を確保した。 大日本スクリーンは洗浄ユニット〜ホール注入層用リニアコーター〜乾燥ユニット〜ホール輸送層用リニアコーター〜乾燥ユニット〜下地表面改質用プラズマ処理ユニット〜RGB発光層用ノズルプリンティングユニット〜乾燥ユニット〜膜厚ムラ検査ユニットをインテグレーションしたシステムを09年度にリリースする予定だ。 Al2O3単層膜で有機ELDを薄膜封止
有機ELD用成膜装置では、蒸着・封止装置や蒸着セルを手がける長州産業が対向ターゲットスパッタリング法の一種であるミラートロンスパッタ法を大々的にアピール。Al2O3膜を反応性ミラートロンスパッタ成膜して薄膜封止した有機EL素子を展示した。従来、同社はSiOx〜SiON〜SiNxといったSi系グラデーション膜も薄膜封止に用いてきたが、成膜レートを考え、今回はAl2O3単層膜のみを用いた。膜厚は500〜600nmで、その成膜レートは2nm/sec程度。もちろん、その原理から負イオンなどが基板に直接入射しないため低ダメージで、基板温度も70〜80℃に抑制できる。パネル展示では、封止前と封止後で輝度-電圧特性および輝度-電流特性とも変化しなかった点を強調。さらに、素子作製中に発生したダークスポットは薄膜封止後も成長しなかったことを報告。ミラートロンスパッタなら有機ELDを高速&ミニマムダメージで薄膜封止できることを示した。 低X線EB蒸着法でAl系メタルを成膜 有機ELD蒸着装置ではWhat's NEWがほとんどなかったなか、電子ビーム(EB)蒸着装置で日立造船がトピックスを提供した。新たに紹介したのは、Alなどのメタル成膜用低X線量EB蒸着装置。 有機ELDではX線と反射電子が基板に入射する危険があるため、これまでEB蒸着法はほとんど採用されていない。そこで、同社は基板に対するX線の入射をほぼレス化した低加速電圧のEB蒸着装置を開発した。そのX線量は従来装置が600mSvだったのに対し、18mSvと劇的に低減。2kV以下という低加速電圧で電子銃から電子ビームを照射するためで、この結果、基板温度も40℃以下に抑制した。ローパワー蒸着ということで気になる成膜レートは加速電圧1.7kVで5nm/sec。300×300o対応実験装置で100×100oのパッシブマトリクス素子上にAlを蒸着して特性を調べたところ、コンベンショナルな抵抗加熱蒸着素子と特性が変わらなかった。つまり、EB蒸着による有機層のダメージがほとんどないことが確認できた。このため、Al系カソードの成膜に用いると、抵抗加熱蒸着法に比べ@蒸着レートが安定するまでの立ち上がり時間が1分以内と速い、A蒸着源のメンテナンスが容易、といった優位性が顕在化する。ポイントソースだけに大型基板における面内膜厚均一性が懸念されるが、この点については「量産装置では蒸着源をマルチ化するとともに、基板または蒸着ユニットを移動させる」とのこと。これによってラージサブストレートへの対応とハイスループットを両立させる考え。ちなみに、TFT基板ではX線が透過するため、TFTの配線、さらにAl2O3やSiO2を用いた絶縁膜用途にも有望としている。 芝浦メカがCFにもIJ法をリコメンド プリンティングテクノロジー向けイクイップメントでは、芝浦メカトロニクスがIJ装置をパネル展示した。周知のように、同社はLCDのポリイミド配向膜塗布用IJ装置を出荷しているが、今回はファインパターニング向けとしてCFをパターニングすることに成功。RGBセルサイズは60×150μmで、フォトリソで作製したBMパターン上にRGB着色層を形成した。ただ、まだ装置の出荷実績はないという。今後、パターニング精度をさらに高め、1〜2年以内に配線用途にも提案したい考えだ。 そのほかプリンティングテクノロジー向けでは、ナカンがグラビアオフセット印刷機を紹介。対応サイズはマックス3100×3350oで、CF、有機EL発光層、各種電極、電磁波シールドメッシュなどに有効だという。 参考文献 |
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REMARK 1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。 2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。 |