会社概要 製品情報 展示会 サポート/ダウンロード お問い合わせ サイトマップ


技研公開2011(5月26日〜5月29日)


技研公開2011 スーパーハイビジョンテレビの実用化に現実味が
固体封止した有機TFT駆動フレキシブル有機ELDも人気


写真1 85型スーパーハイビジョンTFT-LCD

5月26〜29日、NHK放送技術研究所で開かれた「技研公開2011」。メインテーマはNHKが提唱するスーパーハイビジョンテレビで、シャープと共同開発した85型スーパーハイビジョンTFT-LCDを公開。一方、モバイル向けでは湾曲させたフレキシブル有機ELディスプレイが人気だった。

 冒頭のように、今回の目玉はなんといってもスーパーハイビジョンテレビ。その解像度はフルHDの4倍に当たる7680×4320画素で、昨年の技研公開2010ではプロジェクタを用いた超大型スクリーンでのデモだった。今回はシャープと共同で直視型の85型TFT-LCDを初めて披露した。まずスペックからだが、輝度は300cd/m2、階調は12ビット、駆動速度は60Hzと平凡だが、スーパーハイビジョン解像度のコンテンツを表示。さすがにそのレゾリューションから出来栄えは圧巻で、近くで見ても画素はまったく認識できなかった。NHKは2020年の試験放送開始を目指しているが、いまだ民放各社から賛同の意思表示がないのが気になるところ。

PDPではSrCaOに次ぐポストMgOを提案

 一方、PDPに関しては新たなポストMgO保護膜を提案した。周知のように、NHK技研はこれまでポストMgOとしてSrCaOを提唱してきたが、今回はCaMgO保護膜を用いた2×2インチパネル(64×64画素、セルサイズ0.22×0.66o)を披露した。


写真2 CaMgO保護膜を用いたPDP

 CaMgO保護膜は前面基板上の透明誘電体層上にタブレット状のCaOとMgOを用いて電子ビーム蒸着した。膜厚は600nmである。次に、CaCO3膜を成膜。続いて、背面基板と貼り合わせて450℃で封着、封止、ガス封入した後、エージングによって表面にあるCaCO3を除去した。つまり、大気高温プロセスによるCaMgOの膜質劣化を防ぐとともに、エージング後は2次電子放出係数が高いというCaMgOのイニシャル特性が出せるようにした。

 最大の特徴は放電ガスのXe分圧を高めても放電電圧がさほど上昇しないことで、Xe分圧20%パネルはXe分圧10%のMgOパネルと同等に放電電圧が抑制できる。もちろん、発光効率は数十%アップする。このため、同輝度なら消費電力が20%削減できる。実際、デモはXe分圧10%のMgOパネルと並べて展示。輝度は明らかにCaMgOパネルの方が高く見えた。

フレキシブル有機ELDはまだ開発途上

 冒頭のように、有機ELDは有機TFT駆動の5型QVGAフレキシブルパネルを披露した。有機TFTはコンベンショナルな蒸着型ペンタセン有機半導体を用いたボトムゲート/ボトムコンタクト型で、ドライビングTFT、スイッチングTFT、キャパシタの2TFT-1C構成。チャネル長は17μm、チャネル幅は250μmで、開口率は20%である。有機ELは緑色と赤色に高効率なIr錯体燐光発光材料、青色に蛍光発光材料を使用したハイブリッドタイプで、これら発光層をコンベンショナルなメタルマスクスルー蒸着法で成膜・パターニングした。


写真3 5型フレキシブル有機ELD

 フレキシブル化に当たってはベースサブストレートにPENフィルムを使用。有機TFT駆動有機ELを作製した後、ガスバリア膜付きプラスチックフィルムを接着剤を介して接着することで固体封止した。設営コーナーでは写真3のように曲げた状態で展示。もちろん、曲げても表示特性が低下することはない。ただ、相変わらずライン欠陥、スポット欠陥とも多かったほか、青色材料の問題から表示はかなり緑がかかっているなど、お世辞にも完成度が高いとはいえなかった。

キャリア輸送性燐光材料の成分比によってキャリアバランスを最適化

 有機ELについては、ポスター展示でも研究成果「電荷輸送性を基にした高効率有機EL材料の設計技術」を発表。塗布型高分子素子で外部量子効率14.5%を達成したことを報告した。


写真4 高効率高分子有機EL

 詳細な分子構造は明らかにしなかったが、Ir錯体を側鎖にした燐光ポリマーユニット、ホール輸送ユニット、電子輸送ユニットを共重合して塗布型高分子発光材料を合成。この際、燐光基の成分比を5wt%に固定する一方、ホール輸送基と電子輸送基の成分比を15〜80wt%にして特性がどう変化するか調べた。この結果、ホール輸送基を28wt%、電子輸送基を67wt%にするともっとも高い効率が得られた。いうまでもなく、これはアノードから注入されるホールはキャリア注入障壁が低いため、元来ホールリッチになりやすいためで、成分比を上記のようにすることによりホールと電子のキャリアバランスが最適化できたため。実際に作製したITOアノード/PEDOT:PSSホール注入層/HT-1(商品名)ホール輸送層/高分子発光層/TPBI電子輸送層/Csバッファ層/Alカソードという緑色素子で14.5%という高い外部量子効率が得られた。