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SID 2012


SID 2012〜電子ペーパー編

マイクロカップフィルム上にCFをダイレクト形成してカラー化


図1 カラーパネルの構造1)

 Microcupと名づけた独自の電気泳動ディスプレイを開発した米SiPixを傘下に収めたAU Optronicsは、カラーフィルター(CF)方式のマイクロカップ型電子ペーパーを発表した。従来、SiPixは顔料または色素を分散させた溶液をRGBサブピクセルに塗り分け充填してカラー化してきたが、今回はCFをマイクロカップフィルム上にダイレクト形成することにした。

 パネルの構造は図1の通りで、まずキャリアガラスにポリイミド(PI)膜を膜厚10μmで塗布し硬化する。PIを選択したのは耐熱性や耐薬品性が高いためである。この後、コンベンショナルなプロセスでa-Si TFTを作製する。ただし、プロセス温度は200℃以下である。続いて、あらかじめ作製したPETフィルムベースのマイクロカップ電気泳動フィルムをラミネートする。

 次に、マイクロカップ電気泳動フィルム上にRGBカラーレジストを塗布し、フォトリソでパターニングしてRGB-CFアレイを形成する。この後、バリアフィルムをラミネートし、、パネルの周囲にシール剤を塗布しシール層を形成。最後に、内製した剥離装置を用いてキャリアガラスからPIフィルムをリリースした後、再度バリアフィルムをラミネートする。

 a-Si TFTはチャネル長4.5μm、チャネル幅150μmに設定。Vthは0.61V、キャリアモビリティは0.21cm2/V・s、ONM/OFF電流レシオは108だった。いうまでもなく、これらの値はカラー電気泳動ディスプレイをドライブするのに十分といえる。

カラー
R
x, y
CR
NTSC
White
23.4
0.301, 0.331
8
N/A
Dark
2.9
0.304, 0.326
Red
5.1
0.353, 0.316
N/A
3.14
Green
6.6
0.294, 0.373
Blue
4.3
0.225, 0.270

表1 CF付きカラーパネルの光学特性1)


写真2 14.1型カラーパネルの表示例1)

写真1 CFアレイの顕微鏡写真1)

 写真1はCFアレイの顕微鏡像で、CFアレイがマイクロカップ電気泳動フィルムにダイレクト形成されていることがわかる。また、PETフィルムが厚いと混色や不均一なCFパターンになるため、厚さ10μm以下の極薄PETフィルムを用いた。

 ところで、一般的なカラーレジストは十分な架橋反応を得るため硬化に200℃以上を要する。今回は80℃程度で硬化するカラーレジストを用いてマイクロカップ電気泳動フィルムへの熱ダメージを抑制した。また、反射特性を高めるため、ピクセル構成はブランク部であるWを加えたRGBWクワッドデザインにした。

 写真2は14.1型640×450画素パネルの画像表示例で、リリース工程に起因する線欠陥や光学特性の劣化は観察されなかった。また、表1のようにコントラストは8:1、色純度はNTSC比3.14%と反射型電子ペーパーとしては十分な値が得られた。

EWDのリブを2層化してオイルのオーバーフローやランダム拡散を防止


写真3 撥水層上に塗布したフォトレジスト2)


図2 EWDのドライブ状態とオイルの挙動(左がOFF、右がON)2)

 台湾のIndustrial Technology Research Instituteは透明なエレクロウェッティングディスプレイ(EWD)向けとして2層構造の親水性リブについて報告した。

 周知のように、EWDは背面基板上に撥水性絶縁層と電極を配置し、ピクセルを仕切る形でリブを設ける。そして、上部に着色オイルと純水を充填する。電圧OFF時は着色オイルがピクセル全体を覆う一方、電圧をONにすると着色オイルが水に押しやられる形でリブに吸い寄せられる。

 スタンダードな製造プロセスは、@背面基板上に電極、絶縁層、ブラックマトリクスを形成する、A撥水層を形成する、Bプラズマ処理によってフォトレジストの濡れ性と密着性を改善する、Cフォトレジストを塗布しフォトリソでパターニングしてリブを形成する、Dリブで仕切られたセルに着色オイル、続いて純水を注入する、EITO透明電極付き前面基板をアッセンブリする、というフローである。


図3 2レイヤーリブにした際のイメージ2)

 Cでは撥水層の表面エネルギーが低いために均一な塗布が難しく、写真3のように非塗布部ができやすい。このため、Bでプラズマ処理を施す。この後、加熱処理して再び撥水性に戻す。

 ところで、EWDの駆動原理から考えると、電圧を印加すると着色オイルはリブに吸い寄せられる形で押しやられピクセルは透明になる。しかしながら、この状態ではオイルの液面高さは図2のようにリブよりも高くなるはずである。この結果、オーバーフロー現象によって均一な表示が困難になる。


写真4 2レイヤーリブにした際のドライビング現象2)

 こうした現象を回避するため、図3のような2レイヤーリブを考案した。上下のリブは表面状態を異ならせる、つまり下部のリブは上部リブよりも親水性にする。その結果、着色オイルはリブに接触しにくくなり、ピクセルをまたぐオーバーフロー現象が発生しなくなる。また、リブを2層化するとオイルがランダムに拡散して結果的に透過率が低下する現象も抑制することができる。このため、写真4のようにオーバーフローもランダム拡散もないオイルの移動が実現する。

Agナノワイヤー透明電極を用いてCh-LCDをフレキシブル化

 3MはITOに代わって透明電極にAgナノワイヤーを用いることを提案。カラーコレステリック液晶(Ch-LC)型電子ペーパーを試作したことを報告した。

 まず、リファレンスとしてPETフィルム上にITO膜(34nm)とSi-Al2O3膜(25nm)の積層膜を真空成膜したマルチレイヤーサンプルを用意。一方、Agナノワイヤー膜はインラインスロットコーターでAgナノワイヤー分散液を塗布し120℃で焼成した。そして、UV硬化型アクリル樹脂を上部に塗布した2層サンプルと、Agナノワイヤー上にアクリルオーバーコートとPEDOT/PSSを設けた3層サンプルを作製した。そして、すべてのサンプルともレーザードライエッチング法によってダイレクトパターニングした。表2に透過率とシート抵抗値を示す。


写真5 ITO単層パネルと2層パネルの表示比較3)

 カラーCh-LCセルの作製に当たっては市販のCh-LCを使用。これにアクリルモノマー、重合開始剤、径3μmのスペーサーボールを混合した溶液を準備し、一方の透明導電膜付き基板上に塗布した後、もう一方の透明導電膜付き基板をラミネートした。そして、UV光を照度1.6mW/cm2で10分間照射した。

透明電極
光透過率(%)
ヘイズ
シート抵抗値(Ω/□)
PETフィルム
92
0.6
N/A
ITO
80
0.8
100〜125
ITO/Si-Al2O3
90
0.
100
ITO/Si-Al2O3(ATOドープ)
86.6
2.2
69
Ag/OC/PEDOT
88.1
2.2
68

表2 透明電極の特性比較3)

 まず、スタンダードなITO膜(シート抵抗値125Ω/□)は屈折率が大きく、膜厚がほぼ1/4波長に相当するため、可視光域での反射ロスが20%と高かった。一方、ITO/Si-Al2O3積層膜はポーラスなSi-Al2O3膜をインサートしているため、こうした現象がなく、同じシート抵抗値のITO単層膜に比べ光学特性が大幅に改善された。さらに、試作Ch-LCパネルの色純度、コントラスト、輝度も写真5のように大幅に向上した。これらの結果は反射ロスが抑制されて透明電極自体の透過性が向上したためと考えられる。

 他方、透明電極にAgナノワイヤーを用いたCh-LCパネルは応答速度が遅く、さらに駆動電圧も40〜70Vと高かった。これは、導電層と液晶層の間にあるオーバーコートが絶縁層として機能し、スイッチングを妨げるためである。そこで、アクリルオーバーコートにATOのようなナノメタル酸化物を添加したところ、駆動電圧が40Vに低下した。さらに、導電層としてPEDOT/PSSポリマーを上部に設けた3層構造(ATOレス)も駆動電圧が40Vに低下した。


写真7 フレキシブルパネルの表示例3)

写真6 Agナノワイヤー3層透明電極を用いた試作パネル3)
  左:7×9ドット緑色パネル 右:2×6画素フルカラーパネル

 写真6はこのITOフリー3層透明電極を用いたカラーCh-LCパネルの表示例で、色度、コントラストともITO透明電極パネルに比べ不十分だった。これは、Agナノワイヤーを用いるとヘイズが高くなるためと考えられる。

 その一方、Agナノワイヤー透明電極を用いれば容易にフレキシブルパネルが実現する。実際に曲げサイクルテストをしたところ、Agナノワイヤー電極はほとんどシート抵抗値が変化しなかったのに対し、ITO透明電極は大幅にシート抵抗値が上昇しデバイスには適用できないレベルだった。そこで、Agナノワイヤー3層透明電極を用いてフレキシブルCh-LCパネルを作製。写真7のように曲率半径2.5cmで曲げても表示特性は劣化せず、フレキシブルパネルに適用できることが実証できた。

参考文献
1)Y.-H.Lai, et al.:Direct Photolithographic Color Filter for 14.1-inch Flexible Color Electrophoretic Displays, SID 2012 DIGEST, pp.1365-1367(2012.6)
2)Y.-S.Ku, et al.:The Structure and Manufacturing Process of Large Area Transparent Electrowetting Display, SID 2012 DIGEST, pp.850-852(2012.6)
3)M.J.Pellerite, et al.:New Transparent Electrodes for Cholesteric Liquid Crystal Displays, SID 2012 DIGEST, pp.172-174(2012.6)


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