STELLA通信は潟Xテラ・コーポレーションが運営しています。 |
SID 11〜塗布型酸化物TFT編 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ここにきて新たなローコストTFTとして研究開発が活発化している塗布型酸化物TFT。ここでは2件の発表をクローズアップする。
まず塗布型a-IGZO-TFTでは、Yonsei University(韓国)が高圧アニールによって塗布型IZGO膜の焼成温度を350℃以下に低温化したことを報告した。 プリカーサ材料としてインジウム硝酸塩水和物(In(NO3)3・xH2O)、ガリウム硝酸塩水和物(Ga(NO3)3・xH2O)、酢酸亜鉛二水和物(Zn(CH3COO)2・2H2O)を使用。モル比をIn:Ga:Zn=5:1:2に固定し、濃度0.2molでメソキシエタノール溶媒に溶解させた。この際、ゾル安定剤としてモノエタノールアミンと酢酸を添加した。そして、N2雰囲気で基板上にスピンコートした。この後、@300℃×5分プリベークし溶媒を揮発、A真空雰囲気で300℃×5分アニール、B各種ガス雰囲気で300℃または350℃で3時間高圧アニール、と3段階で焼成した。膜厚は30nmである。 作製したのはコンベンショナルなボトムゲート&トップコンタクト型デバイスで、ゲートにはMoW、ゲート絶縁膜にはプラズマCVD成膜したTEOS、ソース/ドレインにはAlを用いた。チャネル長は100μm、チャネル幅は1000μmである。 図1はゲート電圧-ドレイン電流特性で、N2、O2、大気雰囲気といずれの雰囲気でも1MPaで高圧アニールすると特性が向上。とくにO2雰囲気では3cm2/V・sともっとも高いモビリティが得られた。これは、リファレンスである圧力レスアニールデバイスの5倍に当たる。 表1はアニール条件とデバイス特性をまとめたもので、大気中でアニールしたデバイスはモビリティが0.003cm2/V・sに過ぎなかった。これに対し、O2雰囲気において0.1MPaで高圧アニールすると、モビリティが0.04cm2/V・sに向上した。これは、O2雰囲気では酸化物層が容易に形成され、チャネルとゲート絶縁膜界面の欠陥密度が低減したためと考えられる。
さらに、O2雰囲気において1MPaで高圧アニールするとモビリティは1.02cm2/V・sと劇的に向上するとともに、サブスレッショルドスイングも0.69V/decから0.48V/decに低下した。これは、IGZOバルク活性層や界面の欠陥が減少しただけでなく、膜の構造自体が変化したためと考えられる。一方、圧力を2MPaにするとIGZO活性層内でのO2拡散が過剰になる結果、モビリティ、サブスレッショルドスイング特性とも劣化した。 IZO/AIZOダブルレイヤーでモビリティを5cm2/V・sに a-IGZO-TFT以外では、Yonsei UniversityとSamsung Advanced Institute of Technologyが薄膜InZnO/厚膜AlInZnOのデュアルチャネルデバイスを報告した。 周知のように、塗布型酸化物TFTはその焼成温度が450℃クラスと高いことがネックとなっており、大型基板やプラスチックフィルム基板に対応できにくいといったデメリットを抱える。したがって、デバイス特性を下げずに焼成温度を低温化するのが実用上の課題となる。そこで、これまでに報告されている最低温度である350℃焼成を前提にしてIZO/AIZO塗布型酸化物TFTを作製した。 InZnO(IZO)、AlInZnO(AIZO)材料として、まずインジウム硝酸塩水和物(In(NO3)・xH2O)、酢酸亜鉛二水和物(Zn(CH3COO)3・2H2O)、塩化アルミニウム(AlCl3)プリカーサを用意。これらを2メトキシエタノール溶媒に入れ、70℃×30分撹拌して溶解させた。溶液中の分子濃度はIZOが0.02mol、AIZOが0.25molである。そして、IZOはIn/Zn比を1〜5と変動させる一方、AIZOはその比率を0.2:3:2に固定した。
試作したのはコンベンショナルなボトムゲート&トップコンタクト型デバイスで、ガラス基板上にまずバッファ層を成膜。その後、MoWゲートを膜厚200nmで、続いてSiO2ゲート絶縁膜を膜厚120nmで成膜した。そして、IZOプリカーサ溶液とAIZO溶液をスピンコートし、250℃で焼成した。最後に、Al膜を膜厚200nmでスパッタリング成膜してソース/ドレインを形成した。チャネル長は100μm、チャネル幅は1000μmである。 図2の左はフロントIZOチャネルのキャリア密度と比抵抗の関係で、In/Zn比を1から5にするとキャリア密度が1.41×1015cm3から1.02×1017cm3に増加する一方、比抵抗も2.74×103Ω・cmから8.56Ω・cmと低下した。 表2にAIZOチャネルとIZO(膜厚12nm相当)/AIZO(膜厚30nm相当)デュアルチャネルの特性を示す。デュアルチャネルでIZOをIn/Zn=5にすると、ON/OFF電流レシオをはじめ総じて特性が低く、Vthもマイナス方向に大きくシフトした。これに対し、In/Zn=3ではON電流が10-4Aと高く、Vthシフトも1.28Vと安定した。これは、薄膜フロントチャネルはモビリティ向上に直結する高い電荷輸送特性を備え、厚膜バックチャネルはVthが適切になるよう電荷コンダクタンスをコントロールするためである。
さらに、In/Zn=4にしたところ、モビリティは5.02cm2/V・s、Vthは0.35V、ON/OFF電流レシオは1.5×106、S.Sは0.92V/decとさらなる特性改善がみられた。 参考文献 |
REMARK 1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。 2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。 |