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岩手大学新技術説明会(7月8日)


岩手大学新技術説明会
分子接合法によってレジストレスかつエッチングレスでめっきパターンを形成

7月8日、科学技術振興機構(JST)主催による「岩手大学新技術説明会」がオンライン形式で開催された。同大学が独自開発した分子接合法(i-SB法)に関する2件の発表をピックアップする。


図1 i-SB法のプロセスフロー(online講演中に表示された
資料を“スクリーンショット”して撮像しトリミング)

 分子接合法(i-SB法)は、光反応性分子接合剤をガラス基板などのサブストレートに吸着させ、紫外光を走査またはマスキングによって部分照射して基板と化学結合させた後、未照射の分子接合剤を洗い流すことにより、紫外光照射部分のみに無電解めっき(配線)を形成する技術。つまり、フォトレジストかつエッチングレスでめっきパターニングが可能である。

 トップバッターとして理工学部化学・生命理工学科の桑静准教授が「分子接合法(i-SB法)によるガラス基板、シリコンウェハへの高速伝送対応ダイレクトパターンめっき」と題して講演した。インターポーザ、パッケージ基板、LCD基板などの平滑化デバイスへの応用を図るため、従来法のような表面粗化技術を用いたアンカー原理を用いずに、基板表面の平滑性を確保する狙いで、ガラスとシリコンウェハーへのパターン形成にトライした。

 プロセスフローは図1の通りで、まず光反応官能基をディップ法などで基板に吸着。この後、UVレーザーを局所的に照射することによって照射部分を分子接合状態に、つまり基板表面と化学結合する。続いて、未照射部分を洗浄によって除去する。この結果、分子接合パターンが完成する。この後、めっき触媒を自己整合的に分子接合部分に吸着。最後に、同じく自己整合的にNiやCuなどを無電解めっき成膜して導電パターンを形成する仕組み。

 分子接合層の厚さは約1.7nmで、顕微鏡観察したところ空洞のない良好なレイヤーが形成できた。気になる表面平滑性はガラスが処理前でRa=0.9nmからUV照射後3.6nmに、シリコンウェハーにいたっては処理前がRa=0.9nmからUV照射後1nmとほとんど変化せず、高い表面平滑性が維持できることが確認できた。つまり、5Gや6G対応デバイスで要求される高速転送特性も十分クリアでき、さらにトータルプロセスコストは従来のフォトリソ法に比べ1/2〜1/3に低減できるとしている。

PPSなどの樹脂基板にも適用可能

 続いて、研究支援・産学連携センターの鈴木一孝客員教授が「分子接合法(i-SB法)によるプラスチック成形品への三次元配線形成技術」と題し、i-SB法を有機材料であるプラスチック成形品に適用した研究成果を発表した。


写真2 樹脂基板へのめっきパターニングサンプル(online講演中に表示された資料を“スクリーンショット”して撮像しトリミング)

写真1 分子結合膜の断面写真(online講演中に表示された資料を“スクリーンショット”して撮像しトリミング)
 マルチファンファンクションステアリング、パッケージ基板、アンテナ、MEMS・タッチセンサーといった3次元成形回路部品(MID:Mold Interconnect Device)へi-SB法を適用する狙いで、前記のプロセスフローによってPPS樹脂やABS樹脂基板へめっき成膜したところ、十分な密着性を確保。めっき膜の表面平滑性もRa=0.2μmと基材表面とほぼ同等だった。さらに、写真1のようにダイレクトパターンニング法およびフォトエッチング法によって線幅30μm以下にファインパターニングできることも確認できた。

REMARK
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2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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