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産業技術総合研究所新技術説明会(9月20日)


産総研新技術説明会 新たなプラズマプロセスに脚光

9月20日、科学技術振興機構(JST)でJST主催による「産業技術総合研究所新技術説明会」が開かれた。ここでは、エレクトロニクス関係の講演2件をピックアップする。

 フレキシブルエレクトロニクス研究センターの白川直樹は「低温プラズマ焼結を用いた印刷銅配線形成と野球帽ラジオ」と題して講演、独自開発した低温プラズマ焼結技術を紹介した。


図1 酸素ポンプの構造とCu大気焼成時における温度-酸素分圧の関係1)

 周知のように、プリンタブルエレクトロニクス分野では低温焼結配線材料としておもにナノサイズAgが使われるが、耐マイグレーション性やプロセスコストを考えると低温焼結Cuを用いるのが望ましい。いうまでもなく、Cuは大気中で加熱すると絶縁体であるCuOになるため、還元雰囲気で焼成する必要がある。そこで、独自の低温プラズマ焼結技術(Cool Sintering Process:CPS)を用いて低温&大気中プロセスでピュアCu配線を形成することにトライした。

 図1のような固体電解質型酸素ポンプで極低酸素分圧化したN2を大気圧プラズマにしてワークに吹き付けてCu膜を焼結する仕組みで、図1のグラフから10-27気圧以下の酸素分圧になると180℃以下という低温でCuOから金属Cuへの還元が起こることがわかる。実際のプロセスでワーク温度が180℃に満たない場合はヒーターで加熱する。


写真2 試作したラジオ付き野球帽1)

写真1 低温プラズマ焼結したCu膜1)
 写真1は粒径20nmのナノサイズCuを低温プラズマ焼結させた際の顕微鏡写真で、グレインサイズは0.3μmに拡大し、ボイドレスの均一なCu膜が得られた。気になる比抵抗も2.6μΩ・cmとバルク値の約1.5倍に過ぎなかった。こうした低抵抗でかつ均一なCu膜は光焼成プロセスや大気焼成型Cuペーストといった従来のアプローチでは得られない。実際、このプロセスと安価なPENフィルムを用いると、ポリイミドフィルム+ナノAgペーストという従来プロセスに比べ1/10程度にコストダウンできるとしている。

 研究グループはその応用例として講演タイトルにもあるようにラジオ付き野球帽を試作。PENフィルム上にラジオの回路を低温形成し、表面実装部品を実装してフレキシブルラジオをしたもので、これを野球帽のつば部分に仕込んでウェアラブル化した。この結果、帽子をかぶったままで選局や音量調整といった操作ができるようになる。

アレイ化によって高圧環境で低温&大面積プラズマを実現


図2 プラズマの特性2)

 一方、電子光技術研究部門先進プラズマプロセスグループの金載浩(キムジェホー)氏はエレクトロニクスデバイス向けとして新たなプラズマプロセスを提案した。

 図2のように、各種デバイスの製造に広く用いられるプラズマの特性はプロセス圧力に強く依存する。このため、大気圧に近い高圧環境では低温化・大面積化が困難な一方、低圧環境ではスループットが低いといった根本的な弱点がある。研究グループはこうした関係を打破し、高圧環境における低温・大面積プラズマ生成技術を開発することに成功した。

 その基本コンセプトはPDPと同じで、比較的小規模空間でマイクロ波プラズマを発生させ、これをアレイ化して大面積基板に対応させる仕組み。しかし、従来のマイクロ波プラズマでは導波管を用いるため小型化が難しい。そこで、無線通信技術で実用化されているマイクロストリップ技術を用いることにした。


図3 マイクロストリップ技術を用いたプラズマ生成技術のイメージ2)

 図3のように、チャンバを模した小規模空間に導電性のマイクロストリップパターンを設けるもので、ここに2.45GHzのマイクロ波を照射してプラズマを生成する。そして、図4のようにこれをアレイ化することによって高圧環境でも低温かつ大面積プロセスに対応させる。つまり、図4のようにプリトリートメント、プラズマCVD処理、ポストトリートメントといった異なるプラズマプロセスをRoll to Rollで連続処理できる。当初、プラズマ照射サイズは1oだったが、アレイ化によって200o幅にまで幅広化した実験装置を製作。このコンセプトで量産装置の実用化も可能としている。

参考文献
1)白川:低温プラズマ焼結を用いた印刷銅配線形成と野球帽ラジオ、産業技術総合研究所新技術説明会資料、pp.15-19(2018.9)
2)金:新規産業の創出を目指した多様な先進プラズマプロセス技術、産業技術総合研究所新技術説明会資料、pp.25-29(2018.9)
 


図4 高圧マイクロ波プラズマの大規模化イメージ2)

 

 


REMARK
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2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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