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有機エレクトロニクス研究会(OME)(11月22日) |
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11月22日、都内で電子情報通信学会主催による「有機エレクトロニクス研究会(OME)-光機能性有機材料・デバイス、光非線形現象、一般(OME2013-68〜76)」が開かれた。ここでは、千葉大学と諏訪東京理科大大学の研究グループが発表したフレキシブル色素増感太陽電池技術に関する講演をピックアップする。 周知のように、色素増感太陽電池で色素を吸着する光電極にはナノサイズTiO2が用いられる。色素を吸着する表面積が大きく光電流が増大するためだが、塗布後の焼成に500℃という高温プロセスを要する。このため、プラスチックフィルムをサブストレートに用いたフレキシブルデバイスを実現するには別のアプローチが必要となる。 その方法としては、ポーラスアルミナに代表される穴開き構造とロッド構造が知られる。これらは、TiO2デバイスのように光によって励起した色素から取り出した電子が粒子間でホッピング伝導せず、電荷輸送効率が高くなり光電変換効率も向上するため。
そこで、研究グループはロッド構造の改良版として図1のような剣山型光電極構造を考案した。まずZnOに比べ導電率の高いAZO(AlドープZnO)を剣山形状で成膜。次に、色素増感太陽電池に適したエネルギー準位を持つZnOを同じく剣山状で被膜。その表面に色素を吸着させることにより電荷輸送効率を向上させる仕組み。いうまでもなく、AZO、ZnOとも剣山状にするのは通常のロッド構造に比べ電子流路が増大するため。今回はAZO剣山部分を作製し、その結果を報告した。 まず、シード層を形成するため、ITO透明電極付きガラス基板上にAgまたはSiO2ドットパターンをフォトリソで形成した。ドット径は1μm、ピッチは2μmで、フォトレジストをフォトリソでパターニングした後、AgまたはSiO2を真空成膜しリフトオフしてドット状にパターニングした。続いて、Alを2wt%ドープしたAZOを基板温度150℃でスパッタリング成膜した。
写真1はAgシードを用いてAZO膜を膜厚100nmで成膜した際のSEM像で、AZOはAgドットがない部分に多く堆積し、その断面形状がフジツボ型になった。また、SiO2シードを用いた場合も同様の結果となった。これらは、ITOとAgまたはSiO2という下地によってAZOの成膜されやすさが異なるためである。つまり、AZOはITO上により多く堆積する一方、ITO/AgまたはSiO2の界面部分ではAZOが隆起する形で成長し、結果的にこの部分ではフジツボ形状になる。図2にその成膜・成長イメージを示す。まず、AZOはITO上に自己整合的に成膜されマイグレーション現象によって水平方向に成長。この後、ITOとAgまたはSiO2のエッジ部分で垂直方向に成長し、最終的にフジツボ形状になる仕組み。 研究グループはこのAZO剣山構造にZnOを被膜した剣山型光電極構造を用いた色素増感太陽電池を試作。太陽光発電することを確認したが、ZnOが剣山状に成膜できなかったため、光電変換効率は従来のTiO2デバイスに及ばなかった。このため、今後、剣山型ZnOの成膜方法を検討することにしている。 参考文献 |
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