STELLA通信は潟Xテラ・コーポレーションが運営しています。

琉球大学新技術説明会(7月5日)


琉球大学新技術説明会 青色レーザーを照射してa-Si膜をマイクロクリスタル化

 7月5日、科学技術振興機構(JST)で開かれた「琉球大学新技術説明会」。ここでは、野口隆教授の講演「青色半導体レーザによるフレキシブルパネル上Si結晶化薄膜の製法と機能デバイスへの応用」をピックップする。

 周知のように、現在、低温Poly-Si TFT-LCDのプリカーサa-Si膜は波長308nmをはじめとするエキシマレーザーを照射して多結晶化する。このエキシマレーザーアニール(ELA)プロセスは容易にラージサイズのPoly-Siが得られるが、レーザービーム出力の不安定によりグレインサイズの均一性が低く、トランジスタ特性もばらついて、結果的にディスプレイ画像が劣化するという問題を抱える。


写真1 BLDAプロセスで結晶化したPoly-Si1) 左から順に4W、5W、8W

 そこで、プリカーサa-Si膜に波長445nmのGaN青色レーザーを照射してマイクロクリスタル化またはナノクリスタル化して粒径制御性や膜の平坦性を高めようというのが研究の狙いである。青色レーザーを用いたのはエキシマレーザーほどではないものの、緑色レーザーよりもa-Si膜の吸収効率が高いため。実験には、日立コンピュータ機器のBlue-Laser-Diode Anealing(BLDA)装置を使用。ビーム径600×2.4μm、ビーム走査速度500mm/secという条件で青色レーザーをCW(Continuous Wave)モードで照射した。

 写真1はレーザー出力5W、6W、8Wにした際のTEM像で、出力5Wではマイクロシリコンからナノシリコンサイズのスモールグレイン、6Wではラージグレイン、そして8Wでは異方性を持つ疑似シングルグレインが得られた。つまり、レーザーパワーを変更するだけで任意の結晶状態を得ることができた。とくに有効なのは5W時のスモールグレインで、コンベンショナルなELAプロセスではきわめて難しいといえるスモールグレイン(約0.3μm)がフラットサーフェースを維持したまま形成できた。


写真2 PIフィルム上に成膜したa-Si膜と結晶化の様子1)


図1 Poly-Si層を挿入したタンデム型薄膜太陽電池の構造と吸収波長
1)

 実験ではフレキシブルディスプレイへの応用を目指し、まずフレキシブルガラス基板上にマイクロクリスタルSiを作製。基板上の任意の場所だけを多結晶化できることが確認できた。続いて、ポリイミド(PI)フィルム上にa-Si膜をスパッタリング成膜した後、BLDAで結晶化。その結果、写真2のようにPIフィルムへのダメージレスでPoly-Si化できることも確認できた。さらに、ガラス基板上に成膜した膜厚500nmの厚膜Si膜への多結晶化にトライしたところ、膜の最深部も多結晶化することができた。いうまでもなくこうした厚膜Siへの対応はELAプロセスでは不可能で、マックス1μm深さまで結晶化可能だという。

 気になる用途だが、まずはFPD駆動用の高性能TFT、とくに有機ELディスプレイ用TFTが有望視される。また、薄膜太陽電池にも有望で、図1のようにa-Si層とPoly-Si層をタンデム化したデバイスを作製。Poly-Si層をBLDAプロセスで結晶化したところ、光電変換効率が20%弱と大幅に向上。いうまでもなく、これはa-Si層とPoly-Si層の吸収波長が大きく異なるためで、BLDAプロセスの優位性を効果的に活かした実験例といえる。

参考文献
1)野口:青色半導体レーザによるフレキシブルパネル上Si結晶化薄膜の製法と機能デバイスへの応用、琉球大学新技術説明会資料、pp.37-40(2013.7)


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

電極パターンの測長・外観検査ならステラ・コーポレーションオリジナルの測長兼外観検査装置「STシリーズ」が最適です。