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情報ディスプレイ“フレキシブルエレクトロニクス”(7月12日) |
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映像情報メディア学会は7月12日、都内で映像情報メディア学会技術報告「情報ディスプレイ“フレキシブルエレクトロニクス”」を開催した。特別講演としてソニーの野田真氏は有機TFT駆動のフレキシブル有機ELディスプレイについて講演。フレキシブルディスプレイの実用化が迫ってきたことを改めて印象づけた。
周知のように、ソニーは昨年、プラスチックフィルム基板をサブストレートに用いた有機TFT-有機ELDを試作。曲率半径40oというそのフレキシブル性から“Bendable Display”と命名していた。今回はさらにブラッシュアップし、曲率半径4oを実現した“Rollable Display”を試作したことを報告した。 有機TFTはBendable Displayと同様、トップコンタクト型で、ゲート絶縁膜にOTS(オクタデシルトリクロロシラン)を添加したPVP(ポリビニルフェノール)を使用。これによりPVPゲート絶縁膜表面に撥水性を付与し、上部に成膜する有機半導体分子の配向性を高める。このゲート絶縁膜を含めすべての絶縁膜は有機材料を用いてスピンコート。また、プロセス温度もマックス180℃に抑制した。なお、回路は2T-1Cのシンプルストラクチャーで、チャネル長は5μmである。 今回新たに採用したのが、独自開発した有機半導体材料「PXX誘導体」。分子構造は図1のとおりで、真空蒸着法で成膜した。図2はコンベンショナルなペンタセン有機TFTとの特性比較で、キャリアモビリティが0.1cm2/V・secから0.4cm2/V・secに向上。駆動電圧も10Vから7Vに低下した。このため、ゲートドライバ回路を基板上にビルトインすることに成功。外付けICはパネルの左右方向にしかないため、上下方向でのフルフレキシブル化が実現した。写真1は半径4oの棒に巻きつけた際の様子で、静止画、動画とも表示が劣化しないことを確認できた。 試作したのは4.1型ワイド430×240画素パネルで、解像度も従来の80ppiから121ppiに向上。輝度は100cd/m2、コントラストは1000:1で、厚さは80μmである。気になる商品化に関しては白紙に近いが、まずは有機TFT駆動ディスプレイとしてはもっともハードルが低い電子ペーパーへの応用を想定している。 モノマーと光重合開始剤を共蒸着または塗布し、基板上でUV照射して感光性薄膜に
一方、東京農工大学の臼井博明教授は重合性モノマーと光重合開始剤を共蒸着またはスピンコートし基板上でUV照射して感光性重合膜を成膜するというユニークなプロセス技術を報告した。 感光性高分子薄膜をフォトレジストレスでパターニングするためで、共蒸着膜の場合、まず重合性モノマーとしてCEMA、光重合開始剤としてDABPを基板加熱レスで共蒸着する。光重合開始剤のドープ量は5wt%である。続いて、フォトマスクを介して大気中で波長355nmのUV光を照射する。この結果、UV光が照射された部分が重合する。最後にTHF(テトラヒドロフラン)などの有機溶媒で現像すると、UV光が照射されなかった部分が溶解し除去される仕組み。この薄膜サンプルを分析したところ、モノマーが有するビニル基のIRスペクトルがほぼ消滅。固相成長によって重合していることが確認できた。また、解像性もL&S=10μm/10μmとファインパターニングが得られた。 そこで、この手法を用いて高分子有機ELの作製にトライした。素子構成はITOアノード/DvTPDホール輸送層/緑色燐光発光層/BCP電子輸送層/LiFバッファ層/Alカソードで、4×3oデバイスを試作した。燐光発光層は重合性モノマー(ホスト)にCEMA、光重合開始剤にDABP、緑色燐光ドーパントにIr(ppy)3を用いドーピング濃度5wt%で共蒸着。マスク露光・現像によってパターニングした。 デバイスとして耐プロセス性を評価するため、図4のようなフローでデバイスA(重合レスのベタ膜デバイス)、デバイスB(発光層を1回パターニングしたデバイス)、デバイスC1、C2(発光層を2回パターニングしたデバイス)を作製した。図5はデバイスの特性比較で、輝度特性はデバイスA以外ほぼ同じ挙動を示した。これは、デバイスAは発光層が重合していないため特性が低いためと考えられる。つまり、UV照射によるダメージはなく、発光特性に影響しないことを意味する。また、デバイスC1とC2では特性の違いはほとんどなかった。これは、露光〜現像というパターニング工程を繰り返しても特性が劣化せず、プロセス耐性が高いことを意味する。 一方、スピンコート薄膜も共蒸着膜と同様、重合性モノマー(ホスト)にCMEA、光重合開始剤にDABP、緑色燐光ドーパントにIr(ppy)3を使用。各種有機溶媒に溶解させてスピンコートした後、露光〜現像によってパターニングした。この際、注意すべきはスピンコート後1分以内にマスク露光することである。生乾き状態、つまり溶媒が乾燥して膜の結晶化が始まる前に露光する必要がある。これは溶媒が完全に揮発すると結晶化するためで、この後、UV露光しても膜中の分子運動が抑制されて固相重合が不十分になる。
また、現像液の種類によってもパターニング性が大幅に異なることがわかった。基本的に共蒸着膜に比べ重合度の低いスピンコート膜は従来のTHFで現像すると、大部分が溶解してしう。そこで、THFよりも溶解性が低い溶媒を用いてパターニング性を評価した。写真2はトルエン、酢酸エチル、エタノールを現像液に用いた場合のパターニング例で、エタノールを用いるとドット径10μmというファインパターンが形成できることがわかった。 参考文献 |
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