STELLA通信は潟Xテラ・コーポレーションが運営しています。

映像情報メディア学会技術報告“情報ディスプレイ”


映像情報メディア学会技術報告“情報ディスプレイ”
パナソニックが3D対応PDPの最新技術を紹介

 先日、都内で映像情報メディア学会主催による映像情報メディア学会技術報告“情報ディスプレイ”が開かれた。メインテーマはブームの兆しが出てきた3Dディスプレイで、パナソニックプラズマディスプレイからは3D対応PDPの要素技術が報告された。講演内容をピックアップする。


図1 3Dモード時の駆動波形1)


図2 完全降順と1+降順の比較1)

 周知のように、PDPを3D化するには画像表示期間であるフレームを時分割表示するフィールドシーケンシャル方式が一般的である。つまり、1フレームを左眼用と右眼用に時分割し、これに同期して3Dシャッターメガネを交互に遮蔽する。しかし、この場合、輝度が低下するとともに、クロストークによる二重像が発生するという問題がある。そこで、同社は上記二つの問題を解消する技術を紹介した。

 前者については、高性能パネル技術を用いて輝度・発光効率の低下を抑制した。詳細は企業秘密のため明らかにしなかったが、まずMgO保護膜上に設けるブラッククリスタルレイヤーに新材料を用いることにより紫外線変換効率を高めるとともに、放電遅れ時間を30%程度短縮しフルHDパネルにも対応できるようにした。なお、新ブラッククリスタルレイヤーには効率向上に効果的な高Xeガス分圧化にともなう放電電圧の上昇を抑制するという機能もある。

 また、RGB蛍光体の粒径を微粒子化することによって可視光反射率を向上。さらに、前面基板上に設けていたブラックストライプをレス化するとともに、ITO透明電極とバス電極の位置合わせ精度を高めて光取り出し効率を改善した。

 他方、後者のクロストークは蛍光体からの残光が直前フィールドから漏れることで発生する。そこで、従来に比べ約30%も残光時間の短い蛍光体を採用するとともに、サブフィールド配置を最適化した駆動方法を開発。さらに、新たな3Dシャッターメガネを用いることによって漏れ光をミニマム化した。

 まずサブフィールド配置法だが、蛍光体の残光時間は発光輝度に比例するため、図1のように輝度重みの大きいサブフィールドから順に配置することにした。つまり、従来の配置とは逆の降順重み方式に変更した。この結果、クロストークが大幅に抑制できた。しかし、この場合、書き込み放電の安定性が低下するという新たな問題が発生した。これは、他のサブフィールドの維持発光でのプライミング効果が得られないのに加え、初期化期間からの時間が長くなってプライミングが不足する暗い階調で顕著になる。これは、安定動作に必要なデータ電圧の上昇による消費電力の増加や回路コストの増加を意味する。

 そこで、図2のように“1+降順”と名づけた維持重み配置を考案した。すなわち、初期化期間において強制初期動作を行うSF1に輝度重みのもっとも小さいサブフィールドを配置する。この結果、初期化期間で発生させたプライミングによってもっとも輝度重みの小さいサブフィールドのみで発生させる放電セルでも安定した書き込み放電を発生できるようになった。


図3 従来3Dグラスのシャッタータイミングとクロストーク1)


図4 新3Dグラスのシャッタータイミングとクロストーク1)

 一方、液晶シャッター方式の3Dグラスにも工夫を施した。図3のように、従来方式では片方の画像の発光がもう片方の画像に漏れてクロストークが発生しやすい。これに対し、図4のようにシャッター開閉タイミングを工夫、つまり左眼用画像と右眼用画像の間にフル遮蔽期間を設ける。この結果、クロストークが大幅に抑制されるとともに、初期化期間に発生する残光もマスキングできるため3D表示時における暗所コントラストも向上するとしている。

参考文献
1)石塚ほか:3DフルHDプラズマディスプレイの実現に向けた高性能パネル及び高速駆動の開発、映像情報メディア学会技術報告“情報ディスプレイ”、pp.13-16(2010.7)

 

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。