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SID 2010(電子ペーパー編) |
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ここにきて急速に普及している電子ペーパーでは次世代パネルで最大の焦点となっているカラー化方法に関する講演が相次いだ。なかでも現在R/G/Bの計3層を積層してカラー化しているコレステリック液晶ディスプレイ(Ch-LCD)を単層型でカラー化する報告が目立った。
まずはインクジェットプリンティング(IJ)法によってRGB層を塗り分けたのがIndustrial Technology Research Institute(ITRI)、National Taipei University of Technology、National Sun Yat-Sen University(台湾)の研究グループ。 試作パネルの作製フローだが、まず基板上にボトム電極としてITO膜を真空成膜し、フォトエッチング法によりストライプ状にパターニングする。続いて、ボトム電極に直交する形でRGBセルを仕切るバンク(高さ6μm、幅30μm)を形成する。次に、RGBそれぞれのCh-LC・ポリマー混合溶液(比率85:15)をIJ法でセル内に滴下・充填する。液滴サイズは15〜25μmである。この後、365nmのUV光を照射すると、混合溶液が相分離し、上層のポリマーだけが重合する。最後に、PEDOT/PSS導電性ポリマーをボトム電極と直交する形でIJ印刷し透明トップ電極を形成する仕組み。 螺旋状にねじれたCh-LCが選択的に反射するピーク波長はRが654nm、Gが544nm、Bが458nmである。 図2はパルス幅100msec、周波数250Hzで駆動させた際の電圧-反射率特性で、印圧電圧47Vでプレーナー(透過)状態、22Vでフォーカルコニック(反射)状態となる。図3のようにプレーナー状態における反射率はマックス22%(@540nm)、フォーマルコニック(反射)状態の反射率は2%(@540nm)だった。 同一材料ながらUV照射量を制御してRGBサブピクセルをパターニング 一方、NDIS(韓国)はUV光の照射強度によってCh-LCのねじれ具合いをRGB毎に制御してカラー化したCh-LCDを紹介した。 コンベンショナルなネマティック液晶材料に、吸収ピークスペクトル360nmの光反応性キラル剤を8wt%添加して混合物を作製した。この混合物を“コアセルベーション技術”によってカプセル化した後、バインダを添加してインクを作製し、ITO膜付き基板上に塗布した。この後、フォトマスクを介して照射エネルギーの異なるUV光をRGBサブピクセル毎に照射した。 図4にCh-LCカプセルの選択反射波長とUV照射量の関係を示す。添加した光反応性キラル剤は液晶材料をねじる力を示すHelical Twisting Power(HTP)が大きいが、UV光を照射するとHTPが小さくなる。本来、光反応性キラル剤は波長450nmを選択的に反射するが、UV照射量によって選択反射波長が変化する。Ch-LCの螺旋ピッチが長くなると選択反射波長が長波長側へシフトする現象を利用することにより、RGBサブピクセルをパターニングする。具体的には、Bサブピクセルに100mJ、Gサブピクセルに135mJ、Rサブピクセルに250mJのUV光を照射すると、Ch-LCの螺旋ピッチが変化することによって選択反射波長が488nm(B)、532nm(G)、630nm(R)に変化する仕組み。
写真1はRGBサブピクセルの顕微鏡写真で、サブピクセル間の境界は若干はっきりしないものの、全体的にはユニフォミティの高いパターニングができていることがわかる。Ch-LCカプセルの径は7μm前後、標準偏差は0.2である。 図5は印加電圧と反射率の関係で、RGBセルとも電圧-反射率の挙動はほぼ同じである。プレーナー状態にするには45〜50Vを印加する必要があり、コンベンショナルなCh-LCDが30Vであることを考えるとかなり高い。これは、Ch-LCカプセル間に強い固着効果が働いているためである。Ch-LCカプセルの径は固着状態に大きな影響を及ぼし、小さいとVthが上昇する。このため、今後、研究グループではカプセル径を最適化して駆動電圧を低減する考えだ。 写真2はポリカーボネートフィルムをサブストレートに用いた試作パネルで、クリアな表示ができることがわかる。フレキシブル性も高く、曲率半径0.5cm以下で曲げても書き込み画像に変化がみられなかった。 液晶注入過程でR/G/B Ch-LCを塗り分け注入
これらに対し、ITRIはPixelized Vacuum Filling(PVF)と名づけたニュープロセスも提案した。液晶注入工程でRGBサブピクセルを塗り分けるアイデアで、懸念される注入時間もさほどかからないという。 パネル構造はストライプ状にパターニングされたバンク間にRGBセルを設ける単層型を採用。ITO電極とバンクが形成された基板と、ITO電極とUV硬化型接着層が形成されたもう一方の基板を貼り合わせて空セルを作製。この後、図6のように毛細管現象を利用してRGBそれぞれのCh-LCを真空環境下で連続注入し、UV硬化型シール材で封止孔を封止する仕組み。つまり、ODF(One Drop Fill)が登場する以前の液晶注入法と基本的に同じである。ただし、その注入効率はコンベンショナルな液晶注入法に比べ格段に高い。Ch-LCの毛細管力が極めて高いためで、RGB3回の注入でも4時間で済む。 なお、一方の基板にUV硬化型接着層を設けるのは、@Ch-LC注入時にCh-LCがオーバーフローして隣接するサブピクセルに流入するのを防ぐ、Aセルギャップを均一に保つ、BCh-LCに水平方向のアンカリング力を与える、という三つの理由による。 写真3のように試作パネルはプレーナー状態で高い輝度が得られ、写真4のようにフォーカルコニック状態でも理想的な低反射が得られた。写真5は4ビットのカラーグレースケール試作した10型パネルで、反射率は26%、解像度は100ppiとなっている。 以上、Ch-LCDのカラー化方法に関する講演3件を取りあげた。あくまでも私見だが、IJ法はプロセス難易度が高い一方、PVF法は封止孔のON/OFFが面倒でどちらも高精細化が難しいように感じた。これに対し、UV照射量の制御によるパターニング法はgood ideaにみえた。 IJ法でRGB着色オイルを塗り分けてカラー化 帯電トナーを用いる電気泳動方式ディスプレイ、Ch-LCDに次ぐ第3の電子ペーパーとして浮上してきたエレクトロウェッティングディスプレイ(EWD)では、ITRIとNational Chiao Tung University(台湾)の研究グループがIJ法を用いてRGBサブピクセルをパターニングしたカラーパネルを発表した。
復習だが、EWDはセル内に充填した水が電圧印加によって着色オイルをピクセルのコーナーに押しのけることで二値表示を行う。撥水性絶縁体が撥水性を示すときは着色オイルが表面に安定した層を形成してオイルの色を表示し、親水性を示すときは上にある水が着色オイルを押しのけ、下にある反射層が現れて白表示となる。 プロセスフローは、まず基板上にITO膜を膜厚100nmでスパッタリング成膜しフォトリソでパターニングする。続いて、SiNx絶縁層を膜厚150nmでプラズマCVD成膜する。次に、フルオロポリマー(Cytop)を膜厚150nmでスピンコートし撥水層を形成する。この後、ネガ型フォトレジストをフォトリソでパターニングして親水性リブパターンを形成する。そして、IJ法でRGB着色オイルをそれぞれのサブピクセルに滴下・充填した後、水を充填する。最後に、もう一方のITO電極付き基板とアッセンブリーして封止する仕組み。試作パネルのピクセルサイズは302×302μm、リブ幅は40μmである。 図7は色再現性の比較で、従来のピュアアルカン溶媒に比べ独自の混合溶媒では色度が大幅に向上。写真6のように電圧OFF時では着色インクの色がそのまま映し出される一方、電圧を印加すると着色オイルがリブに引っ張られる形になりピクセルの大部分が開口部となる。ここで重要なのは、RGBサブピクセルともVthがほぼ同じ挙動になることである。今回の試作デバイスでは電圧15Vで開口率75%が得られ、反射率も36.2%に達した。 参考文献 |
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