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SID 2010(TFT-LCD編) |
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世界最大のディスプレイ学会「SID 10」で報告された発表をTFT-LCD編、有機EL編、電子ペーパー編と3回に分けてレポートする。第1回目のTFT-LCD編ではフォトマスク枚数を削減した製造プロセス、そして新たなピクセルデザインに関する発表をピックアップした。
IPSモードa-Si TFTを3枚マスクで作製できる製造プロセスを発表したのがLG Displayで、このプロセスを用いて15型XGAパネルを試作した。 フォトマスク枚数を従来の4枚から3枚に削減できたのは、ITO画素電極とコンタクトホールを一括でパターニングするため。まずコンベンショナルな4枚マスクプロセスを用い、@メタル膜を成膜しフォトリソでゲート電極をパターニングする、Aゲート絶縁膜、a-Si膜、n+ a-Si膜、メタル膜を連続成膜し、ハーフトーン露光を用いてソース/ドレインとチャネル部を一括形成する、BSiNxパッシーベーション膜をCVD成膜する、といったフローを行う。 この後がニュープロセスで、1層目のフォトレジスト膜(1st PR)をフォトリソでパターニングし、SiNxパッシベーション膜をエッチングしてコンタクトホールを形成する。続いて、ITO膜をスパッタリング成膜した後、図1のように再びフォトレジスト膜(2nd PR)を塗布する。その後、アッシングにより2nd PRを減膜する。この結果、1st PR上にあった2nd PRパターンが除去される。続いて、ITO膜をウェットエッチング処理して画素電極を形成。最後に1st PRと2nd PRを剥離する。 図2のように、コンタクトホールサイズが10μm以上だと2nd PRはコンタクトホール内に満たされる。また、図3のようにホールサイズが10μmになると、ホール内の2nd PRと1st PR上の2nd PRの膜厚差が飽和する。いうまでもなく、1st PRの膜厚が厚いとプロセスマージンが広くなる。これらを合わせ考えると、1st PRの膜厚は1.3μmではプロセスマージンが狭すぎ、2μmが最適と判断した。 一方、ITO膜のウェットエッチング時にはオーバーエッチングやアンダーエッチングに対する工夫が必要で、@エッチングレートを高速化するため、新たにエッチングパスを作製する、AITO膜の結晶性を選択的に制御する、といった工夫を行った。
具体的には、このプロセスでは図4のようなイメージでエッチャントが侵入してITO膜をエッチングする。1st PRと2nd PRに挟まれたITO膜の長さが2μmの場合、膜厚の40倍以上の高速レートが求められる。そこで、@ではレジスト膜とITO膜を表面状態に工夫を施した。周知のようにITO膜は本来親水性であるため、レジスト膜の表面状態を親水性または撥水性に、つまり1st PRを撥水性、2nd PRを親水性に改質。この結果、1st PRとITO膜の密着性は低い一方、2nd PRとITO膜の密着性は高くなる。そのため、エッチャントは1st PRとITO膜間を膜厚方向に沿って高速で浸透。エッチングレートが従来の40倍にアップする。 ところで、オーバーエッチングとアンダーエッチングを回避するには、一般的にSiNxパッシベーション膜と1st PRの間にエッチングストッパーを設けるなどの工夫が必要となる。そこで、AではITO膜の結晶性の違いを利用してエッチングストッパー機能を付与する。周知のように、同じITOでもアモルファスか多結晶かによって特性も大幅に変化し、前者のエッチングレートは後者に比べ60倍も高くなる。こうした特性を利用し、SiNx膜上とレジスト膜上のITO膜の結晶性を選択的にコントロールする。つまり、ITO膜を低温成膜してアモルファス化する一方、1st PR塗布後に160℃でアニールして多結晶化する。 図5はアニール温度とシート抵抗値の比較で、アニール温度の上昇にともなってシート抵抗値が低下。とくに、SiNx上のITO膜のシート抵抗値は120℃で大幅に低下し、160℃で飽和する。これに対し、レジスト膜上のITO膜はアニール温度の増加にともなってゆるやかにシート抵抗値が低下する。そこで、160℃以上でアニールした。この結果、ITOエッチング時にエッチャントは1st PRとITO膜の間から急速に浸透し、SiNx膜上で急ストップする。そのため、オーバーエッチングやアンダーエッチングを大幅に抑制できる。 トップゲート電極をセルフマスクにしてマスク枚数を低減 次世代アクティブ素子の本命、アモルファスIGZO(In-Ga-Zn-Ox)-TFT関連では台湾のIndustrial Technology Research Institute(ITRI)がフレキシブルディスプレイ用IGZO-TFTを室温で作製することに成功した。 サブストレートには独自開発した透明ポリイミドを使用。キャリアガラスに膜厚40μmで塗布し硬化させてフィルム化した後、トップゲート型IGZO-TFTを作製し、最後にキャリアガラスからリリースする仕組み。
コンベンショナルなボトムゲート型に代わってトップゲート型を選択したのは、ゲート電極をセルフアラインマスクにしてフォトマスク枚数を減らすため。作製フローは、@Ti膜を膜厚20nmでスパッタリング成膜し、ウェットエッチングしてソース/ドレインを形成する、AInGaZnO膜を膜厚40nm、SiOx膜を膜厚200nmで室温スパッタリング成膜する、BTi膜を膜厚100nmで室温スパッタリング成膜し、フォトリソでパターニングしてゲート電極を形成する、Cゲート電極をセルフアラインマスクにしてSiOx膜とInGaZnO膜を一括パターニングする、といった仕組み。チャネル長は10μm、チャネル幅は20μmで、気になるレイヤー間のずれも2μm以内だった。 図6はこのポリイミドフィルムの光透過率で、波長550nmで90%という高い値が得られた。また、Tg(ガラス転移点)も350℃以上と耐熱性にも優れる。図7にポストアニールレスのIGZO-TFTのTFT特性で、キャリアモビリティは48.5cm2/V・sec、Vthは−1Vだった。 CF配列を改良しRGBY-CFパネルの効率をさらに改善
近年、TFT-LCDで高速駆動化や低消費電力化とともに要求スペックが高まったきたのが色再現性。これに対しては、従来のRGB-CFにY(イエロー)を加えたRGBY-CFがメインソリューションとなっている。今回、LG DisplayはRGBY-CFパネルの効率を高めることに成功した。 いうまでもなく、RGBY-CFはコンベンショナルなストライプRGB-CFに比べサブピクセルの面積が75%に減少する。しかし、Yサブピクセルの可視光透過率は90%以上とR、G、Bサブピクセルに比べ高い。このため、トータルではピクセルの透過率が高くなる。 図8はR/G/B/Y-CFの透過スペクトルで、前記のようにY-CFの可視光透過率が高いため、ホワイトバランスを再調整する必要がある。具体的には、Y-CFの追加によって青色を含む短波長領域の光強度が増加する反面、緑色以降の長波長領域は光強度が減少する。このため、RGBY-CFパネルはパネル全体の透過率こそ10%も改善されるものの、ホワイトバランスが低下する。 そこで、白色LEDバックライト向けにCFのサブピクセル配列パターンを工夫した。図9のように、(a)B-CFの面積を広げる一方、Y-CFの面積を減らす、(b)R-CFとB-CFの面積を拡げる反面、G-CFとY-CFの面積を減らす、(c)G-CFとB-CFの面積を広げ、R-CFとY-CFの面積を減らす、という3種類のサブピクセル配列を考案。図10のように、サブピクセルの面積が同じ通常の対称RGBY-CFパネルはストライプRGB-CFパネルに比べ輝度が10%アップした。これに対し、今回検討した非対称のRGBY-CFパネルはストライプRGB-CFパネルに比べ輝度が13〜18%高くなった。図11はB-CFの面積比とCF全体の透過率、BL光強度の関係を調べたもので、B-CFの面積比を従来の1.3倍にするともっとも効率が高くなることがわかる。 上記の実験結果にもとづき17型ワイドXGAパネルを試作したところ、非対称RGBY-CFパネルは高い色純度を維持しながらRGB-CFパネルに比べ輝度が18%も向上することが確認できた。 ピクセル配列を工夫して高精細化&高効率化 Samsung Electronicsも超高精細化&高効率化を図るため、新たなピクセルデザイン“PenTile RGBW”を紹介。ノートPC用フルHDパネルを試作した。 図12にPenTileと名づけたCF配列パターンを示す。コンベンショナルなピクセルが六つのサブピクセルで構成されるのに対し、PenTileはRGBWの四つのサブピクセルから構成される。この方式ではゲートラインはRGBサブピクセル構成と同じ数で済む一方、データラインは2/3に減らせるため、ピクセルの開口率が高くなる。さらに、RGBサブピクセルにWサブピクセルを追加することにより輝度がアップする。
図13は11.6型フルHDパネルのピクセルデザイン例で、PenTile方式のサブピクセル幅は66.8μmであるのに対し、コンベンショナルなRGBストライプ配列のサブピクセル幅は44.6μmに過ぎない。これは、開口率に換算すると前者が45%、後者が25%となる。つまり、Wサブピクセルの開口率向上効果も合わせるとバックライト光の透過率は約2倍に向上する。 また、フルHDパネルでは通常コラムドライバラインが5760(1920×RGB)本あるため、720出力ドライバICが8個必要になる。これに対し、PenTile方式では642出力のコラムドライバICが6個で済む。すなわち上記の効率改善効果に加え、製造コスト面でも圧倒的に有利になる。 実際に試作した11.6型フルHDパネルの輝度は従来方式が200cd/m2だったのに対し、PenTile方式は260cd/m2をマーク。表1はフォントの表示例で、同じ文字サイズながらPenTile方式は従来ピクセル配列に比べフォントがよりクリアにみえるのがわかる。 参考文献
1684(2010.5)
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