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電子情報通信学会技術研究報告“有機エレクトロニクス”(5月27日) |
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5月27日、電子情報通信学会主催による「電子情報通信学会技術研究報告“有機エレクトロニクス”」が開かれた。What's NEWに映った2件の講演をピックアップする。
今回、もっとも新鮮に映ったのが千葉大学の発表で、ゲート電極を共通化したトップコンタクト型&ボトムコンタクト型CMOS回路を報告した。トップコンタクト型とボトムコンタクト型を積層化することによって消費電力を低減するとともに、トランジスタサイズをシュリンクしてTFTの開口率を高めるためで、絶縁膜にウェットプロセスで形成できるシリコーン樹脂を用いた。 用いたシリコーン樹脂の分子構造は図1の通りで、ケイ素と酸素の基本骨格に置換基-Rを備える。つまり、置換基を変化させることによって比誘電率や光硬化性といった特性が制御できる。今回の実験では、フォトレジストレスでパターニングできる光硬化型(ADEKA製)を使用。PGMEA溶媒に溶解してスピンコートし、熱硬化(60℃×30分)+UV硬化(波長360nmで露光量200mJ/cm2)した。まずP3HT有機半導体を用いた単層素子を作製したところ、p型半導体特性を示すことが確認できた。
そこで、図2のようにゲート電極を共通化した積層型CMOS回路を作製した。プロセスフローは、@ガラス基板上にZnO膜をRFスパッタリング成膜しn型半導体層を形成、AAu膜を真空蒸着しソース/ドレイン電極を形成、B光硬化型シリコーン樹脂をスピンコートしゲート絶縁膜を形成、CAl膜を真空蒸着し共通ゲート電極を形成、D光硬化型シリコーン樹脂をスピンコートしてゲート絶縁膜を形成、Eペンタセンを真空蒸着しp型半導体層を形成、FAu膜を真空蒸着しソース/ドレイン電極を形成、G光硬化型シリコーン樹脂をスピンコートして封止膜を形成、といった仕組み。つまり、トップコンタクト構造のn型素子とボトムコンタクト構造のp型素子を積層した。n型半導体に無機材料であるZnOを用いたのは、形成後の耐プロセス性が高いためである。 図3はp型素子の特性、図4はn型素子の特性で、典型的なCMOSインターバー特性を示した。p型のスペックはモビリティ1.1×10-1cm2/V・sec、Vth=-15.6V、n型はモビリティ4.6×10-2cm2/V・sec、Vth=33Vだった。ただ、後者はヒステリシスが観察された。これは、ZnO半導体層とシリコーンゲート絶縁膜の界面に欠陥が発生するためと考えられる。 10-6g/m2/day以下の透湿性が測定可能な装置が登場 一方、TI、北海道大学、MORESCOの研究グループは、新開発した有機ELデバイス用ガスバリア特性評価装置について発表した。 周知のように、有機ELデバイスでは10-5〜10-6g/m2/dayと高いガスバリア性が要求されるが、従来のモコン法では10-3g/m2/day、Ca法では10-5g/m2/dayが測定限界とされる。さらに、これらの測定法は透湿性の評価に時間がかかり、Ca法では4か月という月日が必要になる。そこで、真空装置を応用した新たな測定装置を開発した。
図5に測定装置の構造とプロセスフローを示す。まず、測定試料であるフレキシブルフィルムの両側に二つの空間A、Bを設け、Aを水蒸気で飽和した1気圧の大気中に暴露し、Bを水蒸気を含まないHeガスで満たして気体を循環させる(a)。一定時間気体を循環させた後、バルブを閉じてリザーバーに蓄積された水分を液体窒素トラップに吸着させる(b)。続いて、水分吸着した液体窒素トラップ表面を超高真空にまで排気する(c)。トラップを昇温させて質量分析器により昇温脱離(TDS)スペクトルを測定する(d)。これにより、図6のようなTDSスペクトルが得られ、TDSスペクトルから昇温によりトラップから脱離した水分量を積分すると一定時間に透過した水分量が計算できる。 研究グループでは09年12月に1号機を開発。2010年5月に製作した改造2号機では10-6g/m2/day以下という測定限界が得られ、有機ELデバイスのガスバリア特性が評価できるレベルにあることが確認できた。 参考文献
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REMARK 1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。 2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。 |