STELLA通信は潟Xテラ・コーポレーションが運営しています。

第1回フレキシブルディスプレイシンポジウム 「フレキシブルディスプレイへの挑戦」 (12月17日)


第1回フレキシブルディスプレイシンポジウム
プラスチック基板デバイスには転写法が有効?

 12月17日、都内で電子情報通信学会主催による第1回フレキシブルディスプレイシンポジウム「フレキシブルディスプレイへの挑戦」が開かれた。電子ペーパーを筆頭とするフレキシブルディスプレイ専門シンポジウムで、デバイスから製造プロセス、部材まで幅広いテーマで講演が繰り広げられた。このうち、フレキシブルディスプレイ用プラスチックフィルム基板とプラスチックカラーフィルターの講演をピックアップする。

 フレキシブルディスプレイ用プラスチックフィルム基板について発表したのが帝人の城尚志氏。フレキシブルディスプレイのサブストレートとしてはPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)などが候補に挙がっているが、いずれも一長一短がある。同氏がピーアールしたのは高耐熱性PCフィルム「SS120」で、Tg(ガラス転移点)は215℃とPESフィルムに匹敵する。吸水率も100℃で0.05%と低い。このため、フレキシブルディスプレイ製造プロセスでも180℃クラスまでなら寸法変動も少なく実用レベルといえる。ガスバリア膜はスパッタリング成膜したSiOxをリコメンド。従来の蒸着膜に比べ膜密度が高くガスバリア性もアップするためで、フレキシブル化で問題となる曲げ性も曲率半径3oクラスまでならクラックが入ることがない。

 このSS120を用いてオールウェットプロセスで有機トランジスタを作製。コンベンショナルなボトムゲート・ボトムコンタクト構造で、ゲートとソース/ドレインにはナノAgインク、有機半導体にはpoly(3,3'''-dialkyl-quaterthiophene)(PQT)、ゲート絶縁膜にはPVP(ポリビニルフェノール)を用い、電極と半導体層はインクジェットプリンティング法でパターニングした。プロセス温度はマックス160℃に抑制。キャリアモビリティは0.01cm2/V・secで、曲率半径5oで曲げてもトランジスタ動作を維持した。

Roll to Roll生産は非現実的


図1 転写法によるCFのプロセスフロー

  共同印刷の古川忠宏氏は、フレキシブルデバイス向けに開発した転写法を紹介した。最初に試作したのはマイクロカラーフィルター(CF)で、プラスチックフィルム基板に直接CFを形成する方式に比べパターニング精度や背面基板とのアライメント精度が高く、さらに比較的高温プロセスを用いることによって結晶性の高いITO膜が成膜できるため。図1のように、@転写基板であるガラス基板に剥離層を形成する、ASiOxやSiNyといったバッファ層を成膜する、BITO膜をスパッタリング成膜しフォトエッチング法でパターニングする、Cアクリル樹脂などをウェットコートしオーバーコート層を形成する、DRGB着色パターンを顔料分散レジスト法で形成する、といったフローで転写基板上にCFを作製。続いて、UV硬化型接着剤を塗布し、PCなどのプラスチックフィルム基板と貼り合わせた後、UV光を照射して接着する。そして、剥離層から転写基板をリリースし、最後に剥離層を除去する仕組み。

 次に試作したのがLCDのスペーサーパターン。プラスチック基板製LCDではスペーサビーズを散布してセルギャップを保持しようとすると、基板が柔らかいためにスペーサービーズが基板にめり込んでしまい均一なセルギャップが保持できない。また、フレキシブル化するとビーズ自体も動きやすくなり、光漏れによるコントラストの低下や表示ムラの発生を引き起こす。このため、転写法でポスト(柱状)スペーサーをフォトリソで定点配置した。基本的なプロセスフローは上記と同じで、転写基板にフォトリソでポストスペーサーを定点配置した後、プラスチックフィルムを接着し転写基板をリリースする。ビーズのように“点”ではなく、“面”でセルギャップを保持するため、押しても基板の変形が小さく、良好な表示特性が維持できる。この技術を用いてNHK放送技術研究所は強誘電性LCDを試作。実用化のメドがついたという。

 ちなみに、興味深かったのはフレキシブルデバイスで待望視されるRoll to Rollプロセスに関するくだりだった。フレキシブルデバイスにとってRoll to Rollプロセスは一見理想に見えるが、@サイクルタイムが長くなる、A多品種生産が困難、Bプロセス変更が困難、Cシステムのスクラップ&ビルドが困難、Dスループットの遅い工程にタクトタイムが律速されるため、システムのトータル稼働率が低い、といった弱点を指摘。Roll-to-Roll方式が有利になるのは、@生産する製品の寿命がきわめて長い、A生産量がきわめて多い、B生産品目がきわめて少ない、C工程数が少ない、といった複数の条件を兼ね備えていなければならないと強調。フレキシブルディスプレイのような多品種製品では現実的でないと力説していた。

REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。