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P&Iシンポジウム「プリンタブルエレクトロニクス」(10月6日) |
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10月6日、日本印刷会館で「08年度P&Iシンポジウム-プリンタブルエレクトロニクス-」が開かれた。メインテーマはエレクトロニクスデバイスをプリンティングテクノロジーで製造する際の現状と課題で、凹版オフセット印刷やスクリーン印刷など多彩なプリンティングテクノロジーが紹介された。
講演プログラムはタイトル通り、プリンタブルエレクトロニクスに関する講演がほとんどだったが、唯一毛色が違ったのがポストITOに関する金沢工業大学 宮田俊弘氏の講演。安価で比較的埋蔵量も豊富なZnO系をポストITOとして用いるプロポーザルで、ZnOにAlを添加したAZOについて紹介した。 いまさら説明するまでもないが、ITOは21世紀に入って価格が急騰。さらに、価格も投機資金の流入から乱高下し、将来の枯渇が懸念されるといった問題に直面している。世界の埋蔵量から考えると10年後には枯渇する可能性がある。そこで、ZnO系を筆頭にポストITOの提案が活発化している。
具体的には、@基板面内における抵抗率分布、A耐湿性、の2点である。@については、一般的にターゲットのエロージョン領域に対向するエリアの抵抗が上昇する。これは、エロージョンから高エネルギーの酸素が対向ポイントに衝突しO2リッチになるためであり、酸素の活性度を抑制するため高周波重畳スパッタ法を適用することにした。13.56MHzの高周波を印加するとともに、Arにガス加えH2ガスをチャンバ内にドープする仕組みで、この結果、基板温度200℃という低温成膜でも図3のように抵抗率分布を改善することができた。この際の比抵抗は7×10-4Ω・cmである。 一方、Aに関してはとくに膜厚50nm以下という薄膜で問題となる。図4は60℃、90%RHで耐湿試験を行った際の抵抗率変動で、ITOはほぼ抵抗率が変化しないのに対し、AZOは膜厚に大きく依存し、薄膜になるほど抵抗率が上昇する。実際、こうした耐湿環境下では膜のキャリア密度、ホール移動度とも低下する。これは、O2などが粒界に吸着するためと考えられる。そこで、第3の不純物としてV(バナジウム)をドープすることにしたた。この結果、膜厚50nmでも上記の環境下で1000時間後も抵抗率がほとんど上昇せず、膜厚20nmでも抵抗率の上昇が抑制された。もちろん、基本的な抵抗率と透過性はVドープレスAZOとほぼ同等である。このため、LCD量産プロセスへ適用する環境はほぼ整ったとしている。 フルプリンタブル有機TFTで電子ペーパーをドライブ
本題のプリンタブルエレクトロニクスデバイスに関しては、凸版印刷の大久保透氏がプリンタブル有機TFTを用いたE-Ink方式電子ペーパーについて報告した。同様の報告はこれまで応用物理学会やSIDなどの学会で多数報告されているため、現時点で最新研究成果である「IDW'07」における報告をダイジェストする。 上記の成果はソニーとの共同開発によるもので、結論からいうとプリンタブル有機TFTで10.5型VGA電子ペーパーをドライブすることに成功した。有機TFTの構造は図5の通りで、フレキシブル化を図るため基板にはPES(ポリエーテルスルホン)フィルムを使用。ゲート電極&キャパシタとソース/ドレインは独自のオフセット転写印刷法、ゲート絶縁膜はスピンコート法で形成。有機半導体にはウェットコート可能な低分子TIPSペンタセンを使用し、撥水性バンクをスクリーン印刷で形成した後、TIPSペンタセン溶液をチャネル部分にIJ滴下した。なお詳細は明らかにしなかったが、転写印刷は凹版オフセット印刷を改良したもので、写真1のようにL&S=1μm/1μmクラスというハイレゾリューションが得られる。 解像度はVGA(640×480画素)で、チャネル長は8μm、チャネル幅は400μmである。このアクティブ基板にE Inkの前面フィルムをラミネートしアクティブ駆動電子ペーパーを作製した。そのトランジスタ特性だが、キャリアモビリティは0.05cm2/V・sec、ON/OFF電流レシオは106、Vth(しきい値電圧)は6Vと電子ペーパーをドライブするのに問題ない値が得られた。写真2は曲げた際の表示例で、有機TFTに起因する線欠陥や表示ムラはあるものの、曲げても表示特性がほぼ変化せず、フレキシブルなプリンタブル電子ペーパーを実現するメドがついた。 得手不得手を考慮して印刷メソッドを選択
プリンタブルエレクロニクスを実現する代表的なキープロセスであるスクリーン印刷について講演したのが、エスピーソリューションの佐野康氏。 講演で印象的だったのが、プリンタブルエレクトロニクスを実現するうえでのプリンティングテクノロジーの使い分けに関するくだり。いうまでもなく、各種印刷法には得手不得手があり、構造物やデザインルールによって各種印刷法を使い分けるのが有効と強調。表1のように、とくにスクリーン印刷法とIJ法は相互補完関係にあることを説明した。 そのスクリーン印刷の守備範囲だが、最小線幅は20〜30μm、寸法精度は500×500o基板で±10μmが限界と主張。印刷解像性を20μm以下にすることは可能だが、スクリーンマスクを介してスキージでペーストを基板上に転写するというメカニズムから寸法精度には限界があるためで、この要求レベルで問題ない用途にはもっとも安価なスクリーン印刷法、これ以上のハイスペックが要求される用途にはオフセット印刷法などを適用するのが望ましいと述べた。つまり、いたずらにハイレゾリューションを追究するのではなく、要求デザインルールに合ったメソッドを駆使して安価なプリンタブルエレクトロニクスを実現するのが現実的であるとした。 ガラス平版を用いた印刷はL&S=1.5/1.5μmに 一方、日本電子精機の守本久氏はスクリーン版以外の版を用いる微細印刷法について紹介した。同社は凹版印刷機、凸版印刷機、グラビア印刷機など多彩な印刷機をラインアップしており、FPD分野ではPDPの電磁波シールドメッシュの印刷に量産採用されている。また、有機トランジスタやLCD用カラーフィルター向けでも開発・試作用印刷機の納入実績があり、量産採用もカウントダウン状態に入っているという。とくに、ガラス製平版を用いるガラスパターン微細凹版印刷機はL&S=3〜5μmを実現。印刷プロセスをエレクトロニクスデバイスへ適用する可能性を飛躍的に高めた点を強調した。
印象的だったのは、これら微細印刷法は今後もさらなるハイレゾリューションを目指すべきとした点。すでにガラスパターン微細印刷は研究レベルでL&S=1.5μm/1.5μmを実現。今後、L&S=1μm/1μmへ挑戦するという。つまり、上記の佐野氏の考え方とは対極にあるといえる。その理由について、「L&S=1μm/1μmの印刷でどのような用途があるのかといった疑問もあると思うが、これについては実現すれば新たなニーズが必ず出てくるはず」と強調。今後もシーズをブラッシュアップしてニーズを掘り起こす考えを示した。 参考文献 |
REMARK 1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。 2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。 |