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光配向テクノロジーシンポジウム(11月7日) |
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11月7日、総評会館で液晶化学研究会主催による「光配向テクノロジーシンポジウム-液晶の新領域へチャレンジ-」が開かれた。LCD分野における光配向テクノロジーを集めたシンポジウムで、凸版印刷やDICから光配向技術ならではというインセル位相差膜が紹介された。おもな講演をダイジェストでピックアップする。 元来、LCD分野における光配向といえばポリイミド配向膜を光照射によって配向することを指す。コンベンショナルなラビング配向をリプレースするものだが、その長い開発の歴史の割にはいまだに本格的な量産採用には至っていないと推測される。そうしたなか、新たな用途として浮上してきたのがインセル位相差膜で、DICは光配向膜材料とUVキュアラブル液晶材料について紹介。凸版印刷はインセル位相差膜の有効性について講演した。両社の講演は重複する部分も多いため、「もうひとつの光配向技術〜凸版印刷インセル位相差膜〜」と題した凸版印刷 赤尾壮介氏の講演をとりあげる。 インセル位相差膜はパターニングが可能 周知のように、一般的なTFT-LCDではTFT基板、CF(カラーフィルター)基板それぞれの外側に位相差フィルムを設ける。これに対し、インセル位相差膜はCF内部に位相差膜を設ける。これにより、位相差部の厚みが従来の0.4o(0.2o×2)から3μm程度と大幅に薄くなり、トータルモジュール厚も0.6oと25%程度薄型化できる。しかし、従来の位相差フィルムに比べ最大のメリットはパターニングが可能という点にある。
こうしたアドバンテージが最大限に活きるのが、明所では反射型、暗所では従来の透過型として機能する半透過型LCD。画素を反射部と透過部に分割するためであり、インセル位相差膜では位相差機能の有無をパターニングすることによってそれぞれの領域に適した機能を付与することができる。例えば、半透過型IPS-TFT-LCD用CFでは図1のように反射部をHomogeneous配向にして1/2波長分の位相差を付与、透過部をIsotropic配向に位相差レスにする。位相差膜材料にはDICなどから製品化されている光重合性液晶材料を用いる。この液晶はモノマー状態では一般的な液晶材料として振る舞うが、UV光を照射すると重合してポリマー化し、配向状態が固定される。用いる液晶材料によってHomogeneous、Homeotropic、Cholesteric、Isotropic(ランダム配向)など配向状態を選択することができる。パターニングについてはフォトマスクを介してUV光を照射するフォトリソを用い、不要部分は溶剤現像または熱現像(図2)によって除去する。 反射部、透過部とも無色透明でバックライト光または外光をほとんど遮蔽しない。また、等方相部である透過部はほとんどコントラストを低下させず、LCDの表示特性を損なうこともない。さらに、230℃で3時間加熱処理してもリタデーションの低下は5%未満と、耐熱性も実用レベルに達している。そのほか、表1のように溶剤や酸・塩基に対する耐性も確保するなど、LCD製造プロセスに対して適合性がある。
インセル位相差膜は半透過型IPS TFT-LCDだけでなく半透過型VA(Vertical Aligment)TFT-LCDにも有効だ。こちらは図3のように反射部に1/4波長分の位相差を付与し、透過部を位相差レスにする。この際、良好な反射部を得るためには位相差膜は各色の波長に対して1/4波長分の位相差を与える必要があるが、現時点では重合性液晶材料の材料選択肢が少なく、良好な波長分散特性が得られない。そこで、凸版印刷は複屈折率を制御することによって膜厚を同一にしたまま位相差機能に差をつけることにした。つまり、重合性液晶の配向度を場所によって異ならせる。すなわち、配向度が高いと複屈折率が高くなり位相差が大きくなる。有効なのはRGBそれぞれのドットで複屈折率に差を設けるケースで、例えば赤色部分は複屈折率を大きくして標準のHomogeneous配向に、緑色部分は複屈折率をやや落とし、青色部分はさらに複屈折率を落とす。これによって色毎に良好な波長分散特性を付与する。この結果、パネルのコントラストはコンベンショナルな位相差フィルム付きパネルに比べ1.4倍向上するという。 光配向とIJ液晶滴下でFLCDを作製 一方、大日本印刷の猿渡直子氏は強誘電性液晶(FLC)を用いたフィールドシーケンシャル(FS)カラーLCDについて報告した。
周知のように、FSカラー方式はRGBのLEDバックライトを交互に点灯させて時分割でカラー画像を表示する。1フレームを1/60secとすると、RGB-LEDそれぞれの点灯時間は5.6msecになるため、高速応答する液晶材料が必要になる。このため、スメクティック液晶(相構造)で自発分極を持ち応答速度が数百μsecと速いFLCを使用。FLCのなかでも、傾きを持った相構造を有しプラスまたはマイナスどちらかの電圧のみに応答するHalf-V型FLCを用いた。 FS駆動Half-V型FLCDを作製するに当たっては、まずFLC特有の現象であるダブルドメイン欠陥の解消が課題だった。ダブルドメイン欠陥とは自発分極の異なる2領域ができる欠陥で、混色の発生やコントラストの低下をもたらす。そこで、光配向膜を用いることにした。具体的には、表2のように前面基板側に光配向膜と重合性液晶、背面基板側に光配向膜を設けた。重合性液晶レスで両面基板とも同じ光配向膜を用いたサンプル1に対し、基板毎に異なる光配向膜を用いたサンプル2はモノドメイン率が大幅に増加した。配向膜を非対称化したもので、これは光漏れが低下したことを意味する。サンプル3、4は配向膜を非対称化するとともに重合性液晶を用いたもので、どちらもモノドメイン率が大幅に増加し、サンプル3では100%に近い値が得られた。これらの結果はFLCの自発分極の向きが変化したためと考えられる。 二つ目の課題は液晶注入方法。一般的な真空注入法でFLCを注入すると、液晶注入孔が小さいため、注入孔付近で液晶が放射状に広がりやすくなる。これは、FLCの流動方向と配向処理方向が異なるためと考えられる。一方、大型パネルの量産に用いられているODF(One Drop Fill)法は液晶材料をディスペンス滴下するが、図4のように(a)と(b)では流動距離が異なるため、液滴が衝突するところで配向欠陥が発生する。この配向欠陥はパネルをアニールしても元に戻らない。そこで、新たな液晶充填法としてインクジェット(IJ)法を用いた。IJ法は液滴サイズを30〜50pLと小さくでき、マルチノズルによってスループットが高いのが特徴だが、粘度の調整が重要になる。実験の結果、FLCは85〜95℃で加熱すると粘度がほとんど変化しないことを発見。そこで、FLCを加熱しながら液滴サイズ30μm、ピッチ20μmでIJ滴下したところ、図5のように液晶の流動方向と配向方向を揃えることに成功。配向欠陥フリーのパネルが作製できた。 FLCDの最後の課題は耐衝撃性を高めることだった。一般的に、FLCDは画面を指で触ると配向乱れによって白くなり、加熱しないと元に戻らない。これは、パネルギャップが変化するためである。そこで、所定のギャップを維持し強度を高めるため、まず柱状スペーサーの密度を従来の24本/mm2から32本/mm2に高めた。この結果、強度が向上しギャップ変化が少なくなった。しかし、これでも耐衝撃性は不十分なため、ウォール状スペーサーを用いることにした。ウォール状スペーサーの配置ピッチを1oと2oにしたところ、後者では5kgf/cm2の加圧でも配向乱れが観察されなかった。しかし、これでもウォール状スペーサー周辺ではFLCが凝集しやすいという問題があった。そこで、両面基板貼り合わせ時の加熱温度を従来の130℃から90℃に変更した。つまり、貼り合わせ時にFLCがゆっくりと移動するようにした。この結果、スペーサー周辺でのFLCの凝集もなくなった。 同社はこれらの技術を用いてa-Si TFT駆動3型VGAフルカラーパネルを作製することに成功。FS駆動FLCDの実用化にメドがついたとしている。 参考文献
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REMARK 1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。 2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。 |