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nano tech 2020/先進印刷技術展2020/新機能性材料展2020/JFex2020 (1月29〜1月31日)


nano tech 2020/先進印刷技術展2020/新機能性材料展2020/JFex2020
フレキシブルデバイス用マテリアルで王子ホールディングスらニューフェースが存在感

1月29〜31日、東京ビッグサイトで開かれた「nano tech 2020/先進印刷技術展2020/新機能性材料展2020/JFex2020」。今回目立ったのはフレキシブルデバイス用マテリアルで、これまでエレクトロニクスデバイスとはさほど縁のなかった異業種企業がこのマーケットに参戦するという動きが目についた。おもなトピックスをレポートする。

日本触媒がぐちゃぐちゃにしたフレキシブル有機ELデバイスを披露


写真1 フレキシブル有機EL照明デバイス
 まずデバイス関連では、今年も日本触媒が有機EL照明デバイスで圧倒的な存在感をみせつけた。同社は昨年の展示会でフレキシブル有機EL照明デバイスを初めて披露し、ライティングデバイス市場に参入することを宣言。写真1のように、今年は故意に外観をぐちゃぐちゃにしたサンプルを披露。その厚さはわずか3μmと究極の薄さをアピールした。

 デバイスはNHK放送技術研究所と共同開発した逆構造(カソード/電子注入層/電子輸送層/発光層/ホール輸送層/ホール注入層/アノード)で、両面サブストレートには安価なPETフィルムを使用。最大の特徴はSiNxやSiOxなどのガスバリア膜が不要で、きわめて簡易な封止でいい点。つまり、従来のようなアルカリ系電子注入層に代わって独自の有機・無機ハイブリッドレイヤー電子注入層を用いているため、水蒸気や酸素といった不純物ガスに強い。そのクリアすべき水蒸気透過性は10-3g/m2/dayクラスとアルカリ系電子注入層を用いた通常デバイスに比べ3桁も異なる。実際、緑色デバイスの輝度半減寿命は輝度1000cd/m2における連続点灯で1万時間を確保。このライフタイムなら“有機ELデバイスは寿命が問題”というレッテルも払拭できるかもしれないと感じた。ちなみに、デバイスのリリース時期は昨年表明した2022年から1年前倒して2021年を予定しているとのこと。

有機薄膜太陽電池をスマートフォンの補助電源に


写真3 エレクトロクロミック調光シートを用いたサングラス

写真2 有機薄膜太陽電池とスマートフォン
 有機薄膜太陽電池では、東レが極薄の透明ポリイミドフィルムをサブストレートに用いたフレキシブルデバイスを展示した。独自のp型半導体とn型C60系半導体を用いた高分子バルクヘテロ接合デバイスで、トータル厚を50μmに薄型化。ブースでは、写真2のようにスマートフォンへの搭載を想定したサンプルを展示。裏面全面と表面の額縁に有機薄膜太陽電池デバイスをビルトインすることを提案した。気になる発電量は“屋外で1分通話するのにかかる電力と1分間で発電できる量がほぼ同じ”だという。つまり、補助電源という役割だが、その分電池寿命を伸ばすことができる。

EC調光デバイスでメガネの濃度を自在に制御

 一方、リコーは電子ペーパーへの採用も見込まれるエレクトロクロミック(EC)調光シートをアピールした。周知のように、ECは材料の電気化学的な酸化還元反応によって膜の色が可逆的に変わる現象のことで、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックといったカラーEC材料を用いればフルカラーディスプレイが実現する。もちろん、ON/OFF切り替え時以外は電力フリーで、メモリー性を有する。今回は写真3のように電子調光サングラスへの応用を提案。通常の透明なメガネからサングラスまでシーンに応じてユーザーがスイッチひとつで透明度(透過率)が制御できる。

ペーパーライク特性を保持しつつ、プラスチックを凌駕するフレキシブルフィルムが


写真5 Agパターンのパターニングサンプル
全光線透過率
91.4%
ヘイズ
0.5%
引張強度
15MPa
弾性率 10GPa
線膨張係数  7.2ppm(@60〜100℃)
ガラス転移温度   なし(@200℃以下) 
熱分解温度   5%wt減少:270℃
分解ピーク:320℃
 
フレキシブル性   直径1mmで割れなし 

表1 アウロ・ヴェールの主要物性(@25μm厚)

写真4 ロール状のCNF透明シート
 マテリアル関連では、王子ホールディングスが新たなコンセプトに基づくフレキシブルサブストレートをアピールした。繊維径3〜4nmにナノサイズ化したセルロースナノファイバー(CNF)を原料にした透明シート・フィルム「アウロ・ヴェール」で、木質原料なので最終的には土に還える。電子デバイス用サブストレートとしてメリットかデメリットかは評価が分かれるところだが、廃棄する際は単に焼却すればよくエコロジー的には申し分ないといえる。

 表1のように、そのファンダメンタルもきわめて高く、線膨張係数は7.2ppm/℃(@60〜100℃)とガラスに近く、プラスチックフィルムをはるかにしのぐ。もちろん、物理的強度も高い。それでいて、フレキシブル性も兼ね備えている。さらに、酸などに対する耐薬品性も高く、電子デバイス製造プロセスにおけるエッチング工程にも十分対応できる。つまり、フレキシブルデバイスのサブストレートとして要求特性をほぼ網羅する。

 ブースでは、ウシオ電機がアウロ・ヴェール上にAgナノインクを線幅10μmでパターニングしたサンプルも展示。撥水性フォトレジストを塗布した後、真空紫外光でパターン露光して撥水・親水パターニング。この後、Agインクをベタコーティングして、自己整合的に親水部にパターニングしたサンプルで、Ag膜との密着性も問題ないことを示していた。


図1 CNT-TFTのトランスファー特性


写真6 半導体型CNTインクと金属型CNTインク
花王が半導体型CNTインク市場に名乗り

 ナノテクノロジーの代名詞といえるカーボンナノチューブ(CNT)関連では、花王がWhat's Newを演出。半導体型CNTインクを開発したことをアナウンスした。独自の分散技術によってバルクCNTから半導体型CNTと金属型CNTをほぼ100%の確率で分離できる技術を開発。分離抽出した半導体型CNTは純度99%以上で、欠陥もきわめて少ないという。

 実際にこのインクを活性層として塗布したCNTトランジスタ(シリコン基板/熱酸化SiO2膜/ソース・ドレイン/CNT活性層)ではキャリアモビリティ17cm2/Vs、ON/OFF電流レシオ1.6×105とデバイスに適用可能なスペックを確保。さらに、図1のようにヒステリシスもほとんどないことが確認できたという。

ソーが大気安定な塗布型有機半導体材料をPR


図3 有機トランジスタのトランスファー特性


図2 新規開発した塗布型有機半導体材料

 有機TFT関連では、東ソーが新たな塗布型有機半導体材料をアピールした。図2は分子構造で、融点190℃と耐熱性に優れる。また、大気安定性が高く、有機TFTとして作製後に大気中にさらしてもキャリアモビリティなどの特性がほとんど低下しない。もちろん、インクジェットプリンティング法など各種ウェットプロセスに対応可能だ。

 図3はこの有機半導体をIJ印刷したボトムゲート/ボトムコンタクト型デバイスの特性で、塗布型有機TFTとして実用的なモビリティかつヒステリシスフリーという特性が得られた。また、今回展示はなかったが、山形大学 水上研究室はこの材料を用いた有機TFTで3.2型フレキシブルフルカラー有機ELディスプレイ(128×100画素)をドライブすることに成功。ハードルが高いとされるディスプレイにも適用可能なことを示した。

レーザーアニールによってITO膜を低抵抗化&仕事関数を制御

 製造プロセス技術では、産業技術総合研究所がマイクロLEDと並び次世代のディスプレイといわれる量子ドットディスプレイ(QLED)向けとしてフレキシブル透明導電膜形成技術を提案した。


図4 レーザーエネルギー密度のITO膜特性依存性

 フレキシブルディスプレイでプラスチックサブストレートを用いる場合、総じて高温プロセスが適用できにくいため、まずコンベンショナルなITO膜を室温でスパッタリング成膜。この後、エキシマレーザーによってアニール処理することにより、低抵抗化するとともに仕事関数を調整する仕組み。つまり、ITO膜の多結晶化を促進するとともに、表面に存在する異物をドライ洗浄によって除去するというイメージだ。図4はレーザーフルエンスと比抵抗・仕事関数の関係で、レーザーアニール条件によってこれらを制御できることがわかる。確かにこれらの特性を制御できることは魅力に映ったが、リジッドなITOをフレキシブル透明導電膜にそのまま用いるという点には違和感が残った。


 


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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