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JST戦略的創造研究推進事業 新技術説明会〜グリーン・ナノテクノロジー〜(12月21日)


JST新技術説明会 洗濯できる有機太陽電池の報告に脚光

12月21日、科学技術振興機構(JST)で開催された「JST戦略的創造研究推進事業 新技術説明会〜グリーン・ナノテクノロジー〜」。ここでは理化学研究所の福田憲二郎の講演「洗濯も出来る超薄型有機太陽電池」をピックアップする。

 講演タイトル通り、今回の研究テーマは水に対する安定性を備えた有機薄膜太陽電池。耐水性は屋外での使用やウェアラブル用途で求められる特性で、衣服と同様、家庭で繰り返し洗濯できれば理想的なウェアラブルデバイスができる。しかし、これまで超薄型でかつ耐水性を兼ね備えた有機薄膜太陽電池の報告はなかった。容易に想像できるように、これはデバイスを薄くすればするほどガスバリア性が低下するためである。


図1 有機薄膜太陽電池の構造と作製プロセス1)


図2 支持ガラスからの剥離試験結果1)

 試作デバイスの構造・製造プロセスは図1の通りで、サポート基板であるガラス基板上に素子を作製した後、剥離層であるフッ素ポリマー層からリリースすることにより超薄型フレキシブルデバイスにする。つまり、簡易CVD法で成膜した薄膜ポリパラキシリレン(膜厚1μm)をサブストレートに用いる。図2はサポートガラスからの剥離試験結果で、光電変換効率は剥離前の8%から7.9%とほとんど低下せず、剥離によって素子が劣化しないことが確認できた。一方、大気中安定性は図3のように30日後も太陽電池特性を維持。ただし、剥離前に比べると経時変化は大きかった。


図3 大気安定性の比較1)


図4 ゴムによるサンドイッチ構造1)

 上記のデバイスを図4のように厚さ500μmの透明アクリルゴムでサンドイッチ化して耐水性を付与した。気になる伸縮性もゴムサンドイッチ構造でもイニシャルの値を維持、伸縮性が損なわれることはない。


図5 水安定性1)

 図5はゴムサンドイッチ構造デバイスを純水に漬けて耐水性を評価した結果で、ゴムサンドイッチ構造によって耐水性が劇的に向上。120分の浸漬でも光電変換効率はほとんど低下しなかった。また、故意に黒インクをつけて汚した際の特性も評価したところ、洗剤を用いた洗濯によって黒インクを除去すると効率が元の値に戻り、特性変化がないことが確認できた。

参考文献
1)福田:洗濯も出来る超薄型有機太陽電池、JST戦略的創造研究推進事業 新技術説明会〜グリーン・ナノテクノロジー〜資料、pp.3-7(2017.12)


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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