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JPCA Show 2017(6月7〜9日)


JPCA Show 2017 めっきプロセスでニュープロセスの提案が相次ぐ

6月7〜9日、東京ビッグサイトで開かれた「JPCA Show 2017」。今回もフレキシブルデバイス向けのデモが相い次ぎ、とくに低温プロセスという観点からめっきプロセスで新たな提案が目についた。めっき関連プロセスを中心にトピックスをレポートする。


写真1 めっきサンプル

 まずめっきプロセスでは、田中貴金属がグループ会社の日本エレクトロプレイティング・エンジニヤースが開発したニュープロセスを紹介した。

 PETフィルムやガラスなど各種基板上に独自開発した感光性プライマーを塗布・露光し、Auナノ粒子触媒を含むコロイドキャタリスト溶液に浸漬した後、各種金属種の無電解めっき液に浸漬させることにより、微細パターンを形成する仕組み。ポイントは塗布した感光性プライマー膜の表面に存在するアクセプターで、これを波長300nmのUV光を照射することによって除去しパターニング。このため、Auナノ粒子触媒はアクセプターがある部分にのみ自己整合的に吸着する。なお、UV露光によって除去されるのはアクセプターだけで、プライマー層自体は下地としてベタ膜の状態で残る。

 容易に想像できるようにプロセス温度も100℃以下と低く、Auで3.3μΩcm、Cuで2.3μΩcmという低抵抗が得られる。ブースではガラス、PETフィルム、ポリイミドフィルムといった各種基板にAu、Cu、Ni、Pd金属膜をめっき成膜したサンプルを展示。各種基板・めっき金属種に幅広く対応できる汎用性を示した。

プラズマによる表面改質技術で樹脂基板上にCuをダイレクトめっき


図1 新たなCuめっきプロセスのフロー

 他方、大阪産業技術研究所はプラズマによる表面改質技術を駆使した新たなめっきプロセスを提案した。

 図1のように、フッ素樹脂基板やポリイミド基板といったプラスチック基板を真空プラズマ処理によって表面に存在している官能基を除去。続いて、フッ素系ガスをはじめとする別のガスをパージして基板上に別の官能基を形成して置換。この後は一般的なめっきプロセスで、めっき触媒を自己整合的に官能基に付着させ、最後に再び自己整合メカニズムによってCuめっきする仕組み。つまり、これまで不可能とされてきた樹脂基板へのダイレクトCuめっきが実現する。もちろん、プラズマ処理、浸漬、めっき処理プロセスとも低温プロセスであるためフレキシブルデバイスに適する。もっとも魅力的なのは、新たな官能基を導入した後、UV露光によってパターニングしておけばCu配線が容易に形成できること。気になるCu膜の密着性もピール強度0.7kN/mを確保。一般的なFPCで求められる0.6kN/mを上回る値が得られる。フッ素樹脂基板では高周波回路基板、ポリイミド基板では低温プロセスを活かしたフレキシブルデバイスに有効だという。

新たなスクリーン印刷でスクリーン版の歪みを解消


写真2 Agペーストを印刷してアノード補助配線を設けた有機EL照明デバイス用サンプル


図2 ギャップレス同期型スクリーン印刷のメカニズム

 一方、スクリーン印刷機メーカーのセリアコーポレーションはプラスチックフィルム基材向けとして新たな印刷プロセスをアピールした。

 ギャップレス同期型スクリーン印刷と名付けたこのプロセスは、図2のように一般的な平版を使用するものの、基材フィルムを円筒シリンダーで搬送しながらクリアランス(ギャップ)レスで印刷する仕組み。クリアランスゼロという点ではロータリースクリーン印刷と同じだが、既存の平版を使用できる点が異なる。そのメカニズムからスクリーンマスクの歪みが解消でき、L&S=30μm/30μmというファインパターンが連続印刷できる。気になる印刷速度は300oクラスサイズで15〜20秒。

 ブースでは、山形大学がこのプロセスを用いてAgペーストを印刷してアノード補助配線を設けた有機EL照明デバイス用サンプルを展示。まだ開発したばかりで印刷システムの納入実績はないが、展示サンプルを見る限り実用化もそう遠くないように感じた。

Agペーストでノリタケが存在感を


写真3 グリーンシート上に印刷したファインパターンサンプル

 マテリアル関連では、ノリタケカンパニーリミテドが世界最高レベルのAgペースト、そして低温焼成Agペーストをアピールした。前者はμmサイズのAgパウダーを用いながらもL&S=16μm/16μmというファインパターンがスクリーン印刷可能なもので、このハイレゾリューションを称して世界最高と豪語。さらに、極薄タイプは乾燥膜厚1.5μmで被膜率100%を実現。空孔のない緻密な導電膜が成膜できる。他方、極厚膜タイプは80μmという超厚膜が成膜可能。ブースでは、中沼アートスクリーンのスクリーンマスクを用いて印刷したサンプルを展示。写真2のように、7ショット印刷後のサンプルと70ショット印刷後のサンプルを比較展示し、後者のような連続印刷でも初期と変わらない印刷特性が得られていることを誇示していた。

 他方、低温焼成Agペーストはナノサイズに近いAgパウダーを使用。しかし、一般的にこのパウダーサイズでは融点降下効果は得られないが、バインダを工夫することによりAg粒子同士を完全にネッキングすることに成功。焼成温度100℃で8μΩ・cm、250℃で3.6μΩ・cmという低抵抗が得られる。このため、ガラスやセラミックスはもちろんのこと、耐熱性の低いプラスチックフィルム、さらに紙にまで印刷可能だという。


REMARK
1)Stella通信はFPD&PCB関連ニュースの無償提供コーナーです(ステラ・コーポレーションがFPDやPCBそのものを製品化しているわけではありません)。
2)この記事はステラ・コーポレーション 電子メディア部が取材して記事化したものです。

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